表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

八月五日、いつかの君へ

作者: 稲猫丸

リビングのソファで気がつく


冷房のよく利いた肌寒く感じる部屋

少しカビ臭いエアコンの臭い

外から聞こえる煩い蝉の声


いつもと変わらない

変わっていない筈なのに

何かが可怪しい



「ピンポーン」



家の呼び鈴が鳴った


誰か来る予定があっただろうかと思いつつも、

この可怪しさから逃れる為に玄関へと急ぐ。



「おーい!(レイ)いるかー?」

「あれ?英弥(エイヤ)?」



扉を開けた先にいたのは、

隣の家に住んでいる幼馴染エイヤだった。



「え…?レ、イ?」

「?うん、僕だけど」



呼んだのはエイヤの筈なのに、

何故かあいつが驚いている。


喜びと困惑が入り混じった様な顔で固まっている。



「ははっなんだよその間抜け面」



その顔が可笑しくて、何だか懐かしくて、

思わず笑ってしまった。



「それで、昨日の今日で何の用だ?寂しくて僕に会いに来たのか?」

「昨日の今日?」

「え?昨日一緒にキャンプ行っただろ?」

「いや、キャンプに行ったのはだいぶ前だろ?」

「へ?」

「え?」



話が噛み合わない。


エイヤの家族とキャンプに行ったのは昨日の筈だ。


少し違和感があるが、ハッキリと覚えている。



「今日は、六日だよな?」

「三十一日だぞ?」

「え”」



夏休みの最終日じゃないか、

それなのに遊んだ記憶が全く無い。



「僕の青春がー!」

「何言ってんだよ」

「ぐぅ…エイヤは僕に残酷な現実を突き付けに来たのか?」

「違う違う、約束してただろ?」

「約束?」

「ほら、最終日に祭りに行くって」



ああ、そんな約束もしていたな。

二人で夏休みの計画を立てていた時に約束した。


ずっと、キャンプの時も楽しみにしていた。


エイヤは泣き虫だから、

これだけは絶対に行くと決めていた。



「そうだな、行こう」

「レイ、大丈夫か?」

「何が?」

「いや、さっきまで叫んでた奴が急に微笑ったら怖いだろ」

「確かに」

「まあいいや、兎に角行こうぜ!」



少し強引にエイヤに手を引かれ家から出る。



「ちょ、急ぎ過ぎじゃないか?僕財布とか持ってないぞ?」

「今日くらいは俺が奢ってやるよ!速く行くぞ!」




―――――――――――――――――――――――――――――――――




射的にヨーヨー釣り、金魚掬い等で遊び、

リンゴ飴や狐のお面を買い祭りを満喫する。



「速く速く!」

「テンションが高いな、次は何だよ」

「花火だよ花火!速くしないと間に合わないだろ!」



エイヤはとても楽しそうだ。

かくいう僕もかなり楽しんでいるが。


花火…花火か


『来年も花火、見に来ような!』

『いやいや、来年こそは彼女作ってデートするからな!』

『レイには無理だろ』

『うるせえモテ男!絶対に見返してやるからな!』

『じゃあ、万が一レイに彼女が出来たらその時は我慢してやるよ』

『すげー上から目線』

『でも!もし出来なかったら一緒に見に来るぞ!』

『そんなんだから僕の弟なんて言われるんだぞ』

『言われてない!』

『まあ、出来なけりゃ一緒に見てやるよ』

『やった!暫くは一緒だ!』

『どういう意味だこら』

『イダダダダ』



急に思い出した


去年花火を見た来た時の

馬鹿みたいな会話


そうだ

僕はこの約束を守る為に来たんだ



ドオォーン

ドドォーン


「花火、何回見ても綺麗だな!」

「ああ、そうだな」



エイヤが楽しそうに笑っている

これが見れただけで来た甲斐がある



「なあエイヤ、最初から気づいてただろ?」

「何がだ?」

「僕が家から出た時、驚いてただろ?」

「…」

「僕さ、今やっと思い出したんだ」

「!」

「もう僕はしん」

「止めろよ!」

「エイヤ」

「レイは死んでない!ちゃんと生きてる!」

「ならなんで驚いたんだよ、祭りを周ってる時もずっと手を繋いでただろ?」

「それは…」



僕は既に死んでいる

キャンプに行った時に事故に巻き込まれたのだ


でも



「エイヤが元気そうで良かったよ」

「な、何が元気そうだよ、俺はお前がいなくなってから…!」



泣きそうな顔をしている

だから泣き虫なんだよ

これで否定されても説得力が無い



「泣くなよ、約束は守ってやっただろ?」

「泣いてない」

「泣いてる」

「泣いてない!」

「まあ、今は不問にしてやるよ」



そろそろ消えそうな感じだ

足の先が少し透けている



「お前のことは、お前の兄と呼ばれる僕がちゃんと見ててやるよ」

「俺の方が誕生日先だ」

「それでも僕の方が精神年齢は上だ」

「そんなこと無い」

「はぁ、これに関しては言い合うだけ無駄だな」

「ん」

「僕が見てるんだから、馬鹿な事すんなよ?」

「しねーよ」



身体のほとんどが透けてしまった

エイヤと話せるのもあと少しといったところか



「結局、彼女は出来なかったなぁ」

「だから言っただろ」

「うっせ」

「ははっ」


「ずっと見ててやる、僕の分も幸せになれよ?」

「わかった」

「間違っても御祓いとか行くなよ?僕が消える」

「わかった」

「あ、あと僕の部屋にある未クリアのゲーム代わりにクリアしといてくれ」

「わかった」



あと少しを完全に無駄話に使ってしまったが

少しでも笑ってくれて良かった



「無理するなよ、エイヤ」



ドオオオォォォン―――――



祭りの最後を飾る大きな花火の音を最後に、

レイの姿が完全に消えてしまった。



「レ、レイ…ぐすっ」



絶対に泣かない、

泣いたらまたレイに泣き虫だって言われる。


だから、

笑顔で言ってやる。



「お前が言うな、レイ」

これは、

「エアコンて、つけ始めはカビ臭いなー」

という感想からの連想ゲームで生まれた謎の小説です。


タイトルは語呂がいいからつけただけで、

特に意味は無い。


キャラの名前は、

レイ

そのまま幽霊のレイ


英弥エイヤ

いい感じの名前ないかな〜とGo○gleで調べた結果、

はな

とも読むらしいので、

文の中に花火を何度も出しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ