第三章 三十四話 ~これが最後の施設~
二週間…いつの間にか二週間も経っていた……
何だろうね俺、このペースで第三章終わるかなぁ……
俺達は施設が爆発する中命からがら逃げ出して収容所へと戻った。
その後無事だった奴を数えてみると二百人は居た。まあその殆どが実験で改造されたあのグロい奴らと何故か付いてきた正規品共なんだが……
うん、俺達を出迎えてくれたエリーナが気絶しました。確かに帰って来たと思って出迎えたらその人の後ろにタイラントの群れが……心臓に悪いよね。
更に驚いたのが少じ…美雪だった。
とにかく美雪が収容所に戻った後第二形態からいつの間にか元の少女の姿に戻っていた。
まあ皆さんの反応は色々だったね。
アヴィは何故戻ったのかと頭をひねり
ラフラ、雷岳、アガ、忍者服四名はちょっとだけ警戒心を解き
チャズ、セラピス、そしてエリーナの女子三人組はかわいいと言い、
その光景を見て見てハァハァ言ってたシロウト……当然殴り飛ばしたよ?
まあそんなこんなで俺達一行はシロウトの未だにグシャグシャになっている執務室に居た。
「さて、現状を確認しようか」
そう言うとアヴィは机の上に紙を広げた。どうやら地図みたいだ。
どうやらこの地図を見る限りだと此処は島らしい。そして地図に建物のマークが三つあった。
俺が行ったと思われる二ヶ所は島の中心部に、そして最後の一ヶ所はは海沿いにあった。
「さて、今私達がいるのは此処だ、そして先程私達が居た施設は此処、そして今後私達が向かう所は此処だ。」
そう言って地図にマークを書き込んでいく。
ってあれ?オイオイ待ってくれ…
「アヴィ一つ質問していいか?」
「何だジョニー?」
「何でこれから行く場所がまたしても施設なんだ?」
俺はそう言ってアヴィが書いた向かう場所とやらを指し示した。
そこには俺が学んだこの世界の文字の翻訳が正しければ[研究所本部]と書かれている。
「…地図をよく見ろジョニー、この施設からしかこの島からは脱出出来ないんだ」
「本当だ…」
見てみるとその施設から海に向かって一直線に道のようなものがある。これがこの島の出入り口なのだろう。
「この島の周りの海域は風と波が強くてこの道以外では脱出は不可能だ、故にどうしてもここを通らなくてはならない」
「で、どうするんだ?何か策はあるのか?」
「考えてはいる…しかし優先事項としてはまずは体を休めよう。私の記憶が正しければ本部から視察が来るのは後二~三日はあった筈だ。それまではバレないだろう」
そう言うとアヴィは地図を仕舞った。
「まあ明日一日はゆっくり休み明後日にここを出よう。それまでに私はあの施設を出る方法を考えておく」
その後俺達は解散となり全員が部屋から出ていった。そして俺も部屋から出ようとした時アヴィに肩を掴まれた。
俺が振り向くとアヴィが真剣な顔で俺を見ていた。
「ちょっと待ってくれジョニー、君に話したい事がある……」
付いてきてくれと言われたのでアヴィに連れられ俺は人気の無い監獄の窮屈な一室に入った。
「……で?こんな所まで引っ張って来てまで俺に話したい事って何さ?」
「まずはこれを見てくれ」
アヴィはそう言うと俺に紙束を渡した。
……確かこれはペルクェインが目の色を変えて見ていた紙だった筈だ…
俺はその紙束を読んでみた。
そこには今までの生物兵器、その他色々な特性、能力を持った魔物の詳細な記録が載っていた。まあ俺には欠片も解らなかったが……
まあ注目すべきは最後の方だった。
[魔神]
数千の被検体の実験により我々が望む真の目的である“魔神”の製造は着々と進んでいる。
今回の実験でまた我らは一歩前進した。遂に魔神の力を移植した生命を作り出す事に成功したのだ。
今までの実験で何故か魔神の移植には人間が最適だと言う事が解り我々は莫大な時間と苦労の末一体のサンプルの取得に成功した。
しかしたった一体しかいないサンプルを使って失敗は許されないので我々はサンプルが男だったことを利用し代用としてホムンクルスを大量に制作した。
無論実験は失敗続きだった。何がいけないのだろう?どのような方法で魔神の素を組み込んでも拒絶反応を起こし失敗する。やはり紛い物では駄目なのだろうか…
これまでの能力移植実験での努力が実を結んだらしい。我々は魔神の素では無く体の一部を利用する方法をとった。
使った部分は魔力が最も宿るとされる目、その他に手の指、足、胴の一部等も移植をしてみたところ見事に拒絶反応を起こす事無く実験は成功した。
我々が“正規品”と呼ぶ能力移植実験成功体より格段に戦闘能力が上だ。
しかし代償としてなのだろうか?魔神の力なのか?それとも人間ではなく紛い物のホムンクルスで制作したのがいけなかったのか心が壊れていた。しかしせっかく成功したのだ、廃棄するのは惜しい。これをどう利用するか…それが次回の課題である。
我々の目的は達成した。数体の成功作を経てオリジナルのサンプルに魔神の力全てを移植することに成功したのだ。
これで我らの悲願は叶う。遙か昔我らが崇める魔王が成し得なかった世界を我が手に…
つい感情的な事を書いてしまった。とにかくもうこの施設以外は要らないだろう。
他の施設を廃棄するついでに成功作第一号…“魔神の娘”の戦闘能力を確かめようと思う。
心が壊れて使いものにならないと思われていたがそこは調教された魂繰虫を使う事でクリアした。
そこが弱点になるかもしれないが仕方が無い。
これをペルクェインに送り第二施設の失敗作と雇った科学者、そしてサンプルを殺す。
まあ序盤は失敗作を狂わせて暴走させ終盤で魔神の娘を出撃させ一掃…このような所か。
その後魔神の娘とペルクェインを一時待機させ二日後視察団を送り本部に戻す…これでいいだろう。
一応もしものために正規品をいくらか送っておく事にする。
「あ、間違えた」
アヴィはそう言うと俺からひょいと紙束を取ると懐に仕舞った。
「所で魔神って何?」
「はぁ…」
アヴィはため息をつくと再び紙束を取り出しその中の一枚を渡した。
「魔神とはこの世界が出来る前にいた神の事だ。こいつらが言っている魔神とやらはエグドラシアの近くの海底で発見されたらしい」
解説ありがとう。お陰で今貰った紙を読む意味が無くなったよ。
「とにかく本題に入る……取りあえずこれを見てくれ」
そう言って再び紙束を渡してくる。
渡された紙を見てみるとどうやら建物の見取り図らしい。
「これが本部の見取り図だ、それでジョニー、君に頼みたい事がある……」
そう言って紙をめくりとあるページを俺に見せる。そこには施設の中央塔の見取り図が書いてあった。
「この塔の天辺に大陸へと続く橋を作動させる仕掛けがある。君にはそれを作動して貰いたいんだ」
「俺が?」
「そうだ」
コクリと頷くアヴィ……何故俺なんだ?
「消去方と言う奴だ、君しか居ないんだ」
「心を読まないでくれ」
「読みたくなくてもそんな露骨な顔をされたら誰だって分かる」
「てかそれって俺一人?」
「無論だ」
…何それ?俺に死ねと?死ねと仰るかアヴィさん。
先程間違えて渡された紙を見るに美雪と同タイプの奴が数体居る訳だよね?
それを一人でやれと?ご冗談を!勝てる訳がねぇだろ!
「だからこの資料は見せたくなかったんだが…私としたことが」
「悪かったな臆病で…やればいいんだろ?」
そして何だかんだで引き受けてしまう俺…何だろうね本当に。
まああの堕天使様々が助けてって言うからこんな献身的な事してるんですけどね!
「ああ、危険ではあるが私達が敵を引き付ければ少しは楽になる筈だ……明後日頼んだぞ」
そう言うとアヴィは狭苦しい独房から出て行った。
…ああもう、何で俺ばっかにこんな役が回ってくるかな……
まあぶつくさ言っても仕方無い。明日はゆっくりと過ごそう。