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第三章 三十一話 ~壊れた心~

「…………寒っ!?」


俺は体の芯まで凍り付きそうな程の寒さを感じ目を覚まし……


「……何だここ?」


ていなかったようだ。俺はただひたすらに黒い空間の中に居た。


こんなに周りが暗いのに俺の体だけがハッキリ見えるということはおそらく俺が毎回行ってるあの白い空間と同じようなものなのだろう。


「ほっぺをつねれば……[ムギュッ]…痛いだけか」


俺は出口か何か無いのかと辺りを見回す。暫く辺りを見回すと俺は一点の光を見つけた。

俺はその夜空に輝く一番星のような光に向かって走った。

こんな寒い所は一秒だって早く脱出したい。


「あれが出口でありますように……ってアレ?」


俺がその光に近づいていくとそれは人の形に……

俺は出口じゃなかったと落胆しながらも近づいていくとだんだん見覚えのある姿になった。


「さっきの………少女?」


そう、先程まで俺が戦って……止めを刺したあの少女だった。

……訳が分からない。何で居るんだ?


とにかく考えていてもしょうがない。俺は声をかけようと彼女の肩に触……


「ホァァァァァァァァッ!!?」


俺は奇声を上げて飛び退いた。

一瞬体に電撃が走ったような感じがしたのだ。

……いや、これは電撃じゃない……

冷気だ。


「………?」

「ッヒ…………」


俺の奇声を聴き振り返る少女。そこでまた俺は叫びそうになったが必死に堪えた。


顔にヒビが入っていた。まるで鏡を割ったかのような亀裂が顔中……いや、よく見てみれば手足にもヒビが入っている。

更に右目の部分がその割れたガラスが欠落したかのように消えていた。

そこには何もない。本当にその部分だけ切り取ったように消えてしまっていたのだ。

そのほかにも指、腕の一部、左足、そして着ていたワンピースごと体にも消えた部分であろう穴が開いていた。


「………怖い?」


ふいに少女が透き通るようなスカイブルーの目で俺を見て聞いてきた。


「……ああ、まるで割れたガラスみたいだ」


俺は少女の目をしっかりと見つめて言った。すると少女は少し悲しそうな顔をして俯いてしまった。

……ヤバいな。ついこの寒さのせいで聞かれたことを何も考えずにストレートに答えちゃった……

ど、どうしよう…流石に言ってはいけなかったか……


「じ、じゃあ俺からも質問だ」

「……?」


俺の言葉にふっと顔を上げる少女。

まさか質問されるとは思っていなかったのだろう。驚いたような顔をしている。


「ここは何処だか分かるかい?」

「わかんない……気づいたらここにいたの」

「ふぅん……」


ヤバい。質問する事これぐらいしかないよ……出口は多分……いや確実に知らないだろうな。後質問するにしたって……

「君どうしてこんな姿に?」何て聞けないし……

「君の過去は?」……何を聞こうとしてんだ俺は、変質者か。


「お話……終わり?」

「え?」

「じゃあ私の番ね……どうしてここに来たの?」

「え……いやぁ……俺もさっぱりなんだよこれが」

「そうなんだ……それじゃあ私たち…同じだね」


そう言って少女はにこりと笑った。

……クッ、か…可愛い……って何考えてんだ俺はこんな所で!


「ねぇねぇ……次はお兄ちゃんが質問する番だよ」


うれしそうな顔で俺に話しかけてくる少女。

……そりゃそうか、こんな黒くて寒い空間に居たんじゃ話し相手も欲しくなるよな。


「それじゃあ質問だ……ええと…何を聞こうか……」




その後、俺と少女は質問と返答を交互に繰り返していった。

いつの間にか俺はあぐらをかいて座り少女の方も俺の方に体を向けて俺の話を興味深そうに聞いていた。


「じゃあ次は私ねっ!え~と……」


最初とは打って変わって明るい顔をするようになった少女。

質問と返答を繰り返しているうちに自然と少女の過去を知る事が出来た。


まず彼女の種族はホムンクルス……つまり人造人間らしい。

そして作られた理由は“魔神”をその身に宿すことだったらしい。

魔神とは多分あの第二形態の事だろう。

そして魔神を宿すことに成功。実に数百体を使って到達したと研究者は言っていたらしい。

しかし研究者達はまだ完成では無いと言い更なる実験をと言った後意識が飛び此処に来たのだという。


これを聞いて……多分憶測なのだがその実験とやらで心が壊れたのではないかと思う。

しかし動かなくてもせっかくの成功した物を破棄する訳にもいかず植物状態のこの少女をあの虫で操って動かすことを考えた……そんな所だろう。


「…だよ、ねぇ?聞いてる?……聞いて無いって事は別にしていいんだよねっ!」

「えっ!?[ムギュ]あひぃっ!!??」


な!何だ!?突然抱きついてきたって寒い!まるでドライアイスを抱きしめてるみたいって痛ァァァァァァァッ!

ぐぅおぉぉぉ!考え事をするより話を聞いておくんだったぁぁぁぁ!

痛い痛い痛い痛い!肌が!肌が凍る!細胞が壊死するぅぅぅぅ!


「ちょ……これは質問ではなくお願いの類に入る[ギュゥゥゥゥ]ホァァーーーツ!」


……あぁ、何も感じなくなってきた……本格的にヤバいかもしれない。

う、動いてくれ俺の腕っ!この少女を引き剥がしてくれ!

こんな暗い空間で凍死するのだけは御免だぁぁぁ!


「暖かい……ありがと」

[パッ]

「くぁっ……おぉぉぉ……」


ようやく俺を解放してくれた……何てこった……さっきまで寒いと感じていた空気がほんのり暖かく感じる……


「ねえ……最後にもう一個だけお願いしていい?」

「………[コクリ]」


いつの間にか質問がお願いになってる……まあいい。多分これ以上のものは来ないだろう。

そう思った俺は口は寒さで開かないので無言で頷いた。


「そ、それじゃあ言うね…………私のお兄さんに…あなたの妹にして下さい!」

「……[コク…]ってえぇ!?」


一瞬頷きそうになってしまったがその言葉の意味を凍りかけた頭が理解した瞬間頷こうとしていた頭が途中停止し動かなかった口が開き声を発した。


「……ダメ?」

「え!?ちょ?待ってくれ……何?何の流れでそうなった!?」

「え……だって…抱きついたとき暖かかったし…話してる時お兄ちゃんだったらなぁ……って思ったから……本気だよ!」

「………ハァ」


待てよオイ……俺は何処のエロゲの主人公だよ。

たった少しの時間少女と話しただけで兄妹にすること決めさせるとか……


「お前……本気なんだな」

「うん、本気」

「……フゥ」


真っ直ぐな目で俺を見てくる少女。うん、本気だ。間違いなく本気だ。

………しょうがない……か


「いいよ、じゃあ兄貴になってやるよ」

「やったぁ!」


俺が言った途端に再び抱きついてくる少女。


「[ムギュッ]うわやめ……って冷たく……無い?」


俺の胸に抱きついている少女は先程とは違い全く寒く無かった。

そういえば冷えるような寒さも全く感じない……

……何が起こった?まさか俺が兄妹になるって言ったから?



「……ねぇお兄ちゃん、私の名前決めてよ、私……名前まだ無いの…」


抱きついたまま俺を見上げてくる少女……どうしよう。

う~ん、髪の毛は綺麗な白……雪みたいだな……


「う~ん……美雪?」


はい、全く捻りのない名前が出てきました。美しい雪のようだから美雪……

百パー日本人の名前だね!


「ミユキ…私の名前はミユキね!」

「ああそうだ!お前の名は今日から美雪だ!」

「うんっ!」


どうやら気に入ってはくれたみたいだな……良かった。

すると美雪は俺から二~三歩離れた。


「ん?どうした?」

「あのね…お兄ちゃんは私に名前をくれた…だからね」


パキパキッ……という音と共に美雪の体が剥がれ始める。


「お、おい!」

「心配しないで、大丈夫」


そう言ってニコッと笑う美雪。すると彼女の体の欠片が集まり始め水晶のような物になった。


「それは?……」

「これはね……私の力…受け取って」


そう言うとその水晶のような物は俺に向かってゆっくりと近づき体に触れるとまるで水の中に沈んでいくかのように体の中へと入っていった。


「これで私の力が入ったよ……これで私達…兄妹かな?」

「そうだ[ブウォン]……ッ!」

「!」


俺の目の前から突然光が溢れだし俺はその溢れ出る眩しさのあまり目を覆った。


「く……うぉ……」


あっと言う間に俺はその光の中に包まれて来た時と同じく再び意識が薄れていった。

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