第三章 二十八話 ~あっちの方が魔王っぽい気がする~
「あれが元凶……だよな」
「多分な」
「ウゴァ?」
「……………間違いない」
俺達は音がした方に走って行くとその原因はあっさり見つかった。
[ゴゴゴゴゴ……]
この施設の入り口の吹き抜けになっているスペース。
そこに目に見えるぐらい……って言うかもろにドス黒いオーラを体から撒き散らしてる幼女が爆心地と思われるクレーターの真ん中に居ました。
その光景を俺達は見つからないよう気配を殺して巨大な柱の陰に隠れていた。
……何アレ?強敵臭がプンプンするよ!?
ヤバい、アレは強い。確実に強い。だって俺よりも遙かに魔王っぽいもん!
RPGでアレが出てきて「フハハ!我こそが魔王」って言っても何ら疑問を持たないよ俺!
「と、とにかく動く様子は無いからこのまま物陰から静かに様子を……」
アレとは戦わない方がいいと判断した俺は後ろにいる三人に指示を出…
「アァニキィィィィッ!俺を置いていくなんて酷いじゃないッスか!」
す前に空気をラフラが大声を出しながらこちらに走ってきて…って
「キャーーーーーーーッ!?」
ちょ!気付かれっ…見てるっ!こっち見てるよ!
「………[フワッ]」
こちらを見たまま無言で五十センチ程浮き上がり片手をこちらに向けた。そしてその手に黒いオーラが収束…
ってヤバい!俺の勘だと確実にここに居たら死ぬ!
「全員逃げろぉぉぉぉ!」
俺はダッシュで隠れていた柱から逃げて距離をとる。
それに続いて全員も柱から逃げだし距離をとった。
そして次の瞬間。
[バチチッ!ドゴォォォォォォン………]
直径三メートルはある柱が彼女が放った黒い雷のようなものが当たった瞬間粉々に砕け散った。
因みに当たった部分だけじゃない。柱全部がだ。
……どうしよう。相手の初撃でここまで戦意奪われたの初めてだよ。
……いや、元々戦う気なんか無いけどさぁ……
イヤだけどやるっきゃないよね畜生!
(ほぅ……戦うか、骨は拾ってやれないぞ?私は剣だからな)
「あれぇ?死ぬ事前提!?」
戦闘態勢に入ろうと大剣を構えた後のシーヴァの一言がそれでした。
武器が主人より先に諦めるってどうよ。
「全員無事か!?」
「大丈夫だ」
「ウガッ」
「………私は無事だ」
「無事ッス!」
どうやら全員無事だったようだ。
「よし!じゃあ全員でコイツを倒すぞ!」
俺達は宙に浮いた状態の幼女……幼女ってなんか卑猥だな、もっといい固有名詞は……
「………[バシュバシュッ!]」
そんなバカな事を考えている内に……うん、決めた。幼女でいいや。考えてる暇あったら…
「うぉぉぉぉいっ!」
彼女が四方八方に飛ばした拳程の大きさの氷塊を避ける。
[ガンッ!ビキビキビキッ!]
「うぉっ!マジかよ!?」
飛ばされた氷塊は地面や壁に当たると数倍もの大きさの氷の結晶になった。
あれを剣で防いだりしていたらあっと言う間に氷漬けになってただろう。
その事を想像して若干寒気が走る。
「……」
しかし彼女の猛攻は始まったばかりだった。
「なんだアイツ!全く近づけなおわぁぁぁぁ!」
俺に向かって次々と衝撃波を放ち必死にそれを剣で防ぎ避ける。
しかし限界というものは誰しもあるもので……脇腹に強烈な衝撃波を食らい俺は宙を舞った。
「ぐっ……何だコレ?[ドゴォン!]うわぁぁぁっ!」
その後黒い球体が俺の目の前で炸裂し吹き飛ばされる。
そしてそれに追い打ちをかけるように今度は光線が背中に直撃した。
「く………あ……」
一端空中で止まった……と思ったその直後、俺の目の前に巨大な魔弾が現れ俺の腹に食い込む。
「ごはっ!……」
朦朧とした意識のまま俺は地面に叩き落とされた。
そしてトドメとばかりに落とされてきた巨大な氷塊が俺に落ちてきた時。
俺の、何かが壊れた。