第三章 二十三話 ~登場、施設のボス~
毎回思うんだ、俺ってタイトルのセンスが全く無いんじゃないか……って
俺はセラピスと忍者服と握手をした後未だに床に転がっていたアヴィを抱き起こした。
「全く…一流の魔法学者が組み上げた結界をああも易々と…何て出鱈目な能力……魔眼か?」
「ああ……そうだ」
「ふむ……」
俺は俯いて何か考えているような顔をしたアヴィを椅子に座らせた。
「……ジョニー」
「ん?」
不意に顔を上げてこちらを真剣な顔で見るアヴィ。
「君の先程見せたあの黒い炎……それは君自身の能力か?」
「ああ…そうだけど?」
「そうか……」
再び俯くアヴィ。今度は何かをブツブツと呟いている。
………もしかして偽名だってバレたか?
再び顔を上げてこちらを見るアヴィ。
何か確信したかのような表情でアヴィは口を開いた。
「もしやジョニー…君は「おやおや……これは面白い事になっているな」……ッ!」
アヴィの言葉は突然部屋に響いた重々しい声によってかき消された。
その声に反応し全員が声のした方向を向いた。
「裏切り者、進入者、被検体、実験体、それに研究員…どうやって集まったのか是非聞かせて欲しいものだ」
俺達の見た方向。この部屋の入り口にはアガよりも一回りは大きい体をした男が立っていた。髪は白、肌は真っ赤で額には二本の角が生えていた。
「……チッ、一番来て欲しくなかった奴が…」
アヴィが舌打ちして大男を見る。その目には明らかに怯えの色があった。
「まさか生きているとは思いませんでしたなスィミケル博士……タイプβ一匹で研究員を皆殺しは流石に舐めすぎていたか……」
「いや、私が殺されそうになった時に隣に居る少年に助けてもらってな、彼が居なければ私はとうの昔に死んでいたさ」
「そうか…そこの進入者が助けたか…」
大男が俺の方をギロリと睨んだ。その瞬間背筋に氷を張り付けられたかのような感覚が襲う。
「……アヴィ、聞きたいことがあるんだけど」
「アイツの名前はペルクェイン•ラムスジーク、ここの最高責任者だ。種族は鬼、性別は男、年は百二十四、趣味は曰く付き、あるいは呪われた武器の収集だ……他に聞きたい事は?」
「彼の強さってどれくらい?」
「タイプαやβを素手で殺す程の力だそれに武器の扱いにも…」
「オーケー、分かった……つまりは一撃でも食らったら…」
「ミンチになると考えてくれ」
αやβってあの改造魔導兵やタイラントもどきのバケモノだろ……どれだけだよ。
……うん、簡単に言うとレナのレベルアップバージョンって所か。
どうしよう…勝てる気がしない。
「さて……」
大男改めペルクェインは腰に付けていた剣を抜く。
俺から見るとサイズが思いっきり大剣なんだが普通に片手で持っている。
…大剣を片手剣扱いか……すげぇ
「フハハ……どうした?私の剣がそんなに素晴らしいか」
いえ、あなたの怪力が素晴らしいです。
「この剣はな、ある狂戦士が死ぬまで使っていたとされる剣だ。この剣の最大の特徴はなんと言ってもこの大剣の刃の部分を覆い尽くす程に付いた結晶化した血だ!そして……」
何を勘違いしたのか突然自分の持っている剣のうんちくを始めるペルクェイン。
……まさか敵の面前で自分の剣の自慢を始めるとは…相当だな。
「隙ありっ!」
そしてその隙をついて先制をしようと思ったのかシロウトが突っ込み
「この鞘の装飾の魔物を繊細に象った形は…」
「うぉぉぉぉ![バキィッ!]ふぎゃぁぁぁぁぁ!」
「……素晴らしいわけだ」
片手で軽くあしらわれました。
「[ゴスンッ!]けぶれっ!」
そのまま壁に激突して動かなくなるシロウト。
まあ壁にめり込んでるから動かないのは当然か……
「……酷いな。仲間が一人減ったのに全員無反応か」
「……いやだってあんた今本気で殴らなかったろ?あいつはそれぐらいじゃ死なないさ」
「そうか……」
ペルクェインはフッ…と笑うと剣を俺に向ける。
途端に周りの空気が張り詰める。
「さて、お遊びはここまでだ」
真剣な顔で俺の方を見るペルクェイン。
「さぁ……行くぞ!」
そう言うとペルクェインは……
一瞬で目の前に来た。
「ちょっ!?」
「食らえぇぇぇい!!!」
一瞬で俺との間合いを積め剣を振り上げるペルクェイン。
……こいつレナよりも圧倒的に早い!
「ふんっ!」
「[ズン!]うおっち!」
俺の頭向かって尋常じゃないスピードで振り下ろされた刃をサイドステップで右に避ける。
瞬間地面が割れる……かと思ったのだが剣はまるで地面に吸い込まれるように入っていった。
……大剣だってのになんつー切れ味だよ。
「ふんっ!」
「[ブンッ!]おわっ!」
間髪入れずなぎ払うように振ってきた丸太程もある太い腕をバックステップで避けたが腕を振ったときの風圧で尻餅をついてしまった。
「隙ありぃぃぃぃぃ!!」
同じ台詞だというのに先程のシロウトの数十倍は気迫があると思わせる程の勢いで地面に突き刺さった大剣を逆手に持って引き抜き尻餅をついた状態のままの俺を突き刺そうと迫るペルクェイン。
立ち上がって逃げようとするも圧倒的な気迫に気圧され上手く立ち上がれない。そうしている間に目の前に迫り……
「これでも食らえぇ!」
ペルクェインが振り上げた剣に雷が落ちた。
「……っぁ……っが!」
剣を振り上げたままの体勢で硬直するペルクェイン。
「アニキ!今の内に早く起きあがって下さい!」
後ろから雷を落とした本人であるラフラの声が聞こえた。
慌てて起き上がり距離をとる俺。
「うっ……ごぉ…小癪なぁぁぁ!」
硬直して数秒程でまるで固まった体を無理矢理ほぐしていくような動きをした後ペルクェインは再び動き出した。
「そんな!?今のは大型の魔物でも即死レベルの電撃の筈…」
「小賢しいわ!その程度で私を止められると思うなぁぁ!食らえぇ!」
そう言うとペルクェインは右手から赤い魔弾のような物を大量に撃ち出してきた。
「「うわぁぁぁぁ!?」」
視界を覆い尽くすほどの大量の魔弾の弾幕。
「くそっ!スカーレットスパーク!」
俺は両手でスカーレットスパークを撃ち自分とラフラの近くにある魔弾を全て相殺した。
「だ、大丈夫か?」
「な…何とか大丈夫ですアニキィ…」
「他は?」
俺は周りを見回してみる。
まず攻撃の届かない所にチャズとアヴィを抱えたアガが避難している、
そしてシロウトは……壁の中か。
セラピスと忍者服、それに雷岳はどうした!?
「いったいですぅ…」
「植物なのに痛みを感じるのか?」
「………同意だ」
「ひ、ひどいですぅ!」
……ツタでセラピスが壁を作って雷岳と忍者服を守ったようだ。
で、現時点であの大剣を持った鬼と戦えるのは五人という訳か。
「雑魚共がっ!次で全員血祭りに上げてやる!」
そう言うとペルクェインはもう一本大剣を取り出した。
「お~い、そっち戦えるか?」
「無論だ」
「……戦闘可能だ」
「……おっけ~ですぅ」
そう言ってセラピス達三名も戦闘態勢に入る。
………さて、これからが本番だ。
戦闘描写ってのが中々難しい。自分の頭の中に描いている物を文字にするってムズカシィッ!
……どうやったら上手く書けるんだろう?
そして第三章は七月中に終わるんだろうか……
良かったら意見とか批評とかお願いします。