第三章 二十一話 ~……こいつら変態だ~
俺達はあの機械兵器を破壊した後敵に見つからないよう細心の注意を払いながら通路を進んでいった。
「この扉……ここだ!アガ、止まってくれ」
足を負傷したためアガに背負われているアヴィが通路にある扉と呼んだ他の壁と若干色が違う壁の前でアガに止まるように指示する。
「……私を扉に近付けてくれ」
「ウゴッ」
アガが背負っているアヴィを壁に近付けると彼はポケットからカードのような物を取り出し壁に触れた。
[ヴォォォォォォン………]
それと同時に壁がゆっくりと薄くなり消滅した。
「最新式の結界魔法で作られた扉だ。力ではどうやっても開かないように作られている……アガ、進んでくれ」
「アガッ!」
「それと君達もだ。早く入らないとまた壁に戻るぞ」
そう言うとさっさとアガと共に奥に行ってしまった。
「お、おい待ってくれよ!」
慌ててアヴィを追いかけ中に入る俺達。
そして俺達全員が入り終わった後後ろを見ると壁になっていた。
「これ壁に戻るときに壁の部分に立ってたらどうなるんだろ?」
「そうだな、魔法で作られた壁なら壁と一体化して……」
「止めて下さいシロウトさん……」
「いやいやチャズ君私はジョニー君の質問に真面目に答えようと……」
「そんな事どうでもいいからそんな話止めて下さい!」
「うおっ!?……りょ、了解、分かったよチャズ君。もうこの話はしないよ。いいよね?ジョニー君」
「あ、ああ……」
凄い剣幕で怒るチャズ。そんな彼女に気圧されてかシロウトは話を止めた。
……しかしいくら何でも今のは過敏に反応し過ぎじゃ無いか?
普通なら冗談だって分かるだろうに……
そんな事を思いながら奥へ進むと広々とした部屋が……
血まみれになっていた。
しかし血が付着してからかなり時間が経っているようで壁や床にこびり付いている血は既に黒くなっている。
黒くなった血が全身にこびり付いている研究員らしき死骸や外を歩いていた魔導兵とバケモノ、被検体の死骸も床のそこかしこに転がっていた。
何かが入っていたと思われる大量に並べられたガラスケースが殆ど壊れている事から
此処から出てきたバケモノ共が研究員を襲い同じく出てきた魔導兵、更には被検体達との激しい戦闘があったのだろう。
そして結果的に生き残った奴も出られず手負いの傷で死んでいった。
………そんな所だろう。
そんな悲惨な部屋の一番奥、
一面に刻まれた文字が光っている巨大な石版の前でアヴィはイスに座り何かを打ち込んでいた。
「よっと……どうだ?暴走は止められそうか?」
俺はなるべく死骸を避けながらアヴィの元まで歩いていった。
…石版を間近で見てみると某人を虫ケラ扱いした大佐が「おおっ……」とか言って見てた石版に超似てる。
……まあ大きさはまるで違うけど。
「……暫く時間をくれ。これはかなり厄介だ」
そう言いながら凄い早さで文字をタッチしていくアヴィ。
画面も無いのにどうやって自分が打ったの確認するんだろう?とかアホな事を考えながらじっと作業を見ていると
「おいジョニー君来てくれ!」
「ア~~ニキ~~~!」
シロウトとラフラが俺を呼んできた。
「此処に居ても退屈なだけだぞ。彼奴等とバカでもやって時間を潰してるといい」
確かにアヴィの言ってる事は中間を抜かすとそれもそうだと思う事だったのでシロウトとラフラの方へと歩いていった。
「で?何なんだ?こんな血だらけの場所に呼んで?」
「この部屋はどこだって血だらけだろうジョニー君」
「まあそうだけどな……で?」
俺は何やらニヤニヤと上機嫌で笑っている目の前の二人の男を見ながら聞く。
「いや見てくれコレを!」
「そうですアニキ!コイツはすごいですぜ!」
そう言ってシロウトが指し示した方向にあったのはオーラの球体みたいなもので包まれた二つの人影だった。
「これが?」
「これが?……じゃないぞシロウト君!右だ!右を見るんだ!」
「右?」
俺はシロウトに言われた通り右を見てみる。
「目を凝らして見て見ろ!」
「………ん!?」
目を凝らして中をよく見てみると……女性!?
「フフフ……見たか!?見たかジョニー君!」
「ああ、女だな」
特徴を言ってみれば腰まで伸びた緑の長い髪に花の蕾らしき物がポツポツと付着しているのが特徴的な女性だった。
肌の色は薄い茶色で…顔は髪のせいで下半分程しか見えないが美人だろう。
「再び聞くが……で?これがどうした?」
……コイツ等はただ俺に美人を見せたいが為に呼んだのか?馬鹿らしい。
「何を言ってるんだ!?ジョニー君、君はこれを見て右斜め下のアングルから見ようとは思わないのか!?」
「………はい?」
………ヤバい。一瞬思考が止まった。そしてシロウトの姿が一瞬、本当に一瞬だがあのバカ馬と重なった。
「アニキ!?そんなに若いのに女のパンツに興味ないんですか?」
「お前真顔でそれを聞くか!?」
「ええ!だってアニキ……年頃のオスですよ!?盛らなくてどうするんですか!?」
「…………」
ヤバい。頭クラクラしてきた。アホだ。こいつら変態だ………
「雷岳にこれと同じ事を話したら拳骨を食らったんだ!」
「当たり前だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
雷岳さん!良かった!アンタはマトモだったか!まだ会って一日も経って無いけどあんたがいい人だって事が分かって俺嬉しいよ!
「取りあえず私はこれをお持ち帰りしたい!」
「と、言うわけでアニキに……」
「手伝って欲しいと」
俺はこの二名の余りの能天気っぷりに敬意を払いたくなってきた。
この状況、更にこの部屋でこの発言。こいつ等の脳内を一度切開して見てみたいぐらいだ。
「ホラ、私を撃退した時使ったあの剣。このオーラ、強力な結界魔法で触れる事も出来ないのだよ……でも君のあの剣ならスパットっ斬って」
「無理だぞ!」
「!?」
突然のアヴィの声でシロウトがアヴィが居る方へと向く。
「そいつはお前の言う通りかなり強力な結界魔法だ元から消すか何かしないと無理だぞ」
「じゃあ消してくれアヴィ君!」
「済まないが私はこの作業で手一杯だ!……それ以前にその結界の解除コードを知らないがな」
「くそぅ……」
「チクショー!」
血の付いた床に崩れ落ちる二名。これが仲間を守れなかった的な展開だったならいいシーンなのだがこのポーズになっている理由が理由だ。同情する気も無い。
「残念だったなシロウト」
そういって肩を叩きながら結界内に居る女を見る。
……こいつ等みたいなフザケた動機じゃないがここで見捨てるというのも気が引けるしな……
…………助けますか。