第三章 十七話 ~化け物と研究者~
さて…只今の俺の周りにいるメンツは…
チャズこと派手な姿が特徴の道化師とアガという長身でガタイのいい男だ。
え?それがどうかしたのかって?
いやだって…こんなメンツで歩き回ると……
「逃げろぉぉぉぉ!」
「「「「#$%¥∞〒&!!!」」」」
………嫌でも目立つんだよチクショー!
「うわぁぁぁ!何でこんなにいっぱい追いかけてくるのぉぉぉ!?」
「ウゴォォォォォ!」
「チャズ…お前自分の姿知っててそんな事言ってる?それとアガは立ち向かおうとしない!」
最初は怪力のアガに任せようとしたもののアガは近接攻撃しか出来無いので基本遠距離攻撃をしてくる魔導兵とは相性が悪い。
数体ならまだ対処出来るものの今追ってきているのは軽く十体は居る。
魔法反射の壁を作りどうにか攻撃を防ぎながら逃げているといった状況だ。俺がこれを使っていなかったら今頃は確実に道に転がっている死体の仲間入りを果たしていたに違いない。
「[ドゴン!]※#$¥¢!」
「あ~クソッ!何で反射した魔法食らってピンピンしてられんだ奴ら!」
「魔法耐性はバカみたいに高いですからね…」
「それでアガの怪力じゃなけりゃどうにもならない程分厚い鎧身に纏ってんだろ!?とんでもねぇよ!とにかく隠れるとこ探すぞ!」
改造魔導兵の雨のような魔法攻撃を背に受けつつ俺達はどうにか道の角に火の手が上がっていない建物を見つけてそこへ逃げ込んだ。
「早く入れ!」
「ヒィィィィ!」
「ウ[ガンッ!]……」
俺達は全員建物の中に入るとドアを閉めた。
アガが自分の身長を考えずに扉に突進したため入るときに扉の上部をぶち抜いたが……まあ大丈夫だろう。
「よし…奴らが此処を通り過ぎるまで不本意だが此処で静かに「助けてくれぇぇぇ!」…してられないな」
ここにも誰か居るらしいな…助けを求めてるんだから助けるか。
「奥の方からだな…行くぞ」
「ウガァ!」
「う…うぅぅ」
俺達は先程助けを求める声が聞こえた方へと走って行った。
しばらく進むと酷い光景が目に入ってきた。
通路一面に地がこびり付き何かに引きちぎられたり溶かされたような形跡がある最早死体とは思えないような肉塊が天井や壁、床にへばり付いていた。
「ウッ……」
「……」
流石にこの光景は俺も吐き気を覚えた。チャズは必死に吐き気を堪えているのだろう。顔が真っ青だ。
「や…止めろ!来るなぁぁ!」
「! 行くぞアガ!」
「ウゴ!」
血にまみれた通路の奥の部屋から叫び声が聞こえてきた。俺は全く表情を変えていないアガを連れてその部屋に入った。
「おい大じょ…」
部屋に入った瞬間俺の頭の中の時間が一時的に止まった。
確かに生き残りは居た。血が付いた白衣を着メガネをかけた奴一人だけだが。
問題はそこじゃない。そいつに今まさに襲いかかろうとしてる奴が問題だ。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛……」
化け物が居た。最早ファンタジーとかそう言う類じゃ無い完璧な化け物が居た。
天井に頭が届くほどの巨大な体。
筋肉隆々を既に通り越して只の肉の塊にしか見え無い腕。
その腕の先に延びる一般人の腕の太さ程ありそうな太い爪が五本。
アガと同じ様な顔をしているが目には全く生気が宿っておらず口から流れ出る唾液のような物が地面に落ち煙を出している。
うん、見た目はバイオ2のGに似てるかな?。それも第三形態の。
……俺実は異世界に来たんじゃ無くてラクーンシティに来たんじゃね?
「ヴア゛ァァァァ!」
俺の方を向いて口を大きく開け挨拶(?)をする…うん、コイツ命名しなくていいよね…
「死ねこの巨大クソ(余りに汚い言葉なので自主規制)が!灰になれぇぇぇ!」
一刻も早くこのあまりにもグロテスクな生き物を焼却したかった俺は後ろに居る奴の事を全く気にしないで最高火力で黒炎を放った。
「ヴォァ!ガグァギゴォォォォ!!!」
あっと言う間に黒い火柱と化す化け物。腕を振り回して必死に火を消そうとしているようだが無駄な抵抗だ。
……良かったよ。コイツに魔法耐性無くて。
「ガ……ギィ……」
結果数分間凄い勢いで燃え続けて踊り狂った化け物も最後は力無く倒れ動かなくなった。
「おい大丈夫か?」
俺は今や炭の塊となった化け物の向こう側で縮こまっていた白衣の男に声をかける。
「あ…ああ大丈夫だ……助かったよ」
そう言って白衣の男は立ち上がった。
「……ここで生き残ったのは私だけか?」
「ああ、そうみたいだな」
「そうか……」
白衣の男は少し俯くとこちらを見てきた。
「……所で君は見たところここに住んでいる訳じゃあ無さそうだね」
「ああ、俺はここの住人じゃ無い」
「そうか……なら少し話そう。此処で何が起こったのか教えるよ」