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第三章 十三話 ~給食のおばちゃんは凄い~

シロウトとの戦いに勝利してから半日、俺はこの施設(監獄)の厨房に立っていた。

たった半日でほぼ全快する俺の体……ますます人間離れしてる気がするよ俺……


「フ~ンフフフ~ン……」


ま、それはともかく鼻歌を歌いながら鍋をかき回す俺。

それにしても鍋がデカい。まあ数百人分のスープを作ってるんだからそりゃそうなのだが…

これを毎日給食のおばちゃんは作っているというのか……尊敬に値するぞ。

今作っているのは厨房に山積みにしてあった見た事もない野菜で作ったスープだ。

多分厨房に置いてあったんだから食えないことは無いだろう。


「味はどうかな?」


俺はスープを少量飲んでみる。……うん、ちょっと味が薄いかな?


「え~と調味料調味料……」


俺は近くに置いてあった粉や味噌のような物が入った入れ物を取り出すとスープの中に入れる。

一応調味料の味見もしているが何の素材で出来てるかなんて解らないので「塩っぽい」「胡椒っぽい」「なぁにこれぇ?」などで判別している。

……最後のは気にするな。マジで何コレな味だったんだ。


「[ズズッ]………うん、よし完成!」


最終的な味の調整をして俺特製スープの完成だ。

俺は火を消すと外で待っているはずのエリーナに報告する為に厨房から出た。


「あ、出来ましたか?」

「ああ出来たぞ、他の奴に食堂に来て手伝うように言ってくれ」

「分かりました。すぐに呼んできますね!」


厨房の扉のすぐ隣に立って待っていたエリーナはすぐに仲間を呼びに走って行った。






数分後、あっと言う間に皆さんが食堂に集まり食事が始まった。


「はぁ……」


俺は自分の分のスープを片手にエリーナの隣の席に座った。


「ご苦労様です」

「ああ」


エリーナがねぎらいの言葉をかけてくる……いい子だな本当に……


「……しかしおかしいだろ?これだけ居て料理が出来るの俺だけって」


ここの独房に入れられてた総数はざっと三百人程。

その全員が料理がまともに作れないとは思っても見なかった。


「仕方が無いですよそれは。此処に放り込まれた奴等は殆どが奴隷です。料理のスキルなど持っている筈が無でしょう」

「……オイ」


何時の間にか俺の右隣にはシロウトがさも当たり前のように座っていた。


「ん、何です?私の顔を見て……私の顔に何か付いてますか?」

「いや、何でお前が俺の隣に座ってるんだって話なんだが…」

「それは私が君の…おっと、そう言えば君の名前を聞いていませんでしたね、名前は何と言うんですか?」

「……ジョニー」

「そうかジョニーかいい名ですね、……それでは話を戻しましょう……私がジョニー君の隣に居る理由は何となくです。理解しましたか?」

「いや普通半日前に敵同士だった奴が隣に座ってたら疑問に思うだろ?」

「敵だった仲は昨日までですよ。今日からは……そうですね、隣で飯を食う仲です」

「………」


……何か言い返すのが馬鹿らしく思えてきたのは俺だけだろうか。


「う~んこのスープ、中々の味ですね」


気にしたら、負けなのかな……






食事が終わった後、シロウトが「部屋まで来てくれ」と言って来たので

俺は食器の片付けをエリーナに任せてシロウトに付いて行った。


「えっとたしかここに……」

「……」


俺が案内されたのは監視塔の最上階、即ち壁がぶち抜けている部屋だ。

昨日俺が滅茶苦茶やったせいもあってか部屋はボロボロだった。


「ええと…ああこれだ。」


シロウトはひっくり返っている戸棚を開けると紙を一枚取り出した。


「よっと、ジョニー君これを見てくれ」


そう言うとシロウトは紙を広げて俺に見せてきた。

見た感じは何かの見取り図のようだ。


「ええと……これは?」

「地図だ。もう一つの監獄の」

「もう一つ?」


俺は一瞬思考が停止した。もう一つって事は今回と同じ事をもう一回しなきゃいけないって事だよね?


「この地図に書いてある第二被検体収監施設は此処の奴等とは違い特殊な能力を持つ奴等を集めた施設だ。当然ながら警備はこっちより厳重だし看守長は私よりも圧倒的に強いです」

「嘘ぉ……」


軽く目眩がした。シロウトより強いって……絶対大乱戦になるじゃん。


「……ってちょっと待て、なんでお前は俺にこんな情報を?」


俺はふと疑問に思ったことを口にした。


「どうせこの施設が貴方によって潰されたのを知れば雇われた身の私は役立たずとして始末されますからね……どうせなら、と思いまして」

「お前雇われてたのか…」

「ええ、此処に居た兵達も雇われですよ……貧しいが故に故郷を離れ、愛人、家族と別れた者ばかりですよ」


ああ、だから何か昨日死亡フラグっぽいセリフ言ってた奴が居たのか。


「まあ兎に角私が貴方に出来る事と言ったらそれぐらいです」

「ありがとなシロウト」

「いえいえ、私の好きでやったことですから」


そう言うとシロウトは「がんばって下さいね」と一言言うとその部屋を出て行った。


「……さて、行くしかない…よな」


俺は覚悟を決めるとシロウトに渡された地図をしまって部屋から出た。

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