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第一章 四話 ~ユニコーンのティール~

~前回のあらすじ~


はいはい今回も私ハデスがあらすじを言っちゃうよ~


前回雑魚……もとい盗賊行為を働いたゴブリン達を相手に圧倒的な力で勝った翔君、しかしまだまだ甘いぞ翔君!二十人抜きではもっと機敏な動きが出来ていた筈だ!気合を入れろ!弱音を吐くな!……っと、あらすじから脱線してしまった……


それでは本編どうぞ!

しょうせつか「あ~あ、私もこんな角の方が良かったな……手入れがしやすそうだ」

「ちょっ[グイッ]うおっ!もう………戻していいですか?」

「駄目だ[スリスリ]う~ん、触り心地がいいな……」


あの後俺が戦利品(という名の強奪品)を持って移動している途中に突然ジェミィが俺の角を触ってきた。驚きはしたが別に嫌な事でも無かったので自由に触らせている……まあ嫌でも両手が塞がってるんで拒否は出来なかったんだけどな。

ああ、牛や鹿が角を触られていた時ってこういう気分だったんだろうな~と思いつつ二人でディアトリアへと向かっていた。


「触り心地いいな~…これで何にも使って無いんだろう?取り外せるんなら欲しいなぁ…」

「引っこめる事はできるぞ?」

「あ、駄目!もう少し触らせてて」


そう言って俺の角を掴むジェミィ。そんな羨ましい目で見ないでくれ……ってか早く引っこめたいです。

ちなみにこの世界で角は威厳や地位を表す象徴的なものとして使われる事が多く兜や王冠にもあしらわれる事があるそうだ。種族の特徴として角が生えている種族は他の種族よりも上に見られる事が多い為ジェミィは毎日手入れをしているらしい。

しかし魔物はともかく人型で角が生えていると色々不便らしい。ジェミィの話では、そのままで寝るとベッドに角が突き刺さったり、人ごみで振り向くと角の高さに顔がある人をスッパリ…と言った事があるらしく、その為に角のカバーは街や村などでは必須だそうだ。


「あの~……もうそろそろ放して…」

「嫌だ、何時でも引っ込められるんだからせめて私が飽きるまでは触らせてくれ」

「ううっ………しかし不便ですよね、角が生えてるってのも」

「慣れればそれ程でも無いさ……ってアレ何だ?」


突然歩みを止めて俺の角から手を放し近くの草むらを指を指すジェミィ。

角を掴んでいた手が離れた為頭の自由が戻った事を喜びつつも俺はその方向を見ると……


「……」


ほぼ全裸の男性がうつ伏せで倒れていた。






「いやぁ、ありがとうございます!助かりましたよ……」

「当然の事をしたまでですよ」

「まぁ……そうだな、うん」


倒れていた男性はペコペコとお辞儀をしながら俺が渡した服を着ていた。

先程の姿からしてゴブリン共が奪っていたのは彼の持ち物だと判断した俺はほぼ全裸の男性を介抱したのだ。案の定彼の物だったらしい。

まあそのせいで若干ジェミィのテンションが下がり気味なんだが。


助けた男性は白銀のロングヘアー、額に一本角が生えている。身長は俺よりも若干高いと言ったところだな。

顔は……イケメンだ。銀と空色の二色で彩られた高級そうな軽鎧と腰のレイピア(?)がマッチしている。


「私の名はティールと言います。種族はユニコーンです」

「あ、私は風見翔と言います。種族は人間です」

「人間……ふむ、そうですか……よろしく」


互いに自己紹介をし差し出された手を握る。やっぱり種族は名乗るものなのか……何でジェミィは自分の種族を……いや待て、この事については詮索しないと決めたばかりじゃないか。

う~ん、それにしても彼の種族はユニコーンか…何か納得。って待て、何か違和感があるんだが……


「……って何でユニコーンが人型なんだよ!?」

「え?」


ティールがきょとんとした顔で俺を見てくるが疑問に思ったもんは思ったんだからしょうが無い。

違和感の正体はこれか!ユニコーンって俺の知ってる限りは馬だった筈だし!人じゃ無かった筈だ。

まぁ元の世界じゃ空想の産物だし俺達が思い描いていたものと現実だと違いが出るのは必然で…


「あ~、その質問は私が答えよう」


俺が理解不能な袋小路に突入する前に俺の事情を知っているジェミィが割り込んできて説明を始めた。


「ユニコーンは元は魔物なのだが知能が高く生まれる時に肉体変異の魔法を宿している物を体に身に付け人型になっているんだ」

「そんな面倒な…」

「馬の状態だと他種族との交流の時に色々と不便だろ?……元が動物、魔物型の場合は殆どがこの方法で人型の肉体を得ているんだ」

「成程、そういう事ですか…」


そうするとやっぱりティールは元は馬なのか…

とすると俺達の世界の伝記モノに書いてある通りティールの一族は女たらしが多いのかな?


「え~と?翔君……そこの彼女は一体?」

「私の名前はジェミル、ジェミィと呼んでくれ」

「そうですかジェミィさん………翔君、彼女は君のコレですか?」


ティールは俺にしか聞こえないような小声でそう言って小指を…


「そ、そんな訳無いだろう!」

「聞こえていましたか……失礼」


聞こえていたのかジェミィが若干顔を赤らめながら凄い勢いで否定した。

こういう事に耐性が無いのかジェミィは?反応が初心すぎるだろ……見る人が見たらその反応を間違って

とられるぞ…


「まあ冗談はさておき私の質問に答えてくれませんか?……彼は本当に人間ですか?書物で見た限り人間には角なんて生えていなかった筈なんですけどね…それと彼はこの世界の常識を知らないようなのですが……」


「ああ、それはこいつが…」

「いいよジェミィ、俺が答えるから」

「そうだな、私も若干知らない部分もあるし翔自らが話した方がいいか」

「そう言う事……じゃあ話そうか」


立って話すのもなんなので俺達は地面に座ると俺は二人に今までの事を説明した。






「ふ~ん、魔王にねぇ……」

「運が悪いと言ったらいいのか悪いのか…」

「だよなぁ……」


今此処まで来たいきさつを二人に説明してみて思うんだが今更ながらマジで貧乏クジ引いたような気にしかならないのは何故だろう。


「ま、その内生きていれば良いことの一つ位あるさ」


はぁ……とため息をつく俺を優しい顔で軽く背中を叩き慰めてくれるジェミィ。

あぁ、何でだろう。涙出てきた……


「……決めました!」


そんな空気の中突然立ち上がり大声を出すティール。何を決めたっていうんだ…


「私、ユニコーンのティールは風見翔に地の果てまで付いて行きます!」


そう言って俺の前にひざまずくティール。え、ちょ!?何?


「と、言う訳で私をお供に連れて行って下さい!」

「「うわぁぁ…………」」


同時に引く俺とジェミィ。いや君、いきなりどうしたんだ。彼の中で一体何が起こった!?


「あ……ちょっと!何引いてるんですか!」

「「いや、普通引く」」


またしても俺とジェミィの声がハモる。なんと言う気持ちのシンクロ。ってそれよりも何これ、どこのゲーム展開だよ?

しかも俺の身の上話使ってお涙ちょうだいな同情で仲間増やしたいみたいな考え欠片も無いしそんな感じで入られたんなら正直困る。


「引かれた………何でだ!カッコイイと思ったのに…………いや、そんな事はどうでもいい!!仲間に入れて下さい!」

「「断る」」


俺とティールの問題なのにジェミィまで俺と一緒に反対したよ!?

てか今の行動をかっこいいと思ってやったんかい……こいつアホか?アホなのか……?


「そんなぁぁぁぁぁ!!お願いです!私羞恥心を必死に抑えつけて今の渾身のアクションをやったんですよ!?」

「尚更だよ!」

「そこをなんとかぁ!」

「無理だ!」

「少しの間だけでも……」

「いやだから…」

「それを…」




約三十分後……


「うん、もう好きにして……」

「ありがとうございまぁす!」


長い問答の末、精神が擦り切れてしまった俺達に対し疲れた様子を微塵も見せずに(顔は汗と涙まみれだが)土下座するティールに遂に折れてしまったのであった……

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