第二章 二十二話 ~神殿からの脱出~
俺は意識を取り戻した後ゆっくりと周りを見渡す。
俺たちが居た部屋は散々なことになっていた
中央にあった像は粉々に砕け天井には大穴が開いて日の光が差し込んでいた。
レナ達はどうやら無事のようで奥の方に集まり牡丹が壁を登っていた。
「あ、かざっち大丈夫だった?」
俺が起きた事に気づいたレナが近寄って来る。
「ああ、所で何やってんだ牡丹は?」
そう言って脚を出して壁を登っている牡丹を指さす。
「この垂直な壁を登ってあたし達にロープを下ろすんだって。」
「それってドエヌに任せりゃ良くね?飛べるんだし」
「さあ?牡丹なりの考えがあるんじゃないの?」
そう言っているうちに牡丹の方は登り終えたようだ。
「よし!ここは登っても崩れる心配は無さそうだね、下のお二人さん!今ロープ下ろすからそれに掴まって登ってきてね!」
そう言って上から二本のロープが下りてくる。
「それじゃあ登ろっか翔!」
そう言って袋を担いで登り始めるレナ。
マジであの袋何?食料は俺が持ってるし……
ま、いいや。さっさと登ろう。
それから五分後、俺は神殿から脱出した。
その後ドエヌが役目を果たしたので聖堂に帰ると言った。
「そうか、コレロントさんによろしく言っといてくれ」
「りょーかい!また会おうね!」
そう言って飛び立つドエヌ。暫くするとその姿は雲に隠れて見えなくなった。
「…………で?次は何処行くの?」
「やっぱ付いてくるのかレナ」
「あったり前だよ!こっちの方が城にいるよりも断然楽しいもん!」
楽しいから、か。子供っぽい理由だな……まあ実際子供なんだけど。
「じゃあ兎に角この山越えて港町へ行こう、早くベットで寝たいしな」
「うん、じゃあさっさと越えちゃお!」
「あたしも水浴びはしたいかな……だれかさんのお陰で砂だらけだし」
「アハハハ………ごめん」
ジト目で見る牡丹にゴメンゴメンと謝る牡丹。………たった二人だけなのに騒がしいなホントに。
「そう言えばレナが背負ってるその袋の中って何なの?」
「あ、これ?この中はね……」
そう言うとレナは地面に袋を起き中を開く。
「「なっ……」」
中を見た瞬間俺と牡丹は固まった。中に入っていたものは美しいきらめきを放つ宝石や金で出来た数々のお宝だった。
「ななななななななな………どこで!?いつ!?どうやって手に入れたのぉぉぉ!?」
ガタガタ震えながらレナの方を見る牡丹。何て言うか絶望とか悲しみとかそんな感情が全部合わさったような顔をしている。
そんな牡丹に気圧されてかレナはどもりながらも話し始めた。
「あ…あの…みんなが行った後…ち、違うへ…部屋を見たらありました。しかもまだ沢山…」
「フォォォォォォォォォォォ!!?」
レナが言い終わる前に牡丹は奇声を上げて先ほど俺達が出て来た穴に走り始めた。
「……あったんですけど像が爆発した衝撃で埋まっちゃいました。」
「フォォォォ………えっ?[ズルッ]アーーーーーーーーーーッ!!!」
レナの言葉を最後まで聞いた瞬間「はい?」って顔をしてこっちを向き止まろうとブレーキをかけたのだが少し遅かった。
牡丹は止まりきれずに頭から穴へと落ちていった。
そして彼女の負の連鎖は続く
[ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……]
牡丹が落ちた衝撃で限界を迎えたのだろう。穴の壁が崩れた。
「え!?ちょっと!!これは洒落にならない!!死ぬ!生き埋めになる!誰か助け[ゴゴゴゴ……]」
俺とレナはその光景をただじっと見ていた。いや見ている事しか出来なかった。
「…………レナ、お前は悪くない。全ては人の話を最後まで聞かなかった牡丹が全面的に悪い」
「………うん、そう思うことにする」
こうして俺達は短い間ではあったがかけがえの無い友であった牡丹を失ってしまった。俺とレナは静かにその場所を去っ……
「[ボコッ!]ごふぅえあっ!ゼー、ゼー、あたしを見捨てる気か~っ薄情者~っ!」
…………あ、生きてた。
「兎に角引き抜いてよ!もう力入んない~!」
そう言って手を伸ばしてくる牡丹。仕方がないので思いっきり引っこ抜いた。
「あ~、もう無理。疲れた~~」
「お~い、立ってくれ~動いてくれ~」
「い~~や~~」
たれぱんだの様なポーズで動かない牡丹。しかしその状況がレナの一言で改善された。
「ああもう!町に着いたらお宝山分けしてあげるから動いて!」
この一言が効いた。牡丹の顔に生気が戻り勢いよく立ち上がった。
「オーケーこんな所でもたもたしては居られない!サッサと町に行こうじゃないか諸君!」
ヒャホォォォウ!と叫びながら走っていく牡丹。
きっと牡丹の原動力は金だ。金としか思えない。どこぞの黄色いニンニク男と良い勝負だ。
「いいのかレナ、半分もあげちゃって」
「うん、全然。あたしこういうのに全く興味ないから………それより急ご、このままじゃ私達が置いてかれるかも」
「………そうだな、急ぐか」
ものすごい勢いで山を走って行く牡丹を見ながら俺とレナも走り出した。
その半日後満身創痍といった感じで港町にたどり着いた俺達は通行人に
「お前等だいじょうぶか?」と心配そうに聞かれた。