第二章 十九話 ~神殿の守護者達~
戦闘開始の合図はあまりにも唐突だった。
[ブォン!]
「おわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ヴォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ン!!!」
一番前にいた石像が片手に持っていた槍をこちらに投げつけたのを皮切りに一斉にこちらへ向かって襲いかかってきた。
「うわぉ!この神殿の機能には敵の排除もあったのね!すごい!」
「感動してる場合かオイ!俺達敵と見なされたんだよ!?この状況を理解しろ!そして巻き込んだ俺達に謝れ!」
「いや~ごめんごめん!こんなになるなんて思ってもみなくて……」
テヘッ☆って感じの顔で謝り目を輝かせて襲い来る石像達を見る牡丹。
誓って言える。こいつ反省してねぇ、そしてこの状況を理解してねぇ。
俺は他の二人の様子を見る。
「…………………」
あ、ダメだ。レナはお人形さん(気絶)モードに入っちゃった。こりゃ戦力外だな。
「アハハ……ざっと四十ってとこかな?いくら何でもこれはヤバいよ?」
……ああ良かった。ドエヌは意識がはっきりしてるしこの状況を理解してる。
「………だよな。俺もそう思う、兎に角レナと後ろに下がってろ」
そう言って俺は攻撃の構えを取る。それを察したのかドエヌはにっこりと笑って
「りょーかーい!それじゃあレナと一緒に下がってるね!」
と言いいまだにブツブツ呟きながら立っているレナを連れて十メートル程下がった。
俺は二人が下がったのを確認すると
「そんじゃ行くぜ!吹き飛べ!スカーレットスパァァァァァク!」
横になぎ払うように真っ赤な極太レーザーを最大出力で発射した。
「オ゛オ゛オ゛オ゛[ズガァァァァァァン!]」
「ちょ!私のこと忘れおばぁぁぁぁぁぁぁ!」
轟音と共に赤い光線に飲み込まれる石像軍団。いくら五メートル近くあったとしても只では済まないだろう。
あとこの元凶である女性の悲鳴が聞こえたようだったがあまり気にしないでおこう。
「おおすごい!これが魔王の力!」
「………ハッ!私何を……」
レナも轟音で目覚めたっぽい。よし、これで戦力になる。
「お~いレナ!降りてきて敵にトドメ刺すの手伝ってくれ!」
「? 敵なんていないじゃん。」
レナが不思議そうな顔をして辺りを見回す。無理もない。さっきの攻撃を放った所の瓦礫が雪崩のように多い被さったのだ。それにレナは石像が動いたのを知らない。瓦礫の山から手や足が覗いてはいるがレナは良くてオブジェぐらいにしか思っていないだろう。
なぜトドメを刺すのかと言われれば俺の光線の威力自体では多分大きなダメージが与えられていないからだ。だからきっちりトドメを刺して動かないようにしなければならない。突然土の中から飛び出して攻撃されたらたまったもんじゃないからな。
「あの土に埋もれてる石像が動き出してさ、一応埋めたんだけど出られると心配だし片っ端から潰して欲しいんだよ!」
「そう言う事ね、オッケー!」
早速レナはハンマーを取り出して瓦礫の山へ向かい作業を開始する。
「せいっ!とうっ!うりゃ!どりゃっ!」
「[ズドン]オ゛ッ[ドゴン]ア゛ッ[ボゴン]イ゛ィ゛[ボガン]………」
レナが瓦礫の山を叩く度にクレーターが出来石像の声がする。
端から見てると何か拷問してるみた…
「誰か助け[ドン!]ぐびゅ!」
……今のは幻聴だ、うん。
「ふぅ………これくらいでいいかな?」
数分後、瓦礫の山だった場所は細かい砂だけが残っていた。
え、牡丹?誰ですかそれ?お花の名前かな?ボクは全く知らないよ?ハハッ☆
「がっでにごろずなぁぁぁぁ!」
後ろから牡丹の声が聞こえたので振り向いて俺はぞっとした。
「うわぁゾンビ!ついにバイオ4の村長になったか!?」
「わげのわがらないごどいわないで!まじでいだがっだんだがらね!」
頭から血を流し服はボロボロ、何か背中に生えてる脚が無くとも十分ゾンビに見えそうな気がする。って言うか良く生きてたな……
「キャーッ!牡丹大丈夫!?どうしたのその傷!」
変わり果てた牡丹の姿を見て悲鳴をあげるドエヌ。まあそりゃそうだろうな。って言うかこの姿をレナが見たらヤバくな……
「あ、牡丹だいじょギャア%¥♭¢¥#〒☆♪$~~」[パタリ]
牡丹の姿を見たレナは最早生き物の出す声では無い奇声をあげて倒れた。
「グフッ……もうだべ……」[バタリ]
そして更に力尽きて倒れる牡丹。
「ちょっと休憩しようかドエヌ」
「そうだねかざっち。あたしもう展開が展開で疲れたよ」
その後俺とドエヌは戦闘不能(気絶、意図的)を適当な場所で寝かせ神殿内で暫くゆっくりしたのだった。