第二章 十六話 ~この親にしてこの子あり? 下 ~
ハデス「オイ!作者はスマキにして持って来たか!」
悪魔「サーイエッサー!此処にあります!」
作者「え?ちょっ?俺なんかした?」
ハデス「自分の胸と更新日をよ~く見てみるんだな!オイ、やれ!」
作者「わー!ちょっと!ごめんなさい!マジでごめんなさい!」
ハデス「大丈夫だ……出来るだけ痛くないように私自らが手を下してあげようじゃないの作者さんよぉ……」
作者「え……ちょ……止め……ヒィィィィィィィィ!!!!」
空を見上げればどこまでも続く青い空、そして白い雲。
そして空には木の葉が舞い小鳥が飛んで………
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
城門と沢山の衛兵さん達がまるでゴミが風に吹き飛ばされるかのように俺の頭上を通り過ぎていく。
俺は視線を下ろし正面を見てみる。
城門があった場所には見事な穴が空いていて、かろうじて踏ん張り城壁に留まった片方の門はくの字に曲がっている。
その少し手前には見事なクレーターが出来ており、そこに居た筈であった多くの衛兵さん達は現在全員宙を舞っている。
……いやはや何だろうねこの光景は?もう何だか立ったまま失禁しそうだよ俺?
あっと言う間だったよ。うん、あっと言う間だった。みんなで「応!」って言った二秒後にレナのお父さんが襲来したんだ!そしてこの有様だよ!
どんだけパワフルなんだよお父さん。俺の強化された動体視力でチラッと見たんだけどさ。
素手でしたよ素手。もう一度言いますよ?素手です。それで厚さが俺の横幅(健康な一般男性の肩幅)位ある城門の片方をくの字に曲げたんですよ?
「ま、まさか配置についた瞬間に到着なさるとは……」
「今回も失敗だねじい。」
そしてその光景をもう諦めました的な目で見ているレナとガルテリア、
「じい…私、ちょっとお父様とお話してきます。後始末お願いね」
そう言ってクレーターに向かって歩いて行くレナ。
何でだろう?レナのお父さんが可哀想になる姿しか連想出来ない。
そして衛兵に指示を出し始めるガルテリアさん…………ってちょ?
「えぇ?もう諦めるの!?」
「はい、今回も失敗です、見て下さい。」
死んだ魚のような目をしたガルテリアさんはそう言って城の塔を指さす。
その塔にはさっき俺の頭上を飛んでいった城門が飛んで行っていた。
「私の計算ではあの角度から城門が当たると城の方へと倒れてそのまま城が崩れます」
「そうなんですか………って計算早くないですか?」
確かレナの父親が扉を吹っ飛ばして三秒ぐらいしか立っていない筈だ。
お爺ちゃんの底力ってやつか?
「城を再建してからの二年間の走馬灯を見ている間に計算しました」
「いや計算する暇あったら何か打開策考えようよ!?」
「無理です。私の計算だと後四秒で塔に当たります。それに当てられる程早い速度、威力の…」
速度、威力か……いけるかどうか分からないがこれしかないだろ。
「スカアレットスパァァァァク!」
[ドゴォン!]
おぉ当たった!流石俺!そしてありがとう東方!
「おぉ!軌道がそれた!」
扉と威力は殺せなかったけど。
[ボゴォン!]
鈍い音と共に城に向かってでは無く城の外側に倒れていく塔。
「ふう、それでは私は負傷者を運ぶのでこの場はまかせましたぞ翔………執事部隊!至急負傷者を……」
そう言うとガルテリアさんは執事を集めて小走りで吹き飛ばされた衛兵さん達の方へ走っていった
だけど、運命の神様は残酷だったんだ。
倒れた塔の下には……………書庫があったんだ。
思い出して欲しい。今日の朝の出来事を。一応戦力にならない人達は安全の為城の外に避難しているのだけれども司書さんは…………
うん、確か避難勧告が出ても書庫の中で……本を持ったまま出て来なかったような気がするぞ……。
「やべぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
しかし叫んだところで運命は変わる筈も無く……
[ドゴォォォォン………]
「ノォォォォォォォ!!!」
書庫はペッシャンコに潰れて瓦礫の山になった。
これもう司書さん死んだんじゃね?ハハッ、やっちゃったんだぜ!……だぜ………
「ちょっとガルテリアさあぁぁぁ……」
そして俺は後ろを振り向いてガルテリアさんを呼ぼうとしたが全員の視線はクレーターへと注がれていた。
それもその筈。クレーターの中心ではレナとレナのお父さんの“お話”の真っ最中だった。
「だからレナ!今回もどっきりサプライズ[ドゴン!]ブギュッ!?」
「父上!何回言ったら分かるんですか?いい加減自重っ!してっ!下さいっ!」
「[ドゴン]ゴフッ![ドガン]グヘッ![グシャッ]おばぁぁっ!レナ!止めて!お父さん死ぬ!最後変な音したよ!?…………ハッ!これがもしや今時の女子が好むSMプレ…」
「死ねぇっ!」
「[ゴキグシャボキボキッ]あ$♭€#ぬ#♪∞£ん±☆△¥※〒しゅ!」
う~ん、あれはスキンシップかな?うん、そうだろ。決してレナが父親を怒りでハンマーを降り下ろしミンチにしてるとかそんなんじゃ無いだろ。
雛見沢症候群にかかっているわけじゃあるまいし……レナだけに。
「………突っ込まないであげて下さい。あれは………そうです。レナ様と陛下の毎回行われるスキンシップです」
俺の横に立っているエリアスさんが苦笑いしながら俺に説明する。
………うん、ここは無理にでも理解しないといけない気がする。空気が読める人として。
「分かってますよエリアスさん。俺もスキンシップだと思いましたから」
「そうですか、安心しました。それではお二人がスキンシップをしている間に私たちは…………ッ!」
そう言って俺の後ろを見たエリアスさんの顔が突然青ざめ石のように固まった。
「どうしたんですエリアスさん?」
周りを見てみると俺の後ろを見ている衛兵さん達も同じようにフリーズしている。
「? 何がある……ん…………ヒッ!?」
不思議に思い後ろを振り返ってみると…………俺もフリーズした。
俺の後にあったモノ……いや正確には歩いてきている者の姿は………司書さんだった。
服はボロボロ。ホコリだらけの体からは異様にどす黒いオーラが溢れだしていて。目はもう捕食者のそれだ。
これを怖いなんて言わない奴はもう闇の化身と化したどこぞの魔王ぐらいだろう。言っておくが無論俺じゃない。
そして暗黒面に堕ちた司書さんは俺達の前まで来ると一言。
「ショコヲコワシタノハダレデスカ?」
底冷えするような暗い声。その時その場に立っていたレナ以外の心が一つになった。
「陛下です」
ウィーン合唱団もビックリなハモリっぷりだった。
「ソウデスカ」
そう言うと司書さんは持っていた本を開くと何やら詠唱を始めた。
「猛り狂い交わるは光明と深淵の双竜……」
アレ?何かゲームで見るような七色のデカイ魔法陣がクレーターを中心に……
「っ!翔!逃げろっ!巻き込まれるぞ!」
フリーズからいち早く回復したエリアスさんが俺の方を揺すって魔法陣の外へ逃げ出す。
「え?エアリスさんちょっ!レナ!逃げるぞ!」
「我が盟約に則り双竜を我が元に…」
エリアスさんに次いで次々と魔法陣の外へ逃げ出す衛兵さん達。
レナは………まだ父親殴ってる!何やってんだアイツは!
「アハハハハ!死ね!シネ![グィッ]!?」
俺は急いでレナの元まで走るとまだ父親を殴っているレナの襟首を掴み魔法陣を飛び出した。
次の瞬間。
[ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…]
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
俺の真後ろに白と黒に輝く柱が天に向かって伸びていった。
「………………司書さんって強かったんだなレナ」
「……………………うん、お父様生きてるかな?どうだろエリアス?」
「…………………多分大丈夫でしょう。レナ様とガンダラシア様はこの親にしてこの子ありって感じですから。」
その後俺達は白の中庭に大穴が開いたことを嘆くガルテリアさん。
その時の事を全く覚えていず。潰れた書庫を見て泡を吹いて気絶する司書さん。
夕方頃になって黒こげで落ちてきたレナのお父さんの対処に追われる事となった。
~翔君の人物メモ~
レナ(レナヴァイス•ザネリ•ビヒモス)
わんぱくってレベルじゃないお姫様。
彼女が持つ武器「崩天」はレナ自身の身長程もある巨大な戦鎚。装飾もオシャレ。
持つ者の潜在能力を引き上げる力があるマジックアイテム。一応家宝らしい。
種族特有の特徴としては異常なタフさとスピード。それに身長、体格に見合わない怪力にある。魔法に対しても高い耐性を誇る。
魔法の才は種族を通して殆ど皆無。良くて初期魔法を使えるレベルらしい。流石筋肉バカ。
しかしまだ見せて貰ってはいないが地震、地割れを起こしたり、大地の振動で何処に生き物がいるのか大体感知出来るらしい。
因みに容姿はひぐらしのレナと羽入を足して割った感じ。角がソックリなんだよこれが。あうあうしないけど。
ガンダラシア•ムーチェ•ビヒモス
レナのお父さん。この大陸の王。魔王です。
何かちょいワルオーラを出しているダンディーな人、いやベヒーモス。
普段はマトモらしいのだが娘の事となると暴走するらしい(既に実証済み)
因みにレナと同じく教育係だったガンダラシアさんには頭が上がらないらしい。
普段は王都に妻と二人で暮らしていて二年ごとに数ヶ月だけエンディアスに帰ってくる。
エリアスさん曰くレナ様に教養を付け足したのがガンダラシアさんらしい。
所でやっぱベヒーモスにも本来の姿があるのかとレナに聞いた所、
「うん、私達は魔具を使わずに自分の力でこの姿になってるんだ!凄いでしょ!」
と胸を張られた。
あれ?ベヒーモスって魔力殆ど無いんじゃ?と思ったが
エリアスさんの言うところによると
魔力はあるが扱えないのだけなのだそうだ。だから人型になるのには別段支障が無いらしい。
…………何?肉体変化って魔法じゃないの?
まぁとにかくレナ達ベヒーモスの本来の姿はとにかくデカイらしい。
うん、それだけ。