第二章 一話 ~魔獣の大陸エンディアス~
あれ?翔君がディアトリアに居ない!?
何で!?どうして!?
………あ、違う大陸に飛ばされちゃってるよ翔君。
何やってんだか…まぁどうでもいいか。
私は翔君がこの世界に飛ばされて何を起こすのかっていうのを見てたいだけなんだけどね?
画面を見てる貴方達はどう思う?
やっぱ私が最初に立ち上げたラブコメ展開ってのをお望みなのかな?
……だけど翔君フラグ立てないね~
だってさ?普通こう異世界に飛ばされたらさ、
私が見てる小説、ほらゼ×の使□□や迷い☆オ◇◇◇◇ン?
……って何このピーブー音!?いったい誰が流してるの!?
………まあいいかっ、兎に角何か進展欲しいよね?
作し………彼に直談判してみようか、
……うん、そうしよう。最近出番少ないし
あ、関係ない話しちゃってゴメンナサイねホンと!
それでは本編どうぞっ!
翔の足下に魔法陣が展開される数分前……
ディアトリア王国が有るゴムール大陸から遙か遠くに位置する大陸エンディアス。
この地を治める者が居なくなった後、“大地に足が着く者の王”と呼ばれる
ベヒーモスの一族によって統一された大陸である。
「ここをこーして………供物はここ……と、よし!下準備完了!」
そして今“元”ベヒーモス一族が暮らしていた城で何やら不思議な魔法陣を書いている一人の少女。
身長は百五十センチ位、小麦色の肌に手入れの行き届いたオレンジ色の髪
その髪の間から金色に輝くヤギのような角。
彼女の名はレナヴァイス•ザネリ•ビヒモス。愛称はレナ。
この大陸の王、ガンダラシア•ムーチェ•ビヒモスの愛娘である。
「ふっふーん♪か•ん•せーい!」
レナは“一応”完成した魔法陣を見下ろすと上機嫌で呟いた。
「これで魔王を呼び出して……ムフフフフフフ」
何故彼女は平和なこの大陸で魔王などを召還しようとしているのか、
その理由はあまりにも他愛無いものであった。
「絶対魔王を召喚してこの城からコッソリ抜け出してやるんだから!」
……これが魔王を召喚する理由であった。
「……レナ様?一体何をはしゃいでおられるのですか?」
不意にレナの後ろから声がかかる。
その声を聞いた瞬間レナはまるで人形のように首だけを動かして振り向いた。
そして後ろに立っている女性を見た瞬間
「出たぁ!」
「出たぁ!…って私はお化けですかっ!」
まるで亡霊を見たかのような顔をして叫んだレナに神速でツッコミを入れる女性。
彼女の名はエリアス•ニム•アーティバス。レナの教育係である。
種族はエルフとミノタウロスのハーフ。
しかし彼女はミノタウロスの特徴は殆ど無い。
名残といえば頭に角が生えているぐらいである。
「全く……今度はどうやって城の外に出る気なのですかレナ様?」
そう言って探るような目で見てくるエリアス。
「う………ひ、秘密!」
「秘密って言ってもレナ様、後ろの魔法陣が丸見えですよ」
そう言うとレナの後ろに回り込むエリアス。
「あ!ちょっとダメぇ!!」
慌ててエリアスを遮ろうとするがエアリスはさっと避けて後ろに展開してある魔法陣を見た。
「良く出来てはいますね……それで?何を呼び出そうと?」
「う~~~秘密っ!」
「ふぅん、それではレナ様、その手に持っている本を見せてはくれませんか?」
「!」
レナは持っていた本を抱き寄せると両手でエリアスに渡すまいとがっちりガードする。
その状態を見て見てエリアスはにこやかに笑うと
「それは……魔王の召喚術が書いた本ですか」
「え!?何で分かったの!」
「両手で本を渡すまいと両手で守るのはいいですけどちゃんと題名の部分も隠さないと意味はありませんよ」
「………あ」
「レナ様!あろうことか魔王を呼びだしてまで城を抜け出そうなどとはっ!全く何でこう親子揃ってこうなのか……全く嘆かわしいばかりですぞっ!」
「じい………話長い」
「あぁっ!そんな所まで父上に似てしまってっ!本当に嘆かわしぃっ!」
エリアスに魔法陣の事がバレて早三十分後……レナは毎度の如く執事長のガルテリアに叱られていた。
彼は四代前の当主から仕えている執事であり、
このビヒモス家の親子三代を見守ってきた上流階級教育のスペシャリストである。
「レナ様聞いておられるのですか?」「ああもううるさいなぁ!取りあえずこの魔法陣消せばいいんでしょ!?」
「なっ!?そう言う話をしている訳ではなくてですなぁ……」
「うるさいって言ってるでしょうがぁっ!」
「[ゴスン!]けぶぁっ!」
「「「ガルテリア様っ!」」」
イラついたレナの頭突きを顎で食らったガルテリアは宙を舞い魔法陣の中心に落ちた。
………それがいけなかった。
[ヴヴヴヴヴヴヴン………]
ガルテリアが魔法陣の中心に落ちた事によりガルテリアを供物として魔法陣が発動したのだ。
「あ……やばっ!」
「やばい所ではありません!早くガルテリア様をあそこから退かさないとっ!」
エアリスが慌てるのも無理は無い。普通の召喚は召喚対象に何らかの対価を払わなければ召喚できないのだ。
そして召喚に使われた供物は消滅する。
生きている者の場合は……召喚の際生け贄となって死ぬことになる。
「だいじょーぶだいじょーぶ!ここに確か解除用の術式が…………」
自信たっぷりに本を開くレナ、しかしページをめくった瞬間体が石になったように固まった。
「レ………レナ様?」
レナの状態に不安を覚えたエリアスはレナに声をかける
「………ノッテナーイ」
「「「…………」」」
その場に居た全員がレナと同じように固まる。
今ガルテリアは魔法陣に縛られている状態だ。
その状態だと下手に退かそうとすれば大怪我をする恐れもある。
「ど……どうします?」
「と…………兎に角魔法陣をぶっ壊そう!そうだ、それが良いよね!」
レナはそう一人で納得すると部屋の奥から身の丈程のハンマーを持ち出した。
「ちょっと待って下さいレナ様!それは幾ら何でもキケンです!」
「大丈夫!威力は最小にしとくからっ!」
そう言うとレナはハンマーを振り上げた。
それと同時にハンマーに膨大な魔力が集まっていく。
「やめて下さいレナ様ぁぁっ!」
エリアスは止めようとレナに駆け寄ったが時既に遅し。
レナがハンマーを振り下ろした後だった。
「ガイアショットォォォォ!!!」
「レナさ[ドゴォォォォォォォン………]」
その時近くに居た兵士はこう語った。
「あの地震で城が崩れるかと思った。二度とあんな体験はしたくない」
と。
地味に後編に続きます。