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第一章 二十八話 ~デリバリー•パニック 上 ~

ここはディアトリア領から少し離れた平原。


その見渡しのよい平原をものすごい勢いで

走り抜ける一つの影があった。



…………俺とジェミィとヘリムだ。



「ほら急いで翔のダンナ!追いつかれるよ!」

「うるせぇ!荷車に乗ってる奴が偉そうに言ってんじゃねぇ!」

「落ち着け翔!騒いでも事態は好転しないぞ!」


俺達は(ヘリムは除くが)ギルドの依頼で

とある荷物(俺達も何かは分からない)を交易の町である

ピートロッドに運んで欲しいとの依頼だった。


因みにコイツが付いてきた目的は


「え?その依頼俺がこれから行こうと思ってた所だ!俺も連れてってくれよ!」


と、言った感じで付いてきた。

なんなんだよコイツ、

どっから沸いてきた、そして街が火事になった時何処にいた。


……まぁその話はさておき、

それで今の状況はと言うと、


「オラァ!兄ちゃん達荷物置いてけやぁ!」

「アヒャヒャヒャヒャ!」


………盗賊に襲われている。


何なんだろう、何で俺は外へ出歩く度に

こういったチンピラに絡まれるんだろう。


それも少数じゃない、五十人ぐらい居る。


「ああもうヘリム!荷車代わりに押してくれ!」

「えぇ~ヤダ、めんどい」

「いいから押せっつてんだろこのバカ悪魔!」

「なっ……失敬な!サタンと悪魔は厳密には違…」

「うるせぇ!兎に角俺の炎で焼かれたく無けりゃ荷車押せ!」


そう言っている間にもう盗賊共はこっちの一歩手前まで来ていた。


ピーンチ!(主に荷物が)


「翔!魔法だ!あのフレなんたらで吹き飛ばせ!」

「無理!こんな所でぶっ放したら俺達まで吹き飛ぶからぁっ!」

「じゃあ黒炎弾か斬空波を!」

「斬空波は剣を城に置いてきた!黒炎弾は一掃する魔力を溜める前に追いつかれる!」

「じゃあ他に使える技は?」

「隙だらけで使えませーん!」


というか爆風で俺達も吹っ飛ぶし。


「それじゃあヘリム行ってくれ!」

「ハハッ、いやちょっとお腹の調子が」

「………」


*今の状況*


俺が荷車の後ろを死に物狂いで押しています。


ジェミィは荷車を一生懸命引いています。


ヘリムさんはその荷車の上でくつろいでいま……


「さあ飛んでいけ!」

「え?ちょっ!アーーーーーッ!」


俺はヘリムを盗賊達の方へ投げ飛ばした。

当たり前だよね!何かイラッときたんだ、


え? 両手で荷車を押している状況でどうやって投げたかって?

人間、怒りがマックスになれば何でも出来るんだよ!


「ジェミィ!勇気あるヘリムさんが囮となってくれた!先を急ごう」

「そうだな!彼の気持ちは無駄には出来ない!必ずこれを届けよう!」


ジェミィはあえて何も突っ込まずにノってくれた。


「おい待ってくれ!「オイオイ兄ちゃん一人とは勇気があるねぇ…」イヤーッ!」


うん、囮作戦大成功!大丈夫だヘリム、帰り道に骨ぐらいは拾ってやる。


しかし悲しいかな、ヘリムは五~六人しか引き留められなかったらしい。

ほぼ全員がそのまま追ってきた。


「ヘリム使えねぇ!」


どうしたんだヘリム!

俺と酒場でやり合った時の輝きはどうしたというんだ!


「う~ん、助けよう、冗談で済まないことになりそうだし」

「私もそれがいいと思うぞ」


うん、俺もジェミィも酒場で俺とやり合っただけの実力があったと

判断していた訳だから俺がヘリムを投げた時に何も言わなかったんだろう。


「そうと決まれば………どちらが行く?」

「どうしようか……」


うん、俺もジェミィもこの荷物を置いて行くなんて事は出来ない、

かと言って一人だけ残ったとしても、十人以上に来られたら

多分確実に荷物を取られるだろう。相手は俺達じゃなくて荷物狙いだし。


うん、がめついな、俺達。


「せめてあと一人居たら……」

「うん、あと一人…………待てよ、もしかしたらっ」


俺は荷車を押しながら携帯を取り出した。

確かこの機能の中に…………


「あった!召喚獣だ!」

「何っ!それだ翔!今すぐ使ってくれ!」

「了解!」


俺は召喚獣のアプリを開くとそれを起動した。


[ヴヴヴヴン………]


「おぉ!」


魔法陣が携帯画面から出現し、

そのまま魔法陣は地面に落ちると紫色に光り何かが召喚された。


「ハデス様、これが今日の死亡した凶悪犯罪者のリスト……ってあれ?」


すごい期待外れな第一声と共に悪魔が召喚された。

いや、なんか覇気が無いというか威厳がないというか……


それにどっかで見たことあるような………


「ここはっ!?ここは何処ですかぁ~~っ!?」


あ、思い出した、

この悪魔、俺が死んだ時ハデスの所まで連れてってくれた人…いや悪魔だ。


「おい翔、凄い頼りなさそうなんだが」

「う~ん、居ないよりはマシ、なんじゃないか?」


兎に角俺は召喚されて思いっきり困惑している悪魔に近ずいていった。


「あ、あの~」

「ひうっ!?誰……ですか?」


ああ……そちらさんは覚えてくれてなかったのね、


「俺の名前は風見翔、一応君を召喚したんだけど……」

「風見…翔…………………えぇえ翔様ですか!?」


思いっきり仰け反ってこっちを見てくる悪魔、

一応思い出してくれたっぽい。


「うぅ~~考えましたねハデス様、仕事サボる為に私の召喚陣を人に教えるなんて……」


そして視線を外すと、何かブツブツ呟き始めた。

何か目が凄い怖いんですけど、思いっきり獣の目になってるんですけど


「それで、翔様!私は何をすればいいんですかっ!」


……そんな目で見ないで下さい怖いです。


「あ、あのね……あっちにいる山賊共を倒して欲し」

「分かりました今すぐ倒してきます!」


そう言った途端悪魔は後ろにいた山賊に振り向くと


「カオスボール!」


そう唱えた瞬間後ろに迫ってきていた山賊の周りに

黒い球体が現れたかと思うとその一つ一つが爆発した。


「うぎゃぁぁぁ!」


………わーお、一瞬で山賊共、地面でノビてるよ。


「これでいいでしょうか翔様」


クルリと振り返るとにこやかな笑顔で聞いてきた。

………笑顔が怖いよこの人。


「あ………はいオッケーですどうぞ冥界にお帰り下さい」


無意識に喋る言葉が敬語になってしまっている。

前言撤回、この悪魔チョー威厳ありますというか怖いです。


「それじゃあ冥界に帰して下さい」

「……はい?」


あれ?これってこっちが帰すの?てっきり願いを叶えたら

ランプの魔神みたいに戻っていくのかと思ってたけど違うのか。


「………どうやって帰すんですか?」

「…………へ?」

「いや、俺この携帯のアプリで呼び出したんで」

「………ちょっと見せてくれませんかそれ」

「はい、どうぞ」


俺が渡した携帯の画面を見ると悪魔の顔が見る見る内に青ざめていった。

そして震える手で携帯を帰すと空に向かって


「何で帰還用の術式の部分だけ消去してるんですかハデス様ぁぁぁ!!!」

そう叫ぶと地面に崩れ落ちた。


「ど、どうしたんだ?いきなり倒れて?」

「ジェミィさん、何も言わずに荷車に乗せてあげましょう」

「? 分かった」


こうして俺達は真っ白になった悪魔を荷車に乗せると

ピートロッドへと向かうのだった。


「おい!ヘリム、ヘリムはどうした!」

「やべぇ忘れてた!ジェミィ、回収に行くぞ!」


その前にヘリムの元へ向かう荷車だった。



~一方ヘリムは~


「ていやっ!」

「ごふっ!」

「うぉらぁっ!」

「がはぁっ!」

「な、なんて野郎だ!」

「俺の拳は炎を宿すっ!」

「ぐあぁっ!……ちく………しょう…」


ドサリ……


「おっしゃあ!敵の援軍含めた六十二人討ち取ったりぃぃぃぃ!」


……かなり頑張っていた。

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