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プロローグ 三話

「ちょっと待って下さい!それはいくら何でも…」

「唐突過ぎるぞハデス、私も先程貴様の話は一字一句聞きもらさずに聞いたがそんな事は言っていなかったぞ?」

「当たり前だ。魔王として再び生を与えるなんて事話したらお前は猛反論するだろうからな!」


無駄にキリッとした顔で受け答えるハデスにはぁ…とため息をつき頭を抱えるゼウス。

ハデスのこのような性格に半ば諦めを感じているのだろうと反応を見た見た翔は思った。


「さて翔君、君にはこれから魔界へ向かって貰う」

「え~と、俺の意見は?」

「それ以外は地獄に行くしか無いけど?」

「横暴だぁぁぁ!!」


まさに職権もとい神権乱用である。窓の外の景色を見せたのも承諾させるためなのかもしれない。


「まぁ心配しないで気楽に魔王になってきなさい!もし死んだとしても天国行きは保証するから!」

「………」


笑顔で肩を叩いてくるハデスに最早返す言葉が見つからない翔は多分これ以上反論したところで意味は無いだろうと翔は判断し、素直に応じる事にした。


「……何すればいいんですか?」

「おお!承諾してくれるという事でいいんだね!そうそう、素直が一番だよ!」


そう言うとハデスは本のページをめくり始めた。そして何かをブツブツと呟くと翔の足もとに不気味な色に輝く魔法陣が現れた。


「それじゃあ頑張れ」

「は?[バシュウ!]うわわわわわぁ!?」


ハデスがにっこりと笑って手を振ると同時に翔は魔法陣から発した光に包まれた。

光が収束した瞬間翔が居たのは先程まで居た所では無く薄暗い闇の中だった。


「汝……何ヲ求メルカ?」

「!?」


突然頭の中に声が響き翔は驚いて辺りを見回したが四方は闇で包まれ全く分からなかった。

その地の底から響くような声に凄まじいまでの威圧感を感じ翔はただ無言で立ち尽くすより他無かった。


「我ハ魂……我ハチカラ……我ニ何ヲ求メル?」

「え~……と?貴方は?」


翔は何とか絞り出すように声を発した。


「我ハチカラ……我ヲ求メルカ?」

「ああ……一応」

「ナラバクレテヤル……シカシ全テデハ無イ……全テヲ求ムナラチカラヲ示セ……」

「力を示す?それって一体どうや[バシュウ!]うわぁぁ!?」


質問しようとした瞬間再び翔は光に包まれ次の瞬間には先程の部屋に戻りハデスが笑顔で目の前に立っていた。


「あれは……一体?」

「あれは魔王の魂……そして今君の手に握られてる」

「へ?」


その瞬間握りしめていた右手にに違和感を覚え手を開いてみると手のひらに先程翔が居た空間に似た色のビー玉程の大きさの球体があった。

手のひらに乗っているだけだというのに恐ろしい力が宿っているというものだという事が嫌というほど感じる。


「さ、それを飲み込んで」

「へ?」


飲み込めという発言に翔は驚いてハデスの方を見る。

ハデスは期待に満ちたような顔で翔をじっと見ていた。


「あの…これ飲んで大丈夫なんですか?」

「大丈夫!何も悪いことは起こらない………はず」


最後の発言に若干不安を覚えたが取りあえずハデスの言う事を信じて飲み込んでみた。

特に味は無くガラス玉のような感じであったが喉を通る途中にすーっと溶けるように無くなってしまった。


「……………?」


翔が魔王の魂とやらを飲み込んで暫く経ったが特に何も起こらなかった。しかしハデスはニコニコしながらこちらを見ている。


「あの……何も起きないんですけど?」

「ちょっと体に力を入れてみてくれ、イメージとしては内側の力を解き放つ感じで」


言われた通りに力を入れてみる、すると体中を何がが駆け巡るような感じがし、体が軽くなった。


「自分の姿を見て見ろ」


そう言ってハデスは手鏡を取り出し翔に差し出した。翔はそれを受け取り自分の顔を覗き込んだ。


「うわぁっ!」


そして鏡に映った自分の姿を見て驚いた。

自分では無い誰かがそこには立っていた。黄色く輝く目、変色した黒髪、頭には立派な角が生えていた。


「こここここれって……」

「フフフ……これだよ翔君」


ハデスが笑いながら答える。


「君は魔王の力を手に入れたんだ!」

「……これがですか?」


とても鏡に映っているのが自分には見えない。何かゲームで出てくる魔王が現代の私服のコスプレをしているのを見ている様だった。


「さて、と後は簡単な魔王の力の使い方の基礎訓練でもしますか!」

「え?ちょっと…」


翔の話す前にハデスがパンパンと手を叩くと、武装した兵二十人ほどが入って来た。


「随分と準備がいいなハデス」

「褒めてもなにも出ないぞゼウス……っと、はい武器」


そう言ってハデスは翔に剣を渡した。竹刀と違い圧倒的に重いが握り易く振りやすそうだった。


「それは冥界一の鍛冶屋が鍛えた剣だ、翔君にあげよう」

「え、ちょ……あの、待ってくださ…」

「さぁ!君のその力の使い方!キッチリ覚えて貰いましょう!」


そう言うが早いか最前列に居た五人の兵士が俺に向かって飛びかかって来た。


「さあ避けろ!」

「え……うおっ!?」


目の前に迫った剣を避けようと翔は動いた瞬間自分の体が予想以上に速く動き剣は避けられたものの翔は避けた勢いのまま床を転がった。


「え……」

「素晴らしい身体能力の向上だろ?肉体の反応速度と筋力が飛躍的に上がっているんだ」

「は……はぁ」

「それじゃあその肉体に慣れるまで地獄の特訓、スタートだっ!」


そう言うと同時に今度は後ろに控えていた残りの兵士もこちらに武器を抜き放ち襲いかかって来た。


「ほ~ら剣を抜け翔君!」

「そ、そんな無茶なぁ~っ!!」


その後しばらくハデスの部屋では騒がしい音が響き続けた……








「……はぁ、はぁ………」

「どう?力の使い方は分かったでしょ?」

「お陰様でもう嫌って程分かりました」


地獄のような収斂が終わり床に突っ伏した状態で頭を持ち上げ翔は思いっきり皮肉を込めてハデスに言う。

しかしそれを見たハデスはどこ吹く風といった様子だった。


「さて、これから向かう魔界の話をしようか……」


ハデスが先程の悪ガキのような顔から真面目な顔をして翔の方を見る。


「さて、君が今から行く世界は私が大昔面白半分で作った世界でね……九つの世界って聞いた事はあるかい?」

「いや……知りません」

「よしそれじゃあ分かりやすいように説明しよう!」


そう言うとハデスはどこからともなく巨大な絵巻物を持ちだし翔に見せた。


「え~と、九つの世界とは君達の言う北欧神話の舞台となっている大樹エグドラシルを基盤とした世界だ。しかしかな~り昔にその世界が大戦争によって滅んでね……誰も治める者が居ないんで私がその世界を回収した後そあらゆる場所から死んだ人間やモンスターや逃げてきた堕天使なんぞを放り込んで面白そうな世界を作った訳だ……ここまではOK?」

「あ……はぁ」


マシンガントークを炸裂させるハデスに付いていけずとりあえず相槌を打つが自分の喋っている事に心酔しているのかすぐに話し始める。


「そんで昔は化け物共が好き放題暴れまくるもんで世界が壊されそうで大変だったんだけど勇者をぶち込んで平和にした訳、でも今はそれから世界を治めていたその勇者の子孫が何故か全員死んで各地で野心タラタラの化け物共が暴れだして群雄割拠が起こっている状態なのだよ。そこで今翔君が手に入れた力で魔界を平定しちゃえーって話、OK?」

「あぁ……はい」


一応は頷いてみたもののあまりのマシンガントークの為翔が分かったのはとりあえず違う世界に飛ばされる事ぐらいしか理解できなかった。


「それじゃあ行ってみよう!」

「えぇ!いやまだ動けな…」

「その事は心配しなくてよろしい!」


そう言うが早いかハデスがパチンと指を鳴らすとふわりと翔の体が浮く。


「あ、そうだ!君と一緒に飛行機の墜落事故で死んじゃった人、サービスで蘇らしておくからね」

「ちょっと待てハデス!この子供はお前が作った世界に放り込むからいいとしてそれはいか…」

「はいはいゼウス、奇跡の飛行機事故って名にして誤魔化しゃいいでしょーに。記憶は此処に居た時の事は消しておけばいいんだし!」

「人…いや神の話を聞け!」

「それじゃあ行って来い翔君!君の第二の人生が素晴らしき物となることを心から願っているぞ!」

「おいこらハデス聞いてい……」


ハデスはこちらを向いて笑うとヒュッと窓に向けて指を振った。

その瞬間ビュウと勢いよく体が窓から飛び出しそのまま上空へと登って行く。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


そして段々と意識が薄れ、翔は意識を手放した。

これにてプロローグ終了です。

まだまだ未熟者ですがあたたかく見守って頂けたら幸いです。

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