第一章 二十六話 ~スペックの差を思い知る~
青い空、白い雲、そして見渡す限りの………
クレーターが出来た大地と瓦礫の山!
これが元は美しい王宮の中庭なんてシンジラレナーイ!
「もっと動きを抑えないと次の一撃を避けられないぞ翔!」
「む、無理言うなぁ~~~!!!」
現実逃避はこれくらいにして、
今俺は特訓と言う名のイジメを受けています。
目の前には両手にクラウドもびっくりな大剣を両手に持った
鎧男が斬撃を次々と繰り出してくる。
「ほら何をやっている!首が飛ぶぞ!」
「ヒィィィィィ鬼ぃぃぃぃ!」
「叫ぶ暇があるとは中々余裕だな!」
叫ぶのが余裕?何を言ってらしゃるんですかこの鬼畜鎧男は!
悲鳴は人体が発する緊急信号なんですよ!?
「やっぱ変身しないとキツい!」
「当たり前だ!キツくなくて何が特訓だぁ!」
そうです皆さん、
逃げ回ってる俺の今の状態は人間、ヒューマンでございます。
そもそもの事の起こりは四日前の朝……
~回想~
「ふむ、それでは翔はその魔族の状態で戦っていた訳で、そちらの何ら覇気を感じない姿が本来の姿という訳か」
「うん、まあそうなるな」
その日、俺はいつものように復興していく城下町を見ながら図書室で借りた
「~魔法薬に使うキノコ大百科~」を読んでいた。
そして、たまたま通りかかったザムルと取り留めのない話をしているうちに
俺のここに来たいきさつ、過去の経歴、
そして魔族状態の話をした訳である。
一通り話し終えるとザムルはしばらく
俺の隣の席でブツブツ言っていたかと思うと突然立ち上がり、
「翔、特訓だ」
すごい真面目な顔でそう言われ外に引きずり出されました。
~回想終わり~
……それが四日前の話し。
なぜこんな事をするのかと聞いた所
「翔は実戦経験が殆ど無いにも関わらず戦士として四十年以上やってきている俺をあっと言う間に打ち倒した。それならば戦闘に対する知識と運動能力を覚えさせれば必ず化ける!」
と、自信満々に言われた。
因みに俺が今人間の状態でやっている訳は、
俺が変身すると
ザムルの方が俺に付いていけなくなるらしい。
「フゥッ!今日はここまでにするか!」
「ハァ………ハァ………終わった……」
やっと終わったか、
しかしたった四日で
考え事をしながら避け続ける事が出来るようになるとは
正直思っても見なかった。
因みに四日での合計特訓時間は約四十時間、
一日目に至っては中庭に出されてから
深夜になるまで追いかけ回された。
無論次の日体が鉄のようになったのは言うまでもない。
しかし運命は非情なもので俺がベットに倒れ込んで数時間、
朝日が昇った瞬間に
「さあ起きろ!特訓だ!」
と言われて無理矢理起こされ
両手に大剣を持ったザムルに追いかけ回された。
しかし慣れ(?)とは恐ろしいもので
四日たった今は朝日が昇ると同時に起き、
一時間避け続けても全くバテない。
「俺、こんな事してまで強くなりたくねぇよ………」
俺は重くなった体を何とか起こすと
そのまま俺の部屋へと向かった。
~俺の部屋~
「え~と、この魔法はこの法則で魔力を組み込んで………」
部屋に戻ると俺は自分の部屋の机に積まれている本を読んでいる。
この世界での知識がない俺にとっては
知識を得ることも大切な作業の一つなのだ。
「魔法って奥が深いぜ全く……」
俺が今学んでいるのは魔法のほぼ初歩的な部分だ。
「これ先生とかいなくちゃ絶対分かんないとこあるだろ……」
魔法書はある意味専門書であって専用の用語がいくつもあり、
いちいち辞書で調べなければならない。
「なんか受験勉強してるみたいだな……」
ちょっとだけ高校生をやっていた頃の俺を思い出す。
………………うん、山も谷もない人生だったよ。
「うぉぉぉ目が痛くなってきた!もう寝よ」
俺は毎日の疲れもあってかベットに倒れこむようにして入ると
あっと言う間に寝てしまった。