第一章 二十話 ~明かされた真実~
~前回までのあらすじ~
少年風見翔は見事チート能力を開花させ相手軍勢を打ち倒した。
翔の活躍により奇跡的な勝利をした傭兵軍団は意気揚々とディアトリアに向かうのであった。
………以上、ナレーション、ハデスがお送りしました。
俺達が本陣跡を出立して暫く……まだ陽も殆ど傾かないうちに俺達はディアトリアが見える地点まで来ていた。
流石は恐ろしいスピードを持った農兵達だ。歩兵数人を担いでいるというのに全く息切れもしていない。
ディアトリアが見えた事によりテンションが上がって歓声を上げる傭兵が居る中意気揚々とディアトリアへと進んでいった俺達が見た光景は……
何故か俺達に後を任せた筈の正規部隊がディアトリア国を攻めている光景だった。
「……嘘だろ?」
「おいおいいったいどういう事だ!?」
「何があったんだ?あいつ等国を裏切ったのか?」
以外過ぎる光景に俺も傭兵達も唖然としていた。
何故だ?俺が見たあの将軍が国を攻めるなんて……訳が分からない。
「ギシ………違うぜ、あいつ等が国を閉め出されたのさ」
「「「「!?」」」」
そんな中ケルターの一言に皆が振り返る。
「どういう事だ!何を知ってやがる!?」
アンダルはそう言うとケルターに詰め寄って掴みかかるとガクガクと揺する。
……それって逆に喋れないんじゃあないか?
「あぎゃががうげっ!?く、首!首を絞めないでくれ!」
「おっとすまねぇ……これじゃあ喋れねぇか」
そう言ってアンダルはケルターから手を放した。
力無くケルターは地面に突っ伏して暫く荒く呼吸をしていた。
「ハァ、ハァ……それは「いや、此処は私が話そう」オイオイ…」
そして呼吸が整いいざ言おうとするとケルターを遮ってひょっこり現れたザムルが話し始めた。
呆れと不満が入り混じったような目でザムルを見るが彼は全く気にしていな様子である。
「まずこの国には和平派と戦争派に分かれて対立しているのは知っていると思う……今回事を起こしたのは和平派の一部と戦争派が妥協して和平派の上層部を潰そうとして起こった事なのだ」
「え~と……つまり?」
「ギシッ、言い争ってたけど結局金と地位目当ての奴らが結託して邪魔な奴らを排除しようとして画策したのがこの農民の反乱なんだよ」
……つまりは屑どもが集まって目の上のたんこぶを潰そうと画策した訳か。
しかし戦争派が兵を出さずに和平派の方が武器を持って鎮圧に出るとは不思議な話だな。
「何で戦争派の奴らが兵を出さないんだ?」
「あ~、確かにまともに戦える奴らは和平派ばっかりだったからだ……それに戦争派には王の側近が付いてるからな、何かしら理由を付けられて出撃させられたんだろ」
「何でアンダルがそんな事を?」
「賊だとしても自分が暴れてる国の情報ぐらいあつめるさ……」
「まあそういう訳で彼らは出来るだけ自分たちの被害を抑えようとこれを用意した訳だ」
そう言うとザムルは懐から瓶を取り出した。
「何だこれ?」
取り出した瓶を見ると中には赤黒くデロッとした液体が入っていた。
間違ってもこいつは飲みたくないものだな……
「これはバーサークドラッグ(凶暴化薬)と言って服用した者に肉体の強化及び身体能力の強化をする魔法薬だ。服用する種類によって巨大化したり移動速度が上がったりと様々な能力を手に入れる反面思考能力が失われ破壊衝動に駆られてしまう危険な薬だ、無論兵器として運用出来るよう洗脳効果もある」
「それじゃあこいつ等も………」
俺は農兵達を見る、どこか空ろな目をしている理由が分かった気がする。
つまりはこいつらは今は本当に命令に従うだけのただの兵器という訳か……恐ろしいもんを作り出したもんだな。
「まあもう薬品の投与はしていないから後半日ほどで元には戻るがな」
「所でこいつらは私達の言う事を何でも聞くのか?」
「こいつ等の肉体で出来ない事以外はな……」
「ふ~ん、じゃあちょっと踊って!」
「ウガッ!ウゴッ!グォッ!!」
ジェミィが近くに居る農兵にそう命令すると無表情で腕や足を振り回し始めた。
おぉ!踊ってる!踊ってるぞ……何か呪われそうな踊りをっ!
しかし筋骨隆々の大男が表情を微塵も変えずに音楽も何もなしに踊っているのはシュールだな……
「………本題に戻るぞ」
数分間無言でその踊りを見ていた俺達に静かに言うザムル。
俺達は無言で目の前のシュールな光景に背を向けザムルの方を見る。
「彼らはこの薬を使い農民共を凶暴化させ俺達に指揮をさせた。そしてその討伐に反対派の奴らを使い、その内に王国の全権利を我が者にする計画だ」
「ふ~ん、でもさ、その隣国のティアリアって所の利点は何なの?」
「我らは統率の他に薬を投与した奴らの身体能力及び投与後の精神状態などをチェックしそれを強力な薬を作り出す研究材料にするためにティアリアの奴らに渡していたのだ」
「研究サンプルを提供する?でもそれでは彼らに利益が少なすぎるのでは……?」
「無論それだけでは無い……この戦いが終われば国の要人は戦争反対派、つまりはティアリアに与した者達が支配する事になる」
「と言う事は……」
「実質的にディアトリアはティアリアに支配される事になるな」
「あの城の前で戦っている将軍達をぶっ潰せば後はどうにでもなるってか……酷いもんだな」
ふう、そんな裏があったのか。何かややこしいなぁ。
………チョット待て、それじゃあ何だ!?もしかしてあのまま将軍達が殺されちゃったら俺達タダ働きになるのか!?
ってかそれ以前に俺達農兵共従えてるから反乱軍とみなされて掃討される危険が……ってか危険と言うか確実に掃討されちまうじゃねぇか!
傭兵達の事後処理も完璧ですってか?畜生め!
「どうします?翔?」
険しい顔でティールが聞いてくる。
そんな話俺に振らないでくれよ、何て答えたらいいか分かんなくなる。
ってか周りの傭兵さん達も俺の意見を心待ちにしているような視線を送って来るんだが……
止めて!もう連日のプレッシャーで俺の胃袋のライフポイントはゼロなんだ!これ異常のプレッシャーがかかったら穴が開いて吐血してしま……
「そんなもん決まっているだろう!」
「「「!!」」」
俺の隣で大声を上げてそう言ったジェミィに俺を含め皆驚いたような視線を向ける。
その顔は怒りに満ち溢れその怒気で彼女の周りの空気が揺らめいて見える……
なんて怒りだ……そこまで彼女を怒らせる理由は一体何なのだろうか?
その迫力に全員が静まり返った。そして俺はどこか期待したように彼女の次の発言に耳を傾け…
「このままじゃあ私に転がり込むはずだった金貨数十枚が消えてなくなるじゃないかぁぁぁぁぁぁ!」
……た俺が馬鹿でした。静かになっていた俺達の軍に響き渡ったジェミィの声はなんとも気の抜けた雰囲気になってしまった。
周りの傭兵や俺達、ザムル達までもが呆れたような顔でジェミィを見ていた。
しかし彼女はそんな視線を気にもせずさも当然と言ったような顔をして立っている。
もう何この拝金主義者!ある意味ビジネスとしてやってる傭兵としては一流だけどな!
「さて、と……いい感じに全員の気が抜けたな。そんじゃ翔、命令しなよ」
「え……?」
ポン、と俺の肩に手を置くとジェミィはそのまま下がっていった。
え?もしかして今の発言はこの空気を作り出すためわざと……?
いやあの……発言しやすい雰囲気になったのは分かるけどさ、こっちはこっちで発言しづらいですよジェミィさん!
「……ククッ」
「おいそこ笑うなぁ!」
「アハハッ」
「フフフ……これから戦場に行く雰囲気かねこれが」
「だったら笑うなよ!?」
そんな俺とジェミィのやりとりを見てか何処からともなく笑い声がこぼれ暫くの間俺の周りが笑い声であふれた。
暫く経つと笑い声も無くなり全員笑っていた時とは違う真剣な目で俺の方向を見ている。
全員の覚悟は決まっているようだった……俺は息を吸い込むとあらん限りの大声で指示を伝える。
「彼等を援護するぞぉぉぉぉぉ!続けぇぇぇぇ!」
「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」
いや~何でしょうね?
計画も何も立てないで突っ走っておりますニャンコ太郎です。
取りあえずこの先の筋書きくらい考えないとやばいかな~何て思っております。
誤字、脱字などがあったらご指摘下さい。