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第一章 十八話 ~生き残り大作戦 下 ~

「[ポンポン]……起きろ、起きろ翔!」

「う……ぐっ、ジェミィ?」

「ああそうだ……起きられるか?」

「ああ、何とかな……うぐっ、体が痛い……」


吹き飛ばされてどれぐらい経ったのだろうか?

俺は心配そうな顔で見るジェミィによって起こされ肩を借りて立ち上がった。

近くにはお座りしているロボと共に傭兵達も結構な数が居た。


「……あんた凄ぇよ、何で傭兵なんかやってんだって位だぜ」

「お前ら大丈夫だったのか?」

「ああ、燃やされる奴は居なかったがあんたのあの大技のせいで下半身が洪水状態になった奴が幾らか居たぜ?」


ハハハ……と力ない笑いが俺達の間に響く、こんな時にジョークを言えるなんてな……ホント尊敬できるな。


「……他の奴らは?」

「落ち武者狩りに行ってるよ……まあ炭と灰ぐらいしか残って無いだろうがな」


そう言って指差した先を見ると草原の一部の地面が抉られるように無くなっていた。

多分あそこが俺達の本陣があった場所なのだろうが今はその面影は無く黒くなった残骸と煙が上がっている殺風景な大地へと変貌を遂げていた。


「それにしてもいいねぇ……彼女と一緒に傭兵業なんてよ」

「「は?」」

「およ?二人とも彼氏彼女の関係じゃねぇのか?」

「いや、それは無い」


速攻できっぱりと答えるジェミィ。まあそうだろうな……ジェミィとは関係としては友人、と言った関係だし。

……因みに俺は鈍感じゃあ無いぞ?そっち関係の事は人並みにあると自負はしている。


「そうかい?それにしちゃあ狼騎士さんを一番必死で探してたのはあんただし一番心配してたのもあんただぜ?」

「友人として当然の対応だ。お前等が考えているような浮ついた関係では無い」

「女が男に対するの“友人”発言は信用出来無ぇよ……いい意味でも悪い意味でも……な」

「……何が言いたい」

「お前は自分の心に鈍感ちゃんなんじゃねぇか……ってこった」

「言っている意味が全く分からん……」

「分からねぇなら分からねぇでいいよ……とりあえずここでの戦いは終わったんだ、さっさと落ち武者狩りを終わらせて帰ろうぜ」


傭兵は肩をすくめて笑うと元本陣であった場所へ他の傭兵達と共に歩き出した。

いや待て、あのリーダー格の二人の言ってた事が確かだとするとまだ戦いは終わっちゃいない。

それに彼等二人がリーダーだと言っていた奴が率いているとするならばかなりの強敵の可能性が……


「待ってくれ、まだ後続の奴らが居るんだ……」

「な、何だと!?……勘弁してくれよ全くもう……で?狼騎士さんにはまだいい考えはあるのかい?」


驚きと疲れが入り混じったような顔でこちらを振り向く傭兵達、中には完璧に疲れ切った顔をしている奴もいて喋る気力すら無いような奴までいる。


「兎に角落ち武者狩りは疲れてる奴等を中心に少数で、その他は後続の迎撃に回そう……それに今回は敵側の大体の速度が分かってる……今度こそトラップの出番だ」






俺はティールとアンダルを含む傭兵達約五百名に落ち武者狩り任せて残りで後続部隊の迎撃に回る事にした。

そして待つこと暫く……


「!……見えましたっ」

「よし、今度は一気に突っ込んで行くぞ!」


前回の失敗を踏まえて俺達は間髪入れずに進撃する。

暫く進むと敵軍が見えてきたのだが……走ってきてはいなかった。

多分こちらが勝つなどとは思っていなかったのだろう……まあ兵の質、量共に勝ってればふつう負けると思わないだろうけどな。


相手も俺達に気付いたようで俺達から約百メートル程離れた所で動きを止めた。

数は……こちらよりも少し多いぐらいだろうか?数から考えれば楽だと思いたいものだが相手の兵がバケモノ級だからそう簡単には思えないよなあ……


そして巨大な敵兵の中から頭一つ分小さい全身を鎧で覆った騎士のような男が現れた。

遠目からでも圧倒的な存在感を放つその出で立ちはまさに隊長、と言っていい程のものだった。

鎧姿の人物は俺達を端から端まで見渡すような仕草をするとこちらに向かってたった一人で歩いてきた。

身構える俺達に対して悠々と歩く鎧姿の人物、そして敵兵と俺達とのちょうど中間程の場所まで来るとそこで立ち止まった。


「先行していた奴らはどうした?」

「ん?……ああ、あいつ等なら今は黒焦げで地面に横たわってるんじゃ無いかな?」


突然俺に対して質問してきた鎧姿の男に対して俺は自信満々な顔でそう答えた。

あの惨状だ、生き残りが居るとはほぼ考えられない。居たとしても瀕死の状態が関の山だろう。


「貴様等の後ろで上がっている黒煙はそう言う事か……しかし私の仲間を舐めない方がいい」

「仲間って……虫野郎と白ゴリラか?」

「まあそうだな……何をしたの分からんが兵士共はともかく彼らは相当しぶといぞ」

「生きてたとしてもこっちにも腕の立つ奴が居るから大丈夫だよ……多分」

「そうか……まあいい。彼らの失態は私が拭うとしよう……やれ!」


鎧の男は後ろで控えていた兵士達に指示を出してこちらに向かって来た……今だ!


「全員……撤退~!」

「なっ!?」


意外な肩透かしを食らい素っ頓狂な声をあげる鎧姿を尻目に俺達は一目散に逃げ出した。

……が距離が距離だ。あっさりと追いつかれるに決まっている、しかし俺達が稼ぐのは数十メートルで十分である。


「こんな距離で逃げてどうする貴様等!」

「どうするも何もって……罠?」

「!?……ぜ、全軍止まれ!」

「もう遅い……よっ!」


すぐ後ろで鎧姿の声がしたのでこれ以上は撤退不可と判断し足を止めて振り返る。

そして俺のネタバレによって慌てて兵士達を止めたのだが時既にお寿……じゃない遅し、俺はトラップを作動させるため拳サイズの小さな黒炎を作り出して敵兵のど真ん中に放り込んだ。

そして数秒の静寂の後に……


[ズドォォォン!!]


「なっ!?」


[ズゴゴゴゴゴゴゴォン!!]


地面から凄まじい爆発音と煙、そして兵士が吹き飛ぶ。

それに連鎖するように次々と地面から爆発が起こりあっという間に俺達の目の前が土煙で見えなくなった。

そう……こいつはお手軽地雷原である。タネは簡単、アンダル達に壺入りの火薬を口部分だけ残して地面に埋めて貰い近場の草を刈って敷き詰めるだけというなんともお粗末な仕掛けであったが何とか成功はしたようだ。


「火薬を地面に埋めていたか……恐ろしい発想だな」

「お褒めの言葉ありがとう」


土煙が晴れるとそこには一目で分かる程数が減った敵兵達が居た。

俺が罠だと言った瞬間警戒して足を止めたのがいけなかったな……まあこいつらを率いる奴が居なければ成功しないような手だったけどな。

罠だって言ってすんなりと信じてくれて良かった、そんなの知らねぇ!って感じで突っ込まれてたらここまでの成果は望めなかっただろう。


「これで数の上ではこっちが有利だ……」

「そのようだな……全く、兵士の性能と数を過信し過ぎたか」

「だな、降伏するか?」

「いや、数の上では有利だが……負ける気は欠片も無い!行くぞ!」


鎧姿はそういうと残った兵で再び隊列を組みなおすとこちらに向かって突撃してきた。

しかしこちらも出来る限りの策を講じてやっとここまで漕ぎ着けたのだ、ここで負ける気など微塵も無い。


「こっちだって負ける気なんて微塵もねぇよ!行くぞぉ!」

「「「「うおぉぉぉぉ!!」」」」


俺達は雄叫びをあげながら突っ込んで来る敵兵達に向かって突っ込んで行った。






「死体漁りってなぁ面倒だな……」

「ですねぇ」


一方その頃落ち武者狩り中のティールとアンダルは黒焦げになった兵士たちをどかしながら死体の中を歩いていた。

黒焦げたテントの残骸と死体が山となっている光景はまさに地獄絵図である。

生き物が焼け焦げた何とも言えない悪臭が立ち込める中二人は元本陣の中央広場まで来た。


「これは凄い……」

「なんだこりゃあ……」


広場に着いた二人の目の前に飛び込んできたのは広場を覆い尽くさんばかりに敵兵の焼死体が折り重なっている光景だった。

大方火の気が少ない所に逃げようとした結果必然的に燃える物が特に何も無い広場に集まり翔が放った巨大な火球で焼かれたのであろう。


「ん?あれはロボじゃないか?」

「おぅ?本当だ……」


その山の上に一人の傭兵とロボの姿があった。翔曰く犬は死体か否か判別するのにいいという事で落ち武者狩りに参加していたのだ。

悪臭も一段とキツく二人は顔をしかめながら生きているか判断するため死体の山の上から何故か鶴嘴つるはしを刺している傭兵の元へ向かう。


「おい、どうしたんだ?」

「あっ、どうも……いえね、狼騎士殿の狼がこの死体の山の上で吠えてたんでもしやと思い今こうやって確かめてる所なんでさぁ」

「しかし何で工具なんかで……」


そう言って二人は傭兵が担いでいる大きな鶴嘴を見る。

柄の部分まで鉄出来た普通の一・五倍はあろうかと言う巨大な鶴嘴を軽々と片手で肩に担いでいる男は二人の好奇の目を見て少し不機嫌そうな顔をした。


「こいつぁ俺が傭兵をやる前からの相棒だぁ、それにこういうデカい体を貫くにゃあ槍よりもこいつの方が深く刺さる……工具の方が並みの武器より殺傷力が高いんですよ旦那方……世の中にゃあ工具を武器に使う主人公も居るんですよ?」

「……そんな主人公聞いた事無いぜ」

「およ!?知らないと仰るか?それじゃあ何時かお話……」

「ガウッ!」

「「「!?」」」


そう言いかけた時ゴソッ、と死体の山が僅かに動きロボが吠え語をあげた。

それと同時に三人は武器を構えてロボが居る方向を向く。


「……や、やっぱ生きてたみてぇだな」

「ど……どうしますか?」

「どうすんだぁ旦那方?」

「グルルルル……」


何をしてくるか分かったものではないので警戒態勢をとりながらもその場から動けない三人。

暫く経った後鶴嘴を持った傭兵が意を決したのか恐る恐る前へと歩き始めた。

そして彼を先導するかのように一歩前をロボが歩く。


「バウッ!」

「こ……ここか?」


ロボが足を止めて傭兵に向かって此処だとばかりに一声吠える。

おっかなびっくりと言った風に男はそこまで歩いて行くとロボの方を見る、ロボは個々だと言わんばかりに尻尾を振っている。

傭兵はアンダル達とロボを交互に何回か見ると鶴嘴を振り上げ思いっきり死体の山に突き刺した。


「……」

「……」

「……」

「……やったか?」


突き刺した後の暫くの静寂、まだ死体の山に鶴嘴を突き立てたままの傭兵が鶴嘴を抜こうとした次の瞬間


[ドォォォォン!]


「うぎゃぁぁぁぁ!!」

「キャイィィン!!」

「なっ!?」

「う、うわぁっ!」


突然傭兵とロボが山積みになった傭兵の死体の山と共に空高く打ち上げられた。

そのあまりにも突然な出来事にティールとアンダルが唖然としていると死体の山の中から先程翔が出会った二人組が這い出してきた。


「た、助かったんだなぁ」

「ギュキキ……こいつ等が我を忘れてスクラム組んでくれたのが幸いしたな。お陰で暫意識を失う羽目に

なったけどな……ん?」

「誰だてめぇら……」

「お前達こそ何者なんだな」

「ギギギ……考えりゃあ分かるだろうが。こいつらは生き残りを狩ってるんだよ」

「あっ……そ、それもそうなんだな、それじゃあオデ達はこっそり逃げるんだな!」

「こっそりも何ももう見つかってんだろうがボケ!普通逃がさねぇだろぉが!」

「じゃ、じゃあおとなしくお縄につくんだな」

「ガギギギッ!どーしてそういう結論に至るんだ!こんな奴等ぶっ潰して逃げればいいだろうが!」

「……何だこいつら」

「良く分かりませんが……舐められてるって事は確かですね」


敵前とは全く思えないやり取りに呆れ顔のアンダルとティール。

その後数分間もの間二人の漫才(?)が続き……すっかり傭兵達に取り囲まれてしまっていた。


「……あ、あれ?」

「ギュキッ!?」

「……話は終わったか馬鹿?」

「「……」」


取り囲まれたのに気付いたのかぎこちない動きで周りを見回す二人組。


「お、オデ達を舐めない方がいいんだな!」

「ギキキ……そ、その通りだ……てて、てめぇらなんぞかか簡単に振り切ってやるぜ……」

「凄い動揺してますね」

「まああいつらは袋叩きにされたいって言ってるんだ……全員ヤッちまうぞ!」

「「「「おおおおおお!!」」」」


アンダルの号令の下に傭兵達は一気に二人に向かって突っ込む。


「ギキィ!こ、こうなったら仕方ねぇ!俺らの実力を見せてやるぜぇ!」

「そ、その通りなんだなぁ!」


こうしてこちらでも戦闘が始まったのであった……

一週間ぶりの更新です。

テスト前なのになにやってんだろう俺………



誤字、脱字などがあったらご指摘下さい。

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