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第一章 十五話 ~命の価値とは~

俺達が民間兵を鎮圧した翌日、再び民間兵たちがこちらに向かっているという知らせを受け俺達は今度こそ民間兵を殲滅すべく軍を進めた、そして……


「あはは…………何この状況」


今の状況を簡潔に言おう。俺達の周りには二~三メートルはあろうかという巨人がざっと見て数百人、いやもしかしたら千人は居るかもしれない。そんな奴らがバーサーカーみたいな理性を無くした恐ろしい顔をして俺達を取り囲み今まさに襲い掛かろうとしていた。

この民間兵の輪の少し遠くを見てみれば圧倒的な力の前に不利と判断し一旦態勢を整えるため撤退し始めた傭兵部隊と正規部隊……クソッ、置いてかれた。

それにしても昨日と敵兵の様子が全く違う、体の大きさは勿論凶暴さも増しているように思えた。

因みに近くにいるのはジェミィ、ティール、アンダル、そしてアンダルの手下のゴブリン盗賊団と一部勇敢な傭兵さん達総勢百五十人ぐらいだろうか……


「…………か、勝てるかぁぁぁぁぁ!!!!」


そう、俺達少数部隊は殿……と言う名の生贄にされかけてます。前線に突っ込みすぎて本体と離れて戦ってたら撤退しちゃって置いてかれたって訳ですよ。

ね?思いっきり生贄でしょ?傭兵は足止め用の使い捨てってか畜生……

というか何だよこいつら!?どう見ても農民なんて体格じゃねぇよあれ、あんなのが畑耕してるとかあり得ねぇだろ!いや待てよ、もしかしたら意外とマッチするかも……


「…………」


少し想像してみた。

うん、凄まじくシュールで訳の分からない光景が広がったので五秒で考えるのを止めました。

うん……まず有り得ないだろ、常識的に考えて。


「狼騎士さんよぉ!やっぱ俺達はここでのたれ死ぬ運命なのかねぇ?」

「あ~あ畜生、勇気と無謀は違うって親父に言われてたのになぁ……ざまぁねぇや」

「ここは派手に散っとくかい狼騎士さん?華の無い傭兵人生の最後くらいドラマチックにってな!」

「で、どうすんだい?狼騎士さん?」


駄目だ、俺を先頭にここまで突っ込んで来てくれた傭兵の皆さんもかなり弱気になってる……っていうかこの小隊のリーダーもしかして俺になってる?

しかしどうすんだって言われても……これって俺の判断で全員の命が左右されるって事で……ううっ胃がキリキリ痛い。

ここ数日で俺ってかなりストレスが溜まったんじゃ無いだろうか……俺はどうすれば……


「グルァァァァァ!!」

「おわぁぁっ!?」


いつまでも悩んでいる俺を見かねたのかロボは一声鳴くと俺を乗せたまま巨人達の軍勢に勢い良く突っ込んでいった。

ちょ!なにロボ敵陣に突っ込んで行ってんだよおぉぉぉ!?俺を殺す気かぁ!

なに考えてんだロボは!?突っ込めばいいってもんじゃないんだよ!お前は派手に散るのがお望みなのか!?

うぁぁぁぁ………ジェミィ達との距離が離れていくぅぅぅぅ!!!

そんな事を思っているうちにロボは巨人の群れへと突っ込み最前列に居た二~三人を驚くほどの速さで軽く吹っ飛ばした。


ロボ凄い!でも乗っているこっちが気が気じゃない!今俺は敵のど真ん中に居るのだ。四方八方敵だらけである。


「ウゴァァァァ!」

「ウギェェェ!」

「のわぁぁぁぁ![バキィィン!]」


当然の如く四方八方から襲い掛かる敵の攻撃、背中に居る俺にとっては回避は完全にロボ任せである。やられる前にやれの精神で俺はロボの死角から攻撃しようとしてくる敵兵を次々と斬り刻んだ。

対処しきれない数で襲い掛かられた時は炎で対処し何とか攻撃を全く受けずに戦えた……しかし一瞬でも気が抜けない。

少しでも隙を見せたらロボの上から振り落とされ俺は敵に囲まれて滅多打ちにあってしまうだろう。


「ケブラガグァルオェアァァァ!!!」

「ヴルォエグリァウァァァ!!」


縛らく戦っていると少しは余裕が出てきた……所で何言ってんだこいつら?まあただ叫んでるだけっぽいな。だって何を叫んでも連携も何もなく殴りかかってくるだけだからなこいつら………


「グォッ!」


突然ロボがジャンプして巨人に襲いかかったってあぁぁぁ!ちょ!?バランスがぁぁぁ!!!


「[ドサァッ!]うげぇっ!」


また落馬……いや落狼しました。

うん、余裕なんて考えちゃあいけなかった。不慮の事態は何時でも起きる……調子に乗った罰だなこりゃあ……

ロボから落ちた俺に好機と見たか巨人共が雄叫びを上げながら襲いかかって来た。

俺はすぐに立ち上がり戦闘態勢を取る。


「ヘブギルナグァガエイドィァァ!!」

「ゲルゲナガザキジャンポオォォォン」

「ギヤェルガオウオァァァァァァ!」


………ちょっと待て、今長崎ちゃんぽんって言ってる奴が居たような………

空耳って素晴らしいな……そして自分の命の危機なのにそんな事考えられる俺凄い!

くだらない事を考えたら少し落ち着いたな……俺は深呼吸すると意識を集中させ襲い掛かってくる十数人の敵兵達に突っ込む。


「うわっ……とぉぉぉぅわあぁぁっ!?」


勢いをつけすぎたせいか空中で体制を崩し転がるように敵の一団を一気に突っ切った。

俺は転がりながら受け身を取って素早く背を向けている敵兵の方へ向き直る。

……昔誰かが避けるなら引くより突っ込めって言ってたけど本当だったな……


「ゲオゥァ?」


目の前に突っ込んできた敵が消えた事で巨人共が驚いた顔で辺りをきょろきょろと見回し少し遅れて俺の方を向いた。

俺の方を見た敵兵達は俺の方を見てビクッっと肩を跳ね上げると二、三歩後ずさった。

何でかって?……それは俺が直径三メートル程の巨大な炎の玉を作っていたからだ。

この炎はある程度なら放つ前に制御が出来る。こいつは炎を球場に渦巻かせ圧縮したもの……まあつまりは巨大な火炎瓶だと思ってくれればいい。

流石に彼等も恐怖を覚えたのか俺から背を向けて逃げ出そうとしたが時既に遅し、俺はもう火の玉を放った後だった。


[ドゴォォォォン!]


「「「ブガァァァァァァァァ!!!」」」


彼らに直撃した炎の弾はあっという間に辺り一面を火の海に変えた。思ったよりも範囲が広かったらしく少々離れていた多数の兵士を炎に飲み込んだ。

因みに少々離れていた所の兵士を巻き込んだって事は俺の方にも来たって事だからね、つまり俺も他の敵兵と同じく炎に飲み込まれたわけで……


「うわぁぁぁぁぁっ!熱ッ!!焼け死……あれ?」


慌てた俺だったが熱くも無く服が燃える様子も無かった……もしかして俺は大丈夫なのかね?

取りあえず燃え無い事が分かった俺は落ち着いて炎を消すとどこかへ行ってしまったロボを探す為再び敵兵の群れに突っ込んでいくのだった……






その後俺は火炎弾を量産して大地を火の海に変えるという陸遜もびっくりな放火魔戦法を使い勝利した。

どうやらこいつら……炎に極端に弱いらしい、まあ生き物だから当たり前と言ったら当たり前か。

ジェミィ達は俺が戦って敵をひきつけている最中防御第一に戦っていたらしく俺達が居た場所からはあまり動いては居なかった。

結果俺が大規模な放火を行い敵兵の約半数を潰して敵を撤退させる事に成功したって事か。

……俺無双過ぎる、まあ実際頑張って戦ってたのはロボなんだけどな。俺火炎弾そこらに投げてただけだし……


敵が居なくなった焦土と化した跡地でやっぱりこんがりと焼けた死肉を漁っていたロボを発見してこちらに呼んでジェミィ達の方へと向かった。

結構ボロボロになっているがほぼ全員無事なようだ……良かった。


「狼騎士さん、あんた本当にすげぇな……俺なんか数人倒すだけでも一苦労だってのに」

「しかしあんた絶対名のある魔法剣士だろ?あんなの乱発するなんざ普通出来ないぜ」

「あ~あ、俺もあのレベルの魔法仕えたらな~……羨ましいぜ」


地面にへたり込んでいる傭兵達が羨ましそうな目で俺を見てくる。

何か俺の株がどんどん上がっていっているような気がする……出来るだけ有名にはなりたくないんだけどなぁ……


「チッ、見ろよ……本隊のご到着だぜ畜生」


そう言って遥か後ろをみて舌打ちするアンダル。その方向には悠々とこちらに向かってくる正規部隊だった。

それに対し傭兵部隊の方はこちらに向かって駆け寄ってくる……何ていう違いだ。


「…………よし、行くか」

「こいつは報酬を増やしてくれって直談判しても文句言われねぇよな?」

「どーだろうな、兎に角今晩はあいつらの飯と酒を半分頂くことは確定だぜ」

「ハハハハハ!」


そう言いながら傭兵達は本隊に向かって歩いて行った。

こいつ等は笑ってるけど……死ってのは恐くないんかね。それとも何時でも死ぬ事を覚悟してるか……


「おい、ぼうっとしてないで私達も行くぞ翔、二回も置いて行かれるなんて御免だからな」

「お、応……」


ジェミィに背を叩かれて我に返り俺も本隊の方へと歩いて行った。

なんか凄い済まなそうな顔してたんだけど……まさか昨日の事を引きずってるのか?

う~ん、あんな状況で昨日の事で怒鳴るなんて出来ないよなぁ……


兎に角本隊に戻って今度こそゆっくりと眠ろう……もう色々と限界だからな。

俺はふらふらとした足取りでロボに乗ると本隊の方へと向かっていった……


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