第一章 十二話 ~夢の中で~
「……ここはどこだ?」
気がつくと俺は真っ白な世界に居た。確か俺はロボの紹介をした後景色が反転して……そこで記憶が無くなっている。多分気絶したんだろう。
それにしてもこの空間は一体何なんだ?上も下も右も左も真っ白……目がおかしくなりそうだ。
そして俺の目の前に居るのは………
「ヤッホー!元気にしてた?」
そういってツカツカとこちらに歩み寄ってくるこの真っ白な世界には似合わない真っ黒な姿、あの少しおちゃらけた態度……間違い無い、冥王ハデスだ。
しかし足場らしいものも無いのにこちらに普通に歩いて来るとは……いや、それを言ったらこんな空間でちゃんと立っていられている俺も同じか。
「俺、死んだのか……?」
こんな真っ白な空間は知らないが多分あの世の一部なんだろう、それじゃあなければハデスがこんな所で俺ににこやかな顔をして近寄って来る訳が無い。
多分ジェミィとティールの顔面パンチを食らったせいだな。うん、そうに違いない。
「一応言っとくがまだ翔君は死んでないぞ」
あぁ……人間ってこんな簡単に死……ってハイ?死んでない?ハデスが目の前に居るのに?
「いや、丁度君が気絶したんで君がこれからする事のヒントをあげようと思って来たんだよ!」
「ヒントって……いいのか仕事サボって」
「大丈夫大丈夫!仕事は殆ど終わらせて来たんだからね!私だって仕事はちゃんとやるさ」
「不慮の事態は想定してないんですか?」
「そんな戦争でも起きない限り私が忙しくなるなんて事は無いよ、戦争なんてそんなホイホイ起きるものじゃあ無いだろう?」
「まあそうだけどさ……」
~その頃冥界では~
「何?一気に死者が一万人以上!?一体どうしたんだ!?」
「どうやらまた戦争が起こったようで……」
「ハデス様はいずこに!?」
「あの、それが………」
「何だ?さっさと言え!」
「……………遊びに行っちゃいました」
「はぁ!?」
……冥界が大変な事になっているのをハデスはまだ知らない。
~再び翔の夢空間~
「さて、まずはこれを見て貰おうじゃあないか」
そういうとハデスは懐から一枚の折りたたまれた羊皮紙のようなものを取り出してそれを広げた。
見た目は……地図だろうか?しかし図面が俺の居た世界の物とはかなり違う、多分この世界の地図なのだろう。
色々な文字や大陸と思われる巨大な陸地には国境線や地名が書いてあったが……俺この世界の文字分かららねぇよ……何このアラビア文字と筆記体を融合したようなミミズ文字。
「え~と、あ……ここだここ、今翔君が居るのはここだね。見た目は島国だけどちゃんとゴムール大陸って言う……」
「ああ、大体の事情は知ってるよ」
「あ、そうなの翔君?……それなら解説は不要か」
そう言ってハデスが指差したのは地図の端っこ辺りに位置する小ぶりな島国だった……俺こんな辺境の地に落とされたんかい。
地図の大きさからこの島国の大きさは大体他の巨大な大陸の二分の一から三分の一といった所だろうか。
他の大陸と思われる陸地を見てみると多分この大陸が一番小さいみたいだ。
「んじゃあ単刀直入に言おう。この大陸を占領しちゃってみて翔君」
ふむ、このゴムール大陸を占領か、確かに輪が魔王の力を使えばこのような大陸あっという間に……って待てやコラ。
「チョット待て占領って何だ!?しかも何でそんなさも簡単な仕事だよみたいなノリで言うんだよ!」
「いやだってこの大陸の事情を知ってるんでしょ翔君?シチュエーション的にさっと現れてこの地をドーンと征服した後かわいい女の子を集めてハーレムを作り欲望のままあんな事やこんな事を……」
「俺は一体どこの魔剣を持った鬼畜剣士だ!」
「ハハハハ……そりゃそうだ」
そう言って笑うハデス。ホントこいつ何考えてんだ……まるで考えが読めない……
「まあこの世界で何をやるかは君の自由だ、ちょっとしたストーリーは用意してるつもりだけどね……ちょっと長い話になるけどいいかな?」
今までのふざけた表情は何処へやら、急にハデスは真剣な顔をして話始めた。
重要な話なのかと思い俺は無意識に背筋を立ててしまう。
「昔の話だ……私はこの世界を作った。理由なんて無い、あの頃は私一人で全ての死者の管理を行っていたから暇だったんだ……その退屈を紛らわせはしないかと作った言わば玩具の世界だった。最初この世界は秩序なんか無く、他種族同士が争い合い、多くの血が流れた。最初は面白かったさ、でもいつまでも世界が混沌としていたんじゃあ面白くない。そこで一つの英雄譚でも作ろうと思い一人の男をこの世界に送り込んだんだ、後に“魔界の神”と呼ばれ伝説になる人物をね。その男は強力無比な魔力で他の種族を束ね立ち向かう者達を次々と屈服させ世界に平和が訪れた……しかしその男も生きる者、次第に年老いていった。男は自分が死んだ時に自分が居た座を狙いまたしても争いが起きることを恐れ、男は自分の息子達を呼び、それぞれに治める大陸を決め、最後に男は自ら居た座を破棄し、これからは話し合いで全てを決めるようにと言い残し自分の強大な力を息子たちに分け与えてこの世を去った……」
うわぉ、なんていう説明口調、
そこまで話すと急にハデスは話すのを止め顔をくもらせた。しかしすぐに俺の方を向くと話し始めた。
「しかし男が死んだ後再び戦いが起こった。原因は私が男を世界に送る前まで最も強大な力を振るっていた勢力……“忘却の魔王”と呼ばれる強大な力を持つ魔人を筆頭とする勢力だった。私が放っておけばそのまま世界を平定したかもしれない勢力だったからね……一度野望を打ち砕かれた彼等は散り散りになりながらも力を蓄え男が死んだのを見計らい彼らは一斉に蜂起した。そして瞬く間に世界の大半を手中に収めた……窮地に立たされた男の息子達は最後の頼みと禁術を使い異世界から勇者を呼び寄せ力の半分を受け渡した……力を授かった勇者は男が残した剣を振るい苦難の末魔王を打ち倒す事に成功し世界に再び平穏が訪れたんだ。その後から男の息子達は与えられた土地の魔を統べる王という意味で魔王と呼ばれるようになった……」
ふぅん……まあ良くありそうなお話だわな。しかし異世界から呼ばれた勇者か……俺にとっては先人に当たる人になるって事だな。
「平和が訪れ数千年が経ちその話が伝説になった頃……男の血を引く者達に異変が起きた。ここ三十年ほどでその男の血を引いた者が殆ど死に、後継ぎは生まれず、生きている者達もその強力な魔力を失ったんだ……それをきっかけにその土地で強大な勢力を持っている者達が暴れ始めた。無論男の末裔達は立ち向かったが敗北し、皆その土地を追い出されるか皆殺しにされた……今となっては何人生き残っているのか……まあこれがこの世界の今の状況だよ」
ふむ、つまりは今は第三次世界大戦中って訳か。しかしそんな歴史聞かされても俺さっぱり分かんないぞ?
所で話の途中で魔王って単語が出てきたような気がするんだがもしかして……
「質問いいか?」
「どうぞ」
「もしかして俺の中の魔王っていうのは……」
「うん、多分翔君の想像で合ってるよ」
「マジか……」
じゃあ俺に再三話しかけてきた人は世界を手中にしようとした人って事ですね。結構滅茶苦茶な扱いをしてしまったんだが……
しかし何でその魂をハデスが保管してんだよ。ちゃんと地獄でも天国でも送ってやればよかったのに……
「……何で君に魔王の魂をって顔をしているね、まあ色々とこっちもあるんでね」
そう言うとハデスは地図をたたむと俺の方に歩いてきた。
「未だ魔王を崇拝する一派は残ってる。そこに魔王と同じ力を持った者の降臨……彼らは君を間違いなく祭り上げるだろうね、無論利用とする輩も……君はどうするかな?」
そう言って俺に地図を差し出すハデス。一応俺はそれを受け取った。
まあ貰っておいて損は無いから貰っておくけど……これって夢の中だから貰っても意味無いんじゃ?
それにしても俺の第二の人生は退屈を全くしそうにないな……平穏な生活はこれでもかってくらい謳歌してたけどそれが全く無くなっても困るしどういう身の振り方をしたらいいんだ俺……
「まあゆっくりと考えるがいいさ……む、そろそろ起きる時間だな」
「え?」
「現実世界じゃあ今は朝だぞ?そろそろお別れの時間だ」
欠片も名残惜しく無いんだが……って待て、何で俺に向かって戦闘態勢とってるんですかあんたは!?
「ちょっ!?何をする気……」
「大丈夫!夢だし現実世界にダメージは無いよ」
「いやそういう問題じゃ[ドスッ!]おぐふぇ!」
ハデスの正拳突きが俺の鳩尾に突き刺さり目の前の景色がぐらついた。そのまま体が傾き視界が暗くなる。
ちょっと待て、今全く動きが見えなかったぞ……もしかしてハデスって無茶苦茶強い……!?
「あ、そうだ……一応君の力になるものをもう一つ渡しておくから……って駄目だ、白目剥いてる」
最後にそんな声を聞き俺が地図を入れたポケットとは逆のポケットに何かを入れられる感じがした後俺の意識は沈んでいった……
どうも、ニャンコ太郎です!
……毎回下書きなんかしてません!その場で思いついた事をフリーダムに書いております!そのせいでキャラ名、土地名、たまに忘れます!
………以上、カミングアウトでした。
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