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第五章 八話 ~どう考えても近代兵器~

「おいおい……冗談だろ?」

「ごいづは酷ぇな゛……」


俺達は砦に向かって歩いていくと途中に円形の広場の中心に二メートル程の高さで横幅が数メートルある結構大きな祭壇がぽつんと置かれている場所があった。

特に何も無いような場所に見えたので俺達はそのまま通り過ぎようとしたがオクターデさんが『台座を調べる』と言いだしたので棺で即席の足場を作り祭壇の上によじ登ったのだ。

しかしこの棺、俺はともかく大柄なオクターデさんが足をかけて壊れないとは流石の強度だな……天国の爺さん、こんな事に使って本当にごめんなさい。


「うっ……」

「大丈夫かティール殿?」

「だ、大丈夫です……少しこういうのには耐性が無いだけですから……うっぷ」


ティールが顔面蒼白で口を押えている理由……それは祭壇の上に上った後俺達の目の前に並べられていた調査隊と思われる者達の無残な死体のせいだった。

綺麗に並べられている身ぐるみを全て剥がれた六体の死体の首は切り取られ腹は肋骨の辺りまで裁かれて内臓がすべて取り出され、頭があった部分に並べられていた。

乾いて黒い塊となったその内臓の中心に頭が置かれているのだがその頭は中身が穿り出され目と口が空ろになって開いているそれは文字通りのデスマスクになっていた。ご丁寧に目や脳や歯は内臓の横に綺麗に並べられている。


なんなんだよこの狂気の解体ショーは……古代の生贄の儀式か何かか?神への供物にしたってこんな気色悪い並べ方しなくてもいいだろうに。


「ここには遺体の遺体の遺留品は無いな……降りるぞ」


オクターデさんは一通り死体を見回すとさっさと台座から飛び降りた。

続いて俺とティール、そしてルドブルさんも続いて台座から降りた。

流石に傭兵の二人は全く動じてないな……流石、死体は日常茶飯事って訳ですか。いやまあこの死体は少し……耐性が無いと堪えられるものじゃあ無いけどな。


「だけどどうして死体があるなんて分かったんですか?」

「台座の側面に乾いた血がこびり付いていたからな……これで分かった事は一つある」


そういうとオクターデさんは背中から武器を引き抜いて構えた。


「……気を抜けば我等も彼等と同じ姿になる可能性があるという事だ」


しかし前から気になっている事があるんだが……オクターデさんが持っている武器がどうしてもアレに見えてしまって仕方が無い。うん、俺が居た世界に流通していた有名な武器の一つ……


「……それってショットガンですか?」


結構前から疑問に思ってた事をやっと聞けた……いやこのほぼ剣と魔法のファンタジー世界でまさかとは思って口に出さなかったが流石に限界だ。

それにオクターデさんが着ている装甲だってこの世界の一般的な鎧とはかけ離れている……例えて言うなら最近のゲームのキャラがよく着ている近未来的な装甲服だし……まあ何が言いたいかというと、いくらなんでも彼の武装はオーバーテクノロジー過ぎではないかという事だ。


「……ショットガン?これを知っているのか?」

「え?ああ……まあ」


あれ?オクターデさんが持ってるのってショットガンじゃ無い?

あれ?何か嫌な予感が……俺もしかして墓穴掘ったか?


「あ~……いえね?うちの地元でそれによく似た武器があったんで懐かしくってつい……あはは」

「……」


オ、オクターデさん無言で俺の事見ないでくださいマジで!

ヘルメットのせいで表情が見えなくて本当に怖いから!何言われるか分かんなくてすっげえ怖いから!


「ふむ……これはギルドの開発班が私専用に開発した武器で試作品らしく正式名称は無いが対大型飛行物体用散弾銃、デッドクラッカー、クラッシャー等色々と彼は呼んでいたな。とある文献に載っていたものを元に制作したらしいのだが詳細は私にも明かしてくれはしなかったな」

「それじゃあオクターデさんが他に持ってる武器も……」

「ああ、同じく彼が文献を元に作ったものだ」


さいですか……やっぱこの世界には絶対に先人が居るな。あ、因みに彼がその他担いでいる武器は腰に拳銃(といってもかなりデカい)っぽいもの四丁、腰部にライフルみたいなのが二丁、更に背中にバズーカ砲によく似たものが一丁……うん、改めて思うけどどこの歩く武器庫だよオクターデさん。


「しかしよく考えてみれば彼の武器は見た事が無いですねぇ」

「そうなのかティール」

「ええ、あんな形の武器はこれまでには一度も」


ふむ、世界を歩き回ったティールも見た事が無い武器だったのか……それじゃあまだ世界的に普及している訳では無いんだな……まあ普及なんかしたらこの世界の戦闘方法が根本から覆ると思うんだが。


「飛び道具の一種と思えばいい。遠距離魔法や弓と同じだ」

「そうなんですか……それでは弓の近縁と考えればいいと?」

「飛び道具としてはそうだが……何もかもが違うな、実演するのが早いか」

「実演?しかしどこに[ガチャ]ホォォォォウ!?」

「伏せろ!」

「え?は?」


[ドゴァン!!]


「うおぁぇい!?」


突然ティールに銃を突きつけたオクターデさんの凶行に一瞬体が固まったが指示通り俺はその場に屈……めねぇ!こんな荷物で次の瞬間凄まじい轟音が辺りに響き渡った。

……今の発砲音ってレベルじゃねぇぞ!?至近距離で爆弾が爆発したぐらいの爆音だったぞ!耳を塞いで無かったからかなり耳が痛い。下手したら俺気絶していたかも……


「………[ブクブク]」


ティールは泡を吹いて気絶していた。まあ当たり前だわな。目の前であんな爆音を耳を塞がずに聞いていられる方がどうかしてる。鼓膜が破れていないかちょっと心配だな。


「………っは!…………ここは?」

「グッドモーニング、起きたんならさっさと降りてくれ」


フェミナスには素晴らしい目覚まし効果もあったようだ。

空ろな目が段々と色を取り戻して周りをきょろきょろと見回す、そして完全に意識が覚醒し今自分がどのような状況なのかを確認するとみるみる顔が赤くなって……


「えっ?………あっ!うわわわっ!!!」

「うおっ!おい暴れるな普通に降りろ馬鹿野郎!」

「うわわわぁっ[ドサッ!]うぎぇっ!」


わたわたと俺の背中で動いたせいでバランスを崩し背中から地面に落ちてしまった。

しかしいくらなんでも慌てすぎだろーに……あーあ、せっかく目を覚ましたのにまた目を回しちゃって…


「中々の威力だろう?」

「中々どころじゃないですよ全然……」


……しかしオクターデさん凄すぎる、あんなもんを片手で発砲して微動だにしていないとは……

そして視線を発砲した先に向けてみると……うん、祭壇の半分が吹っ飛んでた。そこらへんに砕けて転がった石のや上に乗っかってた死体が無造作に転がってっておいぃぃぃぃ!?

仏に何て事を……あれ以上に酷い様にしてどうすんですかオクターデさん……


「ごりゃあ゛酷ぇ……ハハハッ!」

「笑える状況ですかこれ……」

「死者に敬意を払うのは墓前だけで十分だ、戦場のど真ん中で死体に敬意を払う気は無い」

「うわ酷い」


この人達死者に対する敬意が微塵も感じられ……ん?待て、戦場のど真ん中?

俺は嫌な予感がしたのでシーヴァを構えて戦闘態勢をとる。隣を見てみるとルドブルさんもボウガンを持って戦闘態勢をとっていた。

この人も遠距離武器なのか、てっきり爆弾でも使うのかと思ったら違った……


「オグゴァアァァァ!!!」

「うおぉっ!?[ザシュッ!]」

「グゲァッ!」


突然明らかに敵意のある大声と共に襲い掛かってきた数体の人影にシーヴァを振るう。

人影は見事に全て真っ二つに切り裂かれ短い断末魔と共に地面に転がった。

しかし妙だ……斬った筈なのに血が一滴も出なかった……何でだ?


「こいつは一体……」


不審に思い切りすてられた人影を見てみるとそれはここの現地住民だった。

別段おかしな所は無いように見えたが突然斬り捨てた筈の死体が動きこちらへ這い寄って……ってギャァァァァァ!?何で動けてんだこいつ等ぁ!?


「[ズドォン!]気を抜くな、こいつらは生きてはいない!」

「え?」


一発の銃声と共に這い寄っていた死体の一体の頭が吹き飛びぐしゃりと地面に倒れると動きが止まった。

オクターデさんの方を見ると既にそこには祭壇にあった死体とは別のバラバラになった死体がいくつも転がっていた。


「生きてないって……こいつらゾンビか!?」

「そうだ!頭を吹っ飛ばすか体をバラバラにして動きを止めろ!」

「わ、分かった!」


俺はにじり寄ってくるゾンビ達を次々と斬り捨て行動不能にした。しかしまだ若干ビクビク動いてるのがグロい。

そして次々と襲い掛かってくるゾンビ達を俺達は倒し続け、気付けばそこらじゅうが四肢や頭が欠損した死体の山が築かれていた。

しかしエグドラシアでゾンビもどきは見たがここまでアクティブに動き回る奴は見た事が無いぞ……

全員走ってくるしそのスピードが早く一撃もそれに比例してか結構重い。ゾンビだから軽い攻撃では怯まないし疲れってものも無いんだろう……厄介すぎる。

暫くするとゾンビ達の攻撃がピタリと止んだ。今となっては静寂が不気味に思えてくる……



「上から来るぞ、全員避けろ!」


オクターデさんが言うと同時に上空から矢が雨のように降り注いできた。ってゾンビ共矢も使えんのか!?

岩陰に隠れれば何とかな……って待て!これ避けたら気絶してる二人に当たる!しかもあいつら引きずってこんな数避けるの無理だ……ってそうだ!


「……っ!おらぁ![ズドォン!]」


俺は飛んできた矢に向かって魔弾を数発放って爆発させ上空にあった矢を吹き飛ばした。

パラパラと矢の残骸が落ちる中今度は俺達に向かって横から矢が飛んできたので俺達はそこらに転がった祭壇の破片に身を隠した。ついでに近くで倒れていたティールも岩陰に引き寄せる。

……まだ目を回してやがる、状況が状況だしたたき起こしてもいいかな……


「[ドォン!ドォン!……]予想以上に遠くから撃ってきているようだ……どこから撃ってきているのか分からん」


岩陰から数発銃を撃ったオクターデさんはそう言って身を屈める。


「どうずんだ……むか?」

「それはあまり得策では無い……フェミナスはどこだ?」

「あそこ……ってうわぁぁぁ!」


フェミナスを落とし……いや落ちた場所を指差したがそこには死体の山に埋もれて針山の如く矢が突き刺さった彼女の姿が……


「ふむ、とりあえずこちらに持って来よう」

「はい!?」

「矢を引き抜いて殴れば起きるだろう」


ひ、酷い扱いだ……悪乗りした時のティール並みの扱いだぞ。

そんな事を思っているうちにルドブルが矢の雨の中フェミナスをおぶって……ってフェミナスを盾にしてどーする!追加で更に矢が体に刺さりまくってるんですけど!?

そんな事をお構いなしにルドブルさんはフェミナスを俺達の所まで運ぶと矢を適当に引っこ抜き始めた。

驚いた事に矢を引き抜いても全く血が出ていない……こいつもゾンビか?いやでも名乗ってた時に吸血鬼ヴァンパイアって言ってたしな……血が出ない種族なんかね、ヴァンパイアって。


「寝てないで起きろ[ベシッ!]」

「ほべっ!?……うぅ~……」


そして抜き終わったらオクターデさんが頭にチョップを一撃、すると頭をさすりながらもふらふらと立ちあが……って今立ち上がったら危な……


「[トスッ!]おぐふぅ!?」


立ち上がった途端頭に矢が突き刺さるフェミナス……再びドサリと俺達の前に倒れる彼女を見て流石にかわいそうだと思った。






「分かりました……ううっ、何か頭痛い」

「だろうな」


再びフェミナスを起こして今の状況をかいつまんで説明する。半分寝ぼけたような顔だったが話が終わる頃にはしゃっきりとした顔になっていた。

これが仕事の時の顔、というものだろうか……俺と喋っていた時とは目つきも雰囲気が違う。

まあ頭の横に水平に突き刺さって貫通してるコントよろしくの頭のせいで全て台無しなんだが……

それで痛いで済ませられるレベルなのが凄い、普通死んでるぞそれ。


「それでは早速始めてくれ」

「分かって…りました!…………ふっ!」


[フシュゥッ…]


「!?」


始めるって何をだ?と思っているとフェミナスが目を閉じ力んだかと思うと体から煙のようなものが噴出した。

理解不能な事態に固まっている俺をよそに煙っぽいものはしばらく俺達の周りをふよふよと漂っていたが暫くするとどこかへ流れて行った……

何今の……煙?蒸気?どうしてそんなもんを出した?……排熱でもしたんだろうか?

そんな事を考えていると再びあの煙のようなものがふよふよと戻ってきて……あ、フェミナスに取り込まれた……いや戻ったか。


「……分かりました、数は五十三、距離は三十五……です」

「よし分かった」

「はい!?」


え?何それ……今のスタンドか?スタンドだったのか!?

全てが訳の分からない俺を置いてオクターデさんは背中からバズーカを外すと一リットルペットボトル程の弾を取り出して装填すると上空に向けて……


「全員耳を塞げ!」


[ズドゴォォォォォ……]


「う、うわわわっ!」


慌てて耳を塞ぐのと同時に地面が揺れる程の凄まじい衝撃が俺達を襲った。たまらず俺は尻もちをついてしまった。

着弾音かと勘違いする程の爆音を出し放物線を描きながら飛んでいくペットボトル弾(仮)

数秒後結構離れた所からズゥゥゥゥン……という音と共にきのこ雲が上がった……どんな材料使えば着弾地点にきのこ雲が上がるんだよ一体……


「……一応敵は殲滅したみたいです」


ふらふらと立ち上がって言うフェミナス。体にスーッと戻って言っている煙はさっきのだろうか?二分割してたのかな?


「そうか……それなら行くぞ」


フェミナスの答えを聞くとバズーカを仕舞いさっと立ち上がって小走りで砦の方へ行ってしまうオクターデさん。


「うっ……ちょ、ちょっと待ってください~!」

まっだ容赦ようじゃね゛ぇな゛ぁ……」


その後を慌てて追いかけるルドブルさんとフェミナス……少しは俺らのメンタル面も考えて下さい、みんなあんた程タフガイじゃありませんよ……


「……[ブクブク]」

「……はぁ」


とりあえず俺は今の今まで気絶しているこいつを叩き起こしてからオクターデさんを追うとしよう……

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