第五章 四話 ~傭兵ギルドと共に 中 ~
※しばらく更新を停止し大規模な小説の改変をします※
後今回非常に危ない表現がありますがご了承ください。
「はーなーせー!」
「ふむぅ……柔らかいな」
「[プニプニプニ]や、やめろー!」
「あぁもうかわいいなぁコイツは!」
「ひぃぃぃぃっ!」
「「「………」」」
……ん?あぁ!こ、この状況を説明しよう。
・俺が頭を抱えている内にジェミィがフェミナスを抱えて俺達の元へ帰還……シャレじゃないぞ?
・何故かジェミィが自分の膝の上にフェミナスを座らせる……にやけ顔で。
・ジェミィ大暴走&性格崩壊、先程のような会話で俺達ドン引き。
以上だ。分からない部分が多々あると思うがそこは脳内補完してくれ。
……本格的に中二病が悪化してきたな。精神的に疲れてきたせいだろうか、居もしない人間に解説行動をするなんて俺は本当に疲れているらしい。今日はさっさと寝よう。
「おいっ!何ボーっとしてるんだ!私を助けろぉ!」
「……頑張れ、なんとか切り抜けるんだ」
「それが無理だから助けを求めてるんだろぉがぁぁぁ!」
「あ~……じたばたしてるのもかわいいなぁ…」
「ひぃぃぃ!すりすりするなぁぁ!」
それにしても完璧にオモチャにされてるなフェミナス。そしてジェミィの壊れっぷりが酷い、あんな顔見たのは初対面の時に角をいじられた時くらいだろうか?しかし彼女を笑いながら拘束するってどんだけの力使ってんだジェミイは。あのガタイのいいケックでさえ体を振り回されかけてたっていうのに…
「ほーら食事が来たぞ~」
「私は子供かぁ!これでも今年で五十三歳なんだぞ!?」
「私より年下じゃないか!十分だ!ほ~れ」
「スプーンぐらい自分で持てモガッ!?」
うわ喋ってる時にスプーン口の中に突っ込んだよ。
てか入れ方荒っ!もうあれ入れるとかいうスピードじゃ無いし!最早突き刺すって言った方がいいよあれ!喋るのを黙らせようとしてるよね絶対!?
……ん?年齢の事?突っ込まないよ俺は?だってその役目は
「ジェミィは五十過ぎ……っと、人間視点から見たら年齢的にオバサンって言われてもおかしくない年れ[ズンッ!]ふごぅぇあぁっ!?足の小指がぁぁぁ!」
ティールの役目だ。流石ティールさんマジティール、椅子から足を抑えて落ちるという結果を出してまでデリカシーの欠片も無い事を言うとは……最早(二つの意味で)ネタを提供する為称賛に値する行動力を起こす男だ。
しかしジェミィの年齢が五十過ぎの事が求めているネタの何処に必要なんだよ。
この世界の事なんだから種族ごとで寿命と成長が違う事なんて百も承知のはずだろうに……
(主よ……彼女からいやな魔力を感じる)
「はい?」
いきなりシーヴァが意味深な発言をしてきた。彼女って……フェミナスの事かな?
(……私の天敵だ)
「え?……あぁ確かに天敵だな」
刀身が血の結晶でコーティングされてるもんなシーヴァは。吸血鬼がこんなもん食うかは分からないが食うとしたら確かに御馳走だな。しかし本当に嫌そうな声だな……昔何かあったのか?
「何か嫌な思い出でもあるのか?」
(……昔発狂した吸血鬼の群れと戦った時刀身をかじられまくったんだ、傷は付かなかったがあいつらの口にこびりついた腐った血が剣にこびりついてずっと匂いが……おぇ)
お前剣だから吐かないだろ…とも思ったが本当にそれぐらい臭かったのだろう。
それからその事を本格的に思いだしてしまったのかずっとシーヴァは気分が悪そうに唸っているだけになってしまった。聞いて悪かったな…
「なに一人でブツブツ喋ってるんだ?ムグムグ…」
そして天敵が遂に諦めたのか膝の上で抱っこされた状態で飯を食っていた。
もうなんかふっきれた顔をしてるな…つーか飯食うんかい。
「所でこいつを持ってきたのはいいとしてどうするんだよ……普通に仲間の元へ帰すか。で?あいつらどこに泊まってるんだフェミナス?」
「う……」
おい、何で動きを止めて気まずそうな顔をするんだ……まさかとは思うが知らないなんて事は無いよな?
いやいや見た目はあれだが年齢はそれなりだしそんな子供みたいな…
「この子仲間が泊まってるとこ知らないらしいぞ」
「……うん、まぁ予想できたよ」
子供だったな!何なんだよホントもう!この世界では年齢はメッキなのか!?軽く削れば落ちちゃう簡易仕様か!
全く、今度はあいつらの宿探しか?しかしあいつらも鬼じゃないしフェミナスを探してると思うのが妥当だからギルドで待ってれば…
「五十過ぎと言っても精神年齢は見た目相お[ズドスッ]ごふぇっ!」
だからすぐ口に出すなってティール……
「さて……それじゃあギルドにこいつを置いてこよう」
「仕方が無いな。でもまた明日会えるから…行くぞアンダル」
「了解!そんじゃ後で迎えに来るかな~」
「応!……行ったか。で、どうだった?俺の仲間の感想は」
「……出来れば金輪際会いたく無い」
……食事をしている間フェミナスを放したくないジェミィをなんとか説得する事に成功した俺はティールと共にギルドへ、ジェミィとアンダルは今夜の宿探し…という形で別れる事にした。
ジェミィは一緒に行きたいと言っていたのだが……うん、フェミナスが非常に嫌がったためティールが同行する事となった。俺的にはコイツの方が違う意味で危ない気がするんだがなぁ…
「……ん?今は真面目だぞ、心配するな」
「出来ればいつも真面目で頼む」
「それは出来ない相談だな翔」
真顔で返すな真顔で……はぁ、まあティールはこういう奴だと割り切っているが何故こいつは憎めないのだろうか?なんだかんだで変態行為を繰り返されているジェミィと仲が悪いわけでもない訳だし…
まあ公私をきっちり分けて行動しているというのが一番の要因か。
「ほら!ギルドへ向かうんだろ?さっさと行くぞ」
「ああそうだな、お前が食った飯代を奴らに払って貰わないと」
「あれぐらい奢ってよケチくさいなぁ!」
「何がケチくさいだ!まだ面識が浅い奴に飯を奢れるか馬鹿野郎、しかもお前初対面で武器投げてきただろーが!」
「……はいはい二人とも喧嘩しないでさっさと行くぞ」
言い争っている俺とフェミナスを見かねたのかティールは俺達の間に割り込むと俺達を進むように促しギルドへと連れていった。
向かう間にちらりとフェミナスの方を見ると……うん、何故俺を睨むんだ。薄々感じてはいるが俺はフェミナスとそりが合わないような気がする。うん、相性が悪いような気がするんだ。
「……頼むから双方睨むのを止めてくれ」
うるさいティール、間に立ったお前が悪い。
まあそんな感じでお互い睨みあいながらギルドに到着し…
※数刻後※
「おいティール!あのお嬢ちゃんの仲間は……大丈夫か?」
「ああ……あと少し経ってたら私は倒れてた」
「「……」」
睨みあいは意地の張り合いに、そして何故か殺気の出し合いに変化していた。
その殺気たるや半径数メートルに誰も寄ってこないレベルである。俺達を呼びに来たアンダルが俺達を発見して心配の言葉をかけたのも無理は無いだろう。
ティールはその二つの殺気の間で律儀にも立っていたのだから……精神のダメージは半端無い事になっているだろう、心なしか顔色も悪い気がする。
「お嬢ちゃんが居るって事は……来なかったんだな」
「ああ……来なかったよ……」
「ティール、おめぇ大丈夫か?」
「大丈夫さ……早く宿へ行こう……このままじゃ私の精神が持たない」
「あ……あぁそうだな!ふ、二人も早く行くぞ!?ジェミィがもしもの時の為に一人分多く部屋をとったんだ!」
「「……[スタスタ]」」
俺とフェミナスはアンダルの方をちらりと見ると再び視線を合わせ殺気を微塵も抑えずにアンダルが居る方へと歩き出した……正直何故こんな器用な事が出来るのか自分でも不思議だ。
多分傍から見たら完全にお笑いだが溢れ出る殺気がそれを全く許していない。そんな嫌な静寂の中俺達はアンダルを先頭にして宿へと向かった。
「なぁ……今更だがあいつら仲悪いのか?」
「いや、ただ単にそりが合わないだけだろ……殺気は出してたが嫌いって訳じゃあ無さそうだ」
「そうなのか?」
「確かめたいならあの間に入れば一刻で分かるぞ」
「……止めとくぜ」
ティール……本当に済まなかった。
「よーしフェミはこっちだぞ~」
「え?[ガシッ]いやぁぁぁぁぁたすけてえぇぇぇ!!」
「あっははははははは!」
[ドタドタドタドタ……]
「「「……」」」
アンダルが案内した宿に入ると待っていたかのようにジェミィが殺気などものともせずにフェミナスに駆け寄り抱っこするとそのまま宿の二階へと連れ去ってしまった。
うん、一応はこれで俺も殺気を出さずに済むな……ふぅ、疲れた。それにしても今日のジェミィのテンションはおかしかったな……
「一体今日のジェミィはどうしたんだ……?」
「……翔、言いたい事がある」
「ん?」
「何も言わずにこれを受け取ってくれ」
そう言ってティールから申し訳なさそうに渡されたものは……小瓶?しかしラベルも無いし中身は空だ。
これが一体?……まさかこのビンは魔法弾を跳ね返せる特殊な加工をされたビン!?
……という笑えもしないジョークは置いておくとして多分この空になったビンの中にジェミィをおかしくしてしまったものが入っていたのだろう。
しかしティールが使う薬と言ったら媚薬系かと思いつかないがジェミィの反応を見ると……間違ったのか?
「その顔からして察しはついたと思うんだが……彼女が飲んだのは媚薬の一種だ」
「媚薬……なのかあれは?」
「間違い無く媚薬だ……まあ効能は翔が思っているのとは少し違うが」
「……少しどころか全く違うだろ。どっちかっていうとはっちゃける薬だろアレ」
「いや、あれは何というか……本能に忠実になる薬で命名するなら“デレ薬”って所か」
「ま~た俺とジェミィを無理やりくっ付けようとしたのか……」
「いやいや今回は違うんだ!事故なんだ!私の事故の回想を聞いてくれ!」
「え?回想?」
「それではスタート!」
…抵抗もむなしく目隠しをされ手足をきつく縛られると私はベットへと強引に押し倒された。
諦めずにがむしゃらに暴れるも手足の自由が奪われている状態では私の最後の抵抗をも全く意味を成さず手足のロープをベットに縛りつけられ私は身動き一つとれなくなってしまった。
[ヌメッ……]
「ひっ!?」
ふいに私の足の裏にヌメヌメした何かが触れ私は驚きと恐怖で体が強張った。
そのヌメヌメしたものは私の足を舐めまわすように這い上がって来た。
これは………触手?
「ひ……っ?きゃぁぁぁぁぁっ!」
今度は胴に、頭に、両手に同じように何かが触れて私は恐怖に耐えきれず大きな悲鳴を上げた。
そんな事はお構いなしに私の体に触れる触手は増えやがて私の大切な部分に向かってきた。
「や、やめっ……ひぃっ!?いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「おいコラティールてめぇ!?」
「……何だ翔?トイレにでも行きたくなったか?」
俺は耐えかねてティールに突っ込んだ。危ないってレベルじゃねーぞオイ!ギリギリアウトだよ!
なんだこの回想は!?どっからどう見ても18禁話じゃねーか!?
「違うわ!何が事故の回想だ!回想が事故ってんじゃねぇかオイ!」
「全く突然制止したので何かと思えば……これからが本番だというのにこれじゃあ翔以外の聞いている人が生殺しじゃあないか」
「俺以外の誰がそんな話聞くんだよ!?」
「第三者視点から見ている人物に決まっているだろう全く……質問が無いなら再開するぞ?」
「ちょ!?待てティールそれ以上は本気でヤバ……」
時は私が船を降りる一刻前にさかのぼる…
「う~む、やはり駄目だな」
私は今まで書いていたノートをパタリと閉じると椅子の背筋にもたれかかった。
やはり恋愛モノで無いと筆が進まない……というよりやる気が出ない。愛の証が性交と言う輩が居るがあれは間違っていると私はしみじみと思う。
例えば今私が書いていた作品がそうだ。あのような行為をしてどこに愛というものを探せば良いのか私には微塵も理解が出来ない。我々には智恵があるからこそ恋をし、愛を感じる……ただなんの過程も無しに性交に及ぶなどそこらにいる発情期の獣と微塵も変わらないではないか……
「私は何を哲学者ぶっているんだか……」
こんな事を考えてしまうのも船室の中で延々と執筆作業をしていて疲れてきたからだろうと私は思い少しリフレッシュする事にした。
「[ゴソゴソ]おっ…あったあった」
私は自分の持ち物の中から一本の液体の入ったビンを取り出した。
こいつは結構な代物で私がお嬢の教育係をやって精神的に疲れた時に毎度助けてもらった薬だ。
……決して怪しい物では無い。ただの良く効く栄養&活力回復薬だ。二日酔いや下痢なんかした時にも良く効く万能薬だ。誓って麻薬なんかでは無い。
「[ゴクゴク…]う~ん、効き目抜群だ……さて、軽く外でも見回って気分も変えてからまた執ぴ[ギィ…]ん?」
そうして私は薬を仕舞い外に出ようと扉に手をかけようとした時扉が勝手に開き顔色の悪いジェミィが立っていた。
「ど……どうしたんだ?」
まだ何もしていないというのに私は自然と身構えてしまう…まあこうなった原因の全ては私のせいなのだが。とりあえず進んで私の部屋に来ると言う事は何か言う事があるのだろうと思いジェミィに要件を聞いた。
「気分が悪いんだ……何か薬を持ってないか?」
「ああ、それならいい薬がある。今すぐ持ってこよう」
「………頼む」
このデレ要素をどうにか翔に向けさせればいいんだが………今はそんな事を考えている場合じゃ無い。
とりあえずさっき飲んだ薬をジェミィにやれば全快とはいかなくともある程度は和らぐ筈だ。
「これを飲むといい」
「……助かる」
そして私の持ってきた薬をジェミィは飲んだ。
こういう相手が大変な時には変な事はしない。それが紳士である私のルールだ。それを知ってかそのお陰で今は薬を出されてもジェミィが信用して飲んでくれている訳だ……話した覚えは無いが今までの行動で理解してくれているのだろう。
私はジェミィが飲み終えたビンを受け取るとバックに戻…
「……ん?」
おかしい、空のビンが減っていない……まさか!
私は嫌な予感がし慌ててバックの中を漁った。
……やはり無い。今度の作戦で使おうと思っていた媚薬がっ!これでは次回の作戦に支障がっ!
それにあれは意外と高価だったのに!しかるべきシチュエーションで使うべき筈であったのに!
くそっ!こうなったらプランB……ある訳が無いだろう!
そんな葛藤をしている私をよそにジェミィは……
「おぉ!?気分が良くなった……?助かったぞティール!」
何故か気分が良くなったらしく笑顔で私の部屋を後にした。
「という訳だぁ!」
「ごめんサッパリ意味が分かんない」
ようやく回想が終わったが無駄な部分が多すぎたせいで結局どういう事かいまいちわからない結果となってしまった。何コレ無駄に疲れただけですか?
「つまりは次回の作戦で使うはずだった媚薬を誤ってジェミィに投与した結果ああなったんだ」
「回想入れる必要あったか?」
「限りなく必要無かったな」
「じゃあ入れんなよ面倒くさい!」
さらっと答えるなさらっと!なんか真面目に聞いてた自分が悲しくなるから!
「まあしかしジェミィの体はどうなっているんだ?薬の効き目は遅いし効果も変わってしまった……前々回に至っては薬が殆ど効きもしなかった」
「本当ならどうなる筈だったんだ?」
「即効で『キャ~翔好き好き大好き~(はぁと)』状態になる筈だったんだがなぁ……」
そう言って俺達二人は天井を見上げる。
[ドタン!バタン!ギシギシ……]
上の階から響いてくるのは何かがのたうちまわる音とベットがきしむ音だけだった。
あと僅かにくぐもった声で悲鳴も聞こえるな……まあ……ご愁傷さま。ジェミィが寝るまで一晩頑張れ。
「俺達はさっさと寝るか」
「そうだな」
「……部屋はこっちだ」
俺達男三人はその後誰一人として喋らずに就寝した…
え?………第三者視点?アンダルの事ですが何か?