第四章 二話 ~バイトの一日~
ふぅ……やっと更新出来た。
皆様に「コイツ死んだんじゃね?」と言われないかビクビクしてたニャンコ太郎です。
受験+スランプという泥沼にはまって危うく一ヶ月間放置する所だった……いや危ない危ない。
約二十日ぶりの更新となっておりクオリティが著しく下がっている可能性がありますが……許して下さい。
それでは本編どーぞっ!
次の日の朝、レイナーさんに連れられてレナと俺の荷物が運ばれて来た。
レイナーさんにお礼を言うと「困った事があったらまた何時でも来なさい」と言って博物館に帰っていった。
………ホントいい人だなぁ。
「荷物部屋に置いてきたよ!」
「応!ありがと」
数分後、荷物を運び終えたレナが階段からパタパタと下りてきて俺が座っているカウンター席の隣に座った。
「……暇だな」
「………だね」
俺とレナ以外誰もいないがらんとした店内。俺とレナは何を話すでもなくただじっと椅子に座ってボーッとしていた。
……まあ当たり前だよな。一応開店状態にはしてあるが何時もならば開店などしていない時間だ。客はまず来ないだろう。
「ところで午前午後ってどうやって認識するんだ?」
俺はふと思った事を口にした。確かガサークさんは午前午後、と口にしていたが俺はこの世界に来てから携帯電話(紛失中)のデジタル時計でしか時間を確認していない。
ディアトリアにもエンディアスにもそれらしき物は一切無かった筈だ。
…………どうやって時間が分かるんだ?
「あ~……確かこの街のどっかに巨大な時計って言う時間を計る便利な代物があって午前と午後の変わる時に鐘を鳴らしてる……って父上から聞いたような気がする」
「へぇ……時計なんかあったんだ」
「昔勇者様がこの世界に持ち込んだらしいよ?」
持ち込んだ……と言うことは昔この世界で魔王を滅ぼした勇者は転生者……いやこっちの世界に召喚された人だったのか?
まあどちらでもいいか。今の俺には関係無いし。とりあえず良くやった勇者。
「翔の故郷にも時計あったの?」
「ああ……そりゃ一家に一台はあったな」
「へぇ~……何か時間に縛られてそうで窮屈な感じがするな」
「そうか?色々便利だと思うんだけど?」
「ん~…でも時間を知りたいなら私は太陽の位置を見れば大体の時間が分かるから必要無いし」
「……そりゃ凄いな」
……今一瞬ジャングルの奥地とかに住んでるどこかの部族とレナの姿が被ったような気がした。
「エンディアスではみんなそうだよ?」
「マジでか?」
恐るべき動物大国エンディアス。野生の勘(?)が半端じゃない。
暇な俺達二人はその後も取り留めのない話をその後も延々と続けた。
無駄話をしていると本当に無駄に時間が早く進むものでいつの間にやら…
「その時私は[ゴォォォォォォーーーーーーン……]……ほらね?鐘が鳴った」
「ホントだな。どっから鳴ってんだろうな……」
そう言って二人で窓の方を……
「[ギィ…]ちーす、ガサークのとっつぁん今日も……ありゃ?」
見た直後お客さんが入ってきた。発言からして多分常連のお客だろう。
俺はドアの方を向き入ってきたお客に軽く頭を下げた。
「どうも、ガサークさんが帰ってくるまでバイトの風見翔です」
「居候のレナです」
「お…応……」
入ってきたのは俺より頭一つ分はデカいトカゲ……いやリザードマンと言った方が正しいか。
「ガサークのとっつあんは留守か……」
「ええ、でも品揃えはいつも通りですよ?」
いつも通りの筈……だよな?昨日出てったばっかだし……
「なら良かった。とっつぁんと話せないのは残念だがな」
そう言ってリザードマンは軽く笑み(に見えた)を浮かべると薬棚を開き瓶を数本取り出して俺の所に持って来た。
「え~と、全部で銅貨二十二枚ですね」
「はいよ……あ~…ところで何時ぐらいにとっつぁんは帰ってくるんだい?」
「分かりません……急いでいたようで何時帰るとも告げずに……」
「そうか……」
リザードマンは俺に薬の代金を渡すと薬を仕舞った。
「まあ付き合いが長くなりそうだから一応名乗っておこう。俺の名はグルヴィ、魔法使いギルドの平凡な魔術師だ…それじゃあなバイト君。しっかり仕事しろよ!」
「あ…はい……」
そう言うとグルヴィと名乗ったリザードマンの男性は店を出ていった。
リザードマンの魔法使いか……いやでも彼見た感じ皮鎧着てたし腰に剣が……
気にしたら負けか。うん。
グルヴィさんの来店を皮切りにちらほらとだが客が来るようになった。
「ありがとうございました~」
「ました~」
代金を受け取り薬を渡す。
レナをちらっと見てみるとカウンター席でぐだーっとなっていた。
まあやる事が特に無い時に暇だとそうなるよな普通。
「レナ、棚の整理やってくんない?……はい補充用の薬」
「あ~う~~~………」
どこぞのケロちゃんのような声を出すとフラフラと立ち上がりゆっくりと薬棚へと向かっていく。
「あかいのはこっち…あおいのはこっち……きいろいのは………フフフフ…………」
不気味な笑い声を漏らしながらゆっくりとした動作で薬棚の整理をしていくレナ。
……後ろ姿がすっごく怖いんだが。ってかお客さんがお前から溢れ出すよく分からないオーラに引いてるぞ。
「むらさきのは~あっちで~みどりは~~」
途中から妙なテンポで歌いながら棚の整理を始めるレナ。声をかけようにも何と言うか……かけずらい。
「なんかかがやいてるのは~……なにこれ?」
……もしかしてあまりの暇さに頭の中がショートしたか?
「あの店員さん……私あの棚にある薬取りたいんだけど……」
「済みませんお客様…今すぐこちらで用意します」
「あ…はい……」
結局レナの変な歌と共に行われる薬棚の整理は数刻程続いた……
夜……ガサークさんがいつの間にやら残しておいてくれていたメモを読むとどうやら日が沈んでからはレストランと言うか……酒場をやっているらしい。と言うか出ていく前にマシンガントークするよりもこのメモを渡してくれ。
ちなみにメモの内容は数百文字に及ぶ長文なので要約すると
[夜は酒場やってます。奥に食材と酒あるから客が頼んだら適当に出してね!唯一品書きにあるスープだけど味は適当に食材と調味料をぶち込んで作ってくれ!名目上は闇鍋にしてあるから客が不味いって言ってもだいじょうぶだぁ!]
……どうやらガサークさんはレストランの方は趣味以下のレベルで行っている事が良く分かった。
[P.S. まあやるのは自由だから気が向いたらやってくれ。後やる時は看板を外に出すのを忘れないように(はぁと)]
うん、趣味以下だ。と言うか客を呼ぶ気が無いだろ。
「まあ……一応看板は出しとくか」
店を閉めても特にやる事なんて無いので一応店を開こうと思い俺は店の隅っこに寂しく佇んでいる看板を持つと店の外に出て設置場所と思われる所に立てた。無論料理は出来ていないので後ろ向きに。
次は食材だ。俺は[貯蔵室]と堂々と、かつ分かりやすく書かれている戸を開けた。
「さて……どんな食材があるのか……」
数メートル四方の小さい部屋だが野菜や日持ちしそうな干し肉など結構食材があった。
更に奥には[冷凍室]と書かれた鉄の扉もあった。
「一体何があるのかな……さぶっ!」
鉄の扉を開けてみると痛いほどの冷気が溢れ出した。
魔法か何かで冷気が出る物を作っているのだろうか?
一応中には凍り付いた肉や魚などが天井から吊してあった。
「よし、こいつとこいつと……これを使うか」
俺はその中から適当にいくつか選んで冷凍室と貯蔵室から出ると早速調理を開始した。
「………出来たか?」
「………出来たの?」
「………出来たんだと信じたい」
半刻程した後、この店唯一の固定メニュー、“適当に食い物をぶち込んだ闇鍋”が完成した。
この世界に来てからかなり経ってはいるが料理の…と言うか食材については未だに未知の物が多い。
元の世界に居た頃のシチューを作る感覚で作ってみたのだが……
「ピンクのスープってどう思う……レナ?」
「いいんじゃない?……独創的だし」
俺達の目の前にあるのは完璧にピンクのスープ。スープから覗く鳥の足や魚の頭、煮たことでグロテスクな形となった何種類かのお野菜がプカプカ浮かんでいる。さらに何故だか知らないが紫色の煙がもうもうと立ちのぼっていた。
あの妙に太い紫色の草を入れたのが悪かったのか?
いやそれとも緑に白の斑点が付いているどこかで見たようなキノコを入れたのが原因かもしれない。
「と、とにかく試食をしてみよう…」
「そ、そうだね……」
俺は恐る恐るスープをすくい口に運んでみた。
「……」
「ど、どう?……」
「あ、普通に旨い」
「マジで!?」
色々混ざりあった不思議な味ではあったが吐き気を覚えるような味では無かった。
俺に続きレナもスープを口にする。
「ホントだ。不味くは無い」
「だろ?」
一応レシピを保存しておくか。
名前は………風見スペシャルでいいだろ。
「じゃあ……開店するか?」
「うん、そうしよ」
「おーい!肉だ肉!もっと持ってきてくれー!」
「バイトく~ん!スープ追加ね~!」
「はいはい只今ぁっ!」
看板をひっくり返し店を開店した数分後、あっと言う間に店内に客が来た。
……それも十数人。
「お~い!こっちに酒足りてねぇぞぉ!」
「少々お待ち下さぁ~~い!」
店員一人に対し客は十数人。正直に言おう。殺人的な忙しさだ。
一応レナにも働いて貰っているが焼け石に水と言った状況だ。
何故こんなに人が集まったのか?
この店が実は人気店だったから……等という訳では無く単にギルドの任務を終えた団体様が通りかかり見たこと無い店だったから試しに入ってみたという理由だった。
………なんだってこんな日に。
「酒ぇ!」
「はい只今ぁ~~~っ!」
団体様が帰った後、俺が疲労で倒れたのは言うまでもない。
~風見スペシャル~
翔が自分のソウルの赴くままに作った食欲が失せるような濃いピンク色のスープ。(本人はシチューだと言っている)
味はカオスだが不味くは無い。それ故か謎の中毒性を持つ。
食した者曰く美味いと言うには何か足りず普通と言うには美味いらしい。
元ネタは“相棒”の美和子スペシャル。