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第三章 最終話 ~全ては過去、そして今~

「ぐべぇっ!ごぶっ!おぶっ!げはっ![ドサリ]」


塔から真っ逆様に落ちる間に十数回壁や突起にぶつかりまくったお陰で俺は何とか死なずに済んだ……そう、取りあえずは。


「か……体中が痛ぇ」


右腕は火傷と最後の渾身の突きで既に言うことを聞かない。他の体の部分も先程の攻撃の反動と何回も体を打った事により殆ど動かない。


辺りを見回すと四方は瓦礫で囲まれていた。多分落ちてきた瓦礫で壊れて出来たスペースに落ちたのだろう。シーヴァが近くに転がっていたので俺はヨロヨロと近付き手に取った。

そしてそれを杖代わりに歩き出した。

「ん?……アヴィか?」


魔石を入れているポケットが光ったので俺は取りあえず近くの壁にもたれ掛かってシーヴァを立て掛け魔石を手に取った。


「おう、どうしたアヴィ?」

「(ああ、生きていたか!おい、ジョニーは無事だ!)」


アヴィの声に混ざり後ろに居るのであろう全員の歓声と安堵の混じった声が聞こえてきた。


「(いや、いきなり塔に巨大な太陽みたいな魔法が落ちたと思ったらいきなり塔が崩れ落ちて……心配していたんだ、早く出て来い。何時完全に崩れ落ちるか分からないぞ)」

「了解…待っててくれ」

「(分かった(やだお兄ちゃん助けに行く(落ち着くッス!美雪ちゃん(こういう時こそ落ち着かなきゃだめよぉ~))いやだぁ~行くぅ~!)……早く来ないと美雪がお前捜して突っ込みかねない…出来るだけ早く来てくれ)」

「ハハッ……分かった」


俺は通信を切ると気合いを入れ直してシーヴァを握りしめ出口へ向かって一歩…


[ガラガラガッシャーーーン!]


「うわぁぁぁぁぁ!」


踏み出した途端施設が崩れた。俺の足下が崩れ落ち俺は再び落下した。


「ぐっ……くそ……ん!?」


悪態をつきながら所々が悲鳴を上げている体を無理矢理起こして前を見ると……

……ダリアスの石像が目に入った。


俺は周りを見回してみた。後ろにはこの部屋の入り口と思われるところがあったが既にそこは瓦礫で塞がれている。天井も見たが踏み抜いた床の部分に巨大な石の壁が乗っかって蓋をしていた。


……確か俺をここに飛ばしたのは他でも無いダリアスだ。それならば空間転移で俺をここから脱出させる事も可能ではないか?

俺はその望みをかけてダリアスの石像へと近づいた。


(ん!?この気配は……魔王様!?)

「よう……久しぶりだな」


(………あれ?人違い?見たことありませんけどあなた誰ですか?)


ケロッとした声で知らないとこのバカ石像は答えた。

………こいつ還付無きまでに破壊してやろうか?


「お前が俺をここに飛ばしたんだろ!」

(え?……あ、そうみたいですね。あなたここに居ちゃいけませんね)

「当たり前だ!」


何時この部屋がペシャンコになるかも分からないのにこんな所に居てたまるか!


(それじゃあさっさと……およ?ポッケが光ってますよ?)

「ん?本当だ」


ダリアスに言われてポッケから魔石を取り出した。


「(ジョニー!大丈夫か!?)」

「大丈夫だ!絶対こっから抜け出してお前等ん所行くから少し待っててくれ」

「(そうか……でも絶対無理をするなよ!?お前が居なくなったらこれからの事を決めるリーダーが居なくなるからな)」

「俺リーダーだったのかよ…」

「(この解放騒動の主犯が何言ってんだ)」

「そうかい…まあ俺が居なくたって傭兵でもやりゃいいじゃねぇか?」

「(バカ言うな…とにかくお前を捜すために美雪がすっ飛んで行ったから早く来てくれ)」

「ああ、絶対にお前等に会いに行くさ」


俺は通信を切りダリアスへと向き直る。

美雪に心配かけさせるわけにも行かないしさっさとここから脱出しよう。


[ゴゴゴゴゴゴゴゴ……]


「うぉっ!?」


またしても激しい揺れが起こりパラパラと石が落ちてきた。

………ヤバいヤバい早くダリアス使ってこっから逃げよう。


(お話終わりましたか?)

「ああオッケーだ。外に転送してくれ」

(はーい分かりました。それでは貴方を元の場所へ!)

「え……ちょ!そっちに…」

(ゴー!)


そっちに飛ばすんじゃ無いと言おうとしたが一瞬で光に包まれて俺は意識を失った。







[ドゴォォォォォン!]


「おわぁぁぁぁ!」


いきなりの爆発音で俺は体の痛みも忘れて飛び起きた。


驚いて周りを見回すとそこはレイナー博物館だった……戻ってきたのか。

そして目の前には砕けたダリアスの石像の破片が転がっていた。

砕け散ったということは既に解放されて……ああ、天井に穴が開いて空が見えてるよ……


「何だ今の爆発音は……大丈夫か翔君!」

「あ、レイナーさん」


レイナーさんが爆発音を聞きつけた様で慌ててこちらの方に走って来た。

そしてボロボロの俺と砕け散ったダリアスの像を交互に見た。


「すみません結構留守に……」

「? 何を言って……もしや頭でも打ちましたかな?」


キョトントした顔で俺の事を見るレイナーさん。

……間違った事言ってないよな?確かに俺は飛ばされた場所に数日間居た筈だ。


「……俺何日も此処に居ませんでしたよね?」

「本当に大丈夫か翔君?この博物館に来たのは今日だろう?」

「???」


……待て待て待て?これはどういう事だ!?俺は確かに数日間ダリアスにどこぞへと飛ばされて死ぬような思いをしてきた筈だ。

その証拠に俺はシーヴァを背負っているしボウガンも持っている。


……どういう事なんだ!?全く理解が出来ない。


「とにかくその怪我をどうにかしなくては……こちらへ来て下さい」

「あ、はい……」







「それにしても酷い怪我だ…何者かに襲撃されたのですか?」


俺はレイナーさんに連れられて俺にあてがわれた部屋に入った。

そしてレイナーさんはどこからか救急箱のような物を持ってきて治療してくれた。


「あ…何というか……」

「それに背負っているその大剣とボウガン…そんな物持っていましたかな?」


レイナーさんはそう言ってシーヴァとボウガンをしげしげと眺める。

興味津々って目をして見てるよ……博物館経営してる人だもんな。


「見ます?」

「おお!見せてくれるのか!」


俺はシーヴァとボウガンを机の上に置いた。

早速レイナーさんは懐から道具を取り出してシーヴァを見始めた。


「ふむ…これは見た所魔剣の一種、製作されたのはざっと二~三千年前と言った所ですかな……かなりの値打ち物です……名家の家宝レベルですな」

「はぁ……そうですか」


ぶっちゃけ使えればどんなガラクタ剣でも俺はいいので価値なんか聞いてもあまり興味はないんだが……

今それを言ったら確実にレイナーさんにキレられると思う。


「そしてこのボウガン……かなり懐かしい型を使っていますな」

「へ?……懐かしい?」


懐かしい型って……確かアヴィは最新って言ってたよな?それを懐かしいってどう言う事だ?


「多少改造されていますがこれは……約八十年前の型で間違いありませんな。いやしかしこれほど保存状態がいい物は珍しい」


そう言うとレイナーさんはボウガンを机の上に置いた。


「随分と翔君は古めかしい武器を好んで使っていますな……アンティークがお好きなのですかな?」


そう言ってレイナーさんはにっこりと笑ったが俺はそれどころでは無かった。


この型が八十年前の物だと?でもアヴィは確かに最新型だと言っていた。

……情報が遮断されていたのか?

いやあり得ない。アヴィは毎年変わると言っていたからな。

それにレイナーさんは俺がダリアスに飛ばされて数日経っていたというのに戻って来てみたら今日博物館に来たんだろうと言った……


「レイナーさん……」


俺は浮かび上がった一つの答えを胸に抱きながら質問をした。


「俺の目の前で壊れてた石像………どこで手に入れた?」

「ふむ……あの石像か」


レイナーさんは腕を組み顎をさすった。

しばらく待つと思い出したと言うような顔をして俺に話し始めた。


「私が若い頃の話です……どこの大陸だったかは忘れたが探検中に深い森の中で迷った事がありまして……数日間さまよい歩いてようやく森をでたと思ったら何と目の前は海で石橋が架かっていました。私はどこかの街に通じている事を願いつつその橋を渡りきるとそこに広がっていたのは神殿のような面影を残した廃墟でした……そこで見つけたのがあの石像という訳です」

「…………」


確定だ………

俺は信じられないが過去に行っていたらしい……


それならすべて辻褄が合う。それにもしも俺が風見翔だ!等と言っていたらエンディアスかディアトリアの問題解決時点で八十年経っても生きてる奴らが押し掛けてきていただろうからな……


「どうした翔君、遠い目をして?」

「あ…いえ何でも……少し疲れたから寝させて貰います」

「うむ、その傷だ……しっかり休みなさい」


そう言ってレイナーさんは立ち上がり部屋から出ていった。

出ていって少し経った後俺も椅子から立ち上がりベットへと向かった。


………まあ心配したって既に過ぎた事だろうしあいつらはそう簡単に死ぬ訳は無い。

縁があればどっかでまた会えるだろ。

そう思い俺は眠りについた……


だ、第三章………終わったぜ。


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