第三章 三十七話 ~真•魔神対魔王~
「お、お待ち下さい!」
「ん?」
不意に後ろから声が聞こえ振り返ってみるとそこには研究服を着た老人が立っていた。
……どっから出て来た?
「申し訳ありません、とんだご無礼を…本当に申し訳ありません」
「あの……爺さん、俺全く話が見えないんだけど?」
突然謝りだした老人に何故かと聞く俺。魔神出しといて申し訳ありませんってうやうやしく言われたらそりゃ少しは混乱するってものでしょ?
「貴方様のその角…そして能力を見させて貰いました………あなたは十中八九魔王様と何らかの関係があるお方でしょう?」
「! 何でそれを?」
「簡単でございます……私は昔魔王様に仕えていたことがありますので……そこに今倒れている魔神も魔王様のためにと作った代物……それと対決させてしまうなどと……愚かな事をしてしまいました」
この爺さん魔王軍に居たのか……って何歳だよこの爺さん!凄い長生きじゃねぇか!?
……ってか何この急展開、頭がついて行かないんですけど。
「お礼と言っては難ですが下で抗戦している貴方のお仲間は私達が責任を持って解放しました。今は橋を渡っている筈です」
「そうか……じゃあ下に居た美雪とシロウトは!?」
「下の階にいた初期型と彼も無事です」
「そうか……」
爺さんの言葉を聞いて一気に脱力した。
………これで一件落着か。
「私の実験もこれで「ヴァァァァァァ!」何だと!?」
「何っ!?」
突然地響きのような音…いや声がしたと同時に血だらけで倒れていた筈の魔神がゆっくりと起きあがった。
その目は燃えるような赤一色で不気味に輝いている。
「アァァァァァァァァァァ!」
そして天に向かって再び雄叫びを上げたか思うと魔神の体がどんどんと変わっていった。
頭からは巨大な二本の角が生え体はあっと言う間にハルク並の筋肉の巨人になった。
「アアア!¥#ガ$♭ゴ€♪ゲ%」
そして意味不明な鳴き声とも雄叫びともとれない声を発しながら無茶苦茶に攻撃を始めた。
口と目からからレーザーを発射し両手からはエネルギー弾を立て続けに投げまくっている。
しかし俺と爺さんを狙っている訳では無くただ滅茶苦茶に攻撃しているだけのようだ。
しかしその威力は尋常じゃない。俺の攻撃でビクともしなかった結界をまるでガラスのように軽々と粉砕してしまった。
「何だ!?一体アイツどうしたんだ!?」
「やはり人に神の力を与える事は無理だったのか……多分肉体に異常な程のダメージを受けた結果それに抵抗するために細胞が暴走を……今の奴は既に破壊神です、全てを破壊する事しか頭に無いでしょう」
「ハァ!?」
暴走って事か!?タチが悪いな!
「逃げましょう!この状態になら細胞が負荷に耐えられす一定時間経てば勝手に自壊します!それまで逃げるので[ドゴォン]ひぃっ!」
後ろにエネルギー弾が当たり爆風に怯える爺さん。
……しかしこのまま逃げたら戦えない奴らに被害が及ぶかもしれない……そうなったら厄介だ。ここで潰すか…
「爺さん、あんた先に逃げろ!俺はここでこの暴走した魔神を食い止める!」
「なっ……いくら何でも無理でございます!大陸一つを破壊し尽くすことの出来るほどの破壊力ですぞ!?」
「やってみなきゃ分かんないだろ!?アヴィ達の所まで行ってなるべく早くここから離れるように言ってくれ!」
「………分かりました。ご武運を!」
俺に何を言っても駄目だと思ったのかそう言うと足下に魔法陣を展開しその場から居なくなった。
「……さぁーて、遊ぼうぜ?」
俺はそう言って全身全霊を込めたメルトンを魔神の顔に叩き込んだ。
「[ドゴォン!]¥#¢ピ„€∞ゴ£!!!」
「ちゃんと喋れよ…ってか効いてねぇ……」
かなり魔力を溜めて放った筈なのだがかすり傷一つ付いていなかった。
しかし意識はこちらへ向けられたようだ。
「¥バ%#¢ガ¢€♪レノ£∞!!!」
[ドドドドドドドドド!]
「う、うぉぉぉぉぉ!?」
魔神はこちらに体を向けたと思うとまばゆいばかりの光を纏い視界全てが埋め尽くされる程のエネルギー弾とレーザーを放ってきた。
弾幕なんてレベルじゃない。これは既に壁だ。
「食らうかぁぁぁぁ!」
俺はすぐさま魔法障壁を何十も作り出した。
エネルギー弾が当たった瞬間に次々と壊れていくが壁以外の所と若干速度に差が出来僅かな隙間が出来た。
「せぇいっ!」
おれはその隙間をくぐり抜けて魔神本体へと突っ込む。
「%¥#$♪€¢∞£!!!」
俺が突っ込んでくると同時に近接戦闘に切り替えオーラのようなものを纏う魔神。
「意味ねぇよ!」
俺は魔眼を発動してその効果を消し去った。
そしてラリアットを食らわせようと突っ込んできた魔神を飛び越え振り向きざまに背中を切りつけた。
「#$♭¢€♪€£∞!」
「ちっ……」
しかし傷は皮膚を斬り裂いたぐらいで切り傷ほどしか斬れなかった。
どうやら身体強化をかけなくとも十分強いらしい。
「#$¢♭€♪£∞!」
「[ガキィ!]ぐっ!」
魔神はまだ空中にいる俺の体めがけ体をコマのように回転させ腕でなぎ払ってきた。
当然吹っ飛ばされる俺、それを追尾して俺の真上に飛び上がる魔神。
俺は空中で素早くスカーレットスパークを地面に放ちその反動で今の場所から離れた。
次の瞬間俺がいた場所にはクレーターが出来上がっていた。
あんなの食らったら見るも耐えない姿になってただろうな俺……
「くっ……まだまだぁ!」
「オォォォォォ!」
その後一進一退の攻防を繰り返す内に魔神の体に変化が現れ始めた。
体に赤いヒビが入り始めたのだ。しかしそれと比例するように魔神はどんどんと強くなっていった。
「はぁ……はぁ……一体何時になったら自壊するんだアイツ」
(自壊するのを待っていたは駄目だぞ主!)
「わかってるさ!でもどうやって攻める!?魔法は効かないし物理攻撃だって半端じゃ無い!」
(奴の腹を見て見ろ主)
「え?」
俺はシーヴァの言われた通りに魔神の腹部を見てみた……ヒビが奴の腹に
俺が先程突き刺した部分に集中している!?
(あそこに何か強力な攻撃でも叩き込めばヒビが一気に広がって倒せると思うのだが……)
「よし………やってみよう!」
俺はシーヴァを構え魔力を注ぎ込んだ。
そしてそのまま一気に魔神に向かって突っ込…
「¥#$♭€![ズガァァァァン!]」
「えっ!?うわぁぁぁ!」
俺が近寄ってきた瞬間魔神は地面に向かって拳を振り下ろした。
その瞬間飛び上がるほど地面が揺れ俺は空中へと投げ出された。
「$♭¢€∞£!!!」
「[バシィ!]あっ、シーヴァ!」
無防備な状態の俺を殴り飛ばそうとした一撃を何とか避けたがシーヴァに当たってしまい弾き飛ばされてしまった。
「♭$#%¥![ドスン]」
「あっ……クソっ!」
そして床に転がったシーヴァを拾おうと走ったが魔神が片足を上げ地面を踏んだ衝撃でシーヴァの所の床が崩れ下へと落ちていってしまった。
「$#¥¢♭!$#¢♭€∞!!」
武器を失った俺に勝ちを確信したのだろうか。ゆっくりとした足取りで一歩一歩こちらへと歩いて来た。
……やりたくはなかったが、やるしかないな。
俺は魔神の方に向き直り全身の魔力を腕と足にありったけ注ぎ込んだ。
「[バチッ!]ぐっ……」
収まりきらない膨大な魔力が腕と足から炎のように溢れだす。
これで第一段階完了だ。次に俺は今まで封印していた魔法を発動した。
「フレァァァァァ!」
「!?」
俺がフレアを唱えた瞬間空が明るく照らし出される。天には俺が巨大な太陽のような魔法がゆっくりと魔神に落ちてきている所だった。魔神は少し狼狽えるような動作をした後エネルギー弾やレーザーを打ち込む。しかし全くどこ吹く風といった感じでフレアは魔神の真上に落ちた。
しかし魔神は落ちてきたフレアを両手で止めた。しかしこんなのは予想通りだ。フレアは魔神に反撃されない為に出しただけだ。
「行くぞぉぁぁぁぁ!」
俺は腰を深く落とし凄まじい早さで魔神の腹めがけて突っ込んだ。
「!!?」
この技は一撃必殺の威力を持つ俺の物理技最強の正拳突きなのだが直進しか出来ない。なのでフレアを使い両手が塞がっているためただ真っ直ぐにしか突っ込んで来ない俺に対処が出来ないと言う訳…
「¥#$♭€£!!!」
「嘘ぉ!」
何と魔神は渾身の力でフレアを押し返した。
お前はゼル○の伝説のムジュラ仮面に出てくる巨人か!一人で四体分か!?
とにかくフレアを押し返した魔神は俺を叩き潰そうと拳を振り上げた。
……頼む!間に合ってくれぇぇぇ!
[ズシャァッ……]
「ゴ……ア……」
「……はぁ、はぁ」
俺の腕は魔神の腹に深々と食い込みそこから堰を切ったかのように血が溢れ出ていた。
「………これで終わりだ」
そう言って俺は魔神の腹の中にメルトンを放った。
[ズゴォォォォン!]
「うぐぉぉぉぉぉっ!?」
メルトンは内部で爆発し俺はその衝撃で吹っ飛んだ。
……突っ込んだ右腕が大火傷だ、まあ消滅しなかっただけマシだが。
それに技を使った反動でかなり体を痛めたようだ。それでも何とか立ち上がり魔神の方を見る。
「オ…ヴェ……[ビシッ!ビシビシッ]アァァァァァァ!!!」
腹部からの亀裂が体全体に広がっていく魔神、そして体全体が膨張し始め……ってアレ?これヤバくない?
「ガァァァァァァァァァァァ[ドゴォォォォォォォン!]」
「やっぱり[ガラガラガラ…]ぅおぇぇぇぇぇ」
魔神は大爆発を起こして粉々に弾け飛んだ。
その爆発の衝撃波は強力の一言だった。なんたって俺の居た場所をあっさりと破壊したのだから……
そして足場を無くした俺は真っ逆様に落ちていった。
「何で毎回落ちるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」