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第三章 三十五話 ~脱出計画実行!~

夜が明けて俺達は本部へと向けて出発した。そして日が暮れ夜になった頃になって俺達は目的地が見える所まで到着した。

それにしてもすごいシルエットだ。下半分は塀で囲まれているため分からないが上半分は良くテレビとかで見たどこかの大聖堂のような形だった。そしてその真ん中にはかなり巨大な塔。多分俺が登るのがあの塔だ……気が遠くなる。


「よし、作戦開始だ…私が指示した者は私に付いて来てくれ、他は合図があるまで待機、以上だ」


そう言うと何人かがアヴィの前に出た。俺も同じくアヴィの所へ行く。

アヴィは集まった全員の顔を確認すると本部へと向かった。

本部もこの前の施設と同じように高い塀があったがシロウトのイシトクで突破した。

……もう二度と見たくはなかったんだけど…こればかりは仕方がないか。



「よし、全員居るな…まずラフラとセラピスと事前に指示した者は動力室へ行ってここの施設の機能を止めてくれ、残った我々はその後正面の門を開ける……そしてジョニー、シロウト。君達はこの施設の最上階に上って脱出経路を確保してくれ…以上だ」


それだけ言うとアヴィは全員に地図を渡した。


「ジョニー、君にはもしもの為に通信用の魔石と…この連射式ボウガンを渡しておく、今年発売の最新式だ。まあ少し改造して威力を上げ君の魔力を使ってここのトリガー部分の魔石の能力に応じた魔法弾も撃てるようにしておいた君に合わせたから使いやすい筈だ」

「ありがとう」


俺はアヴィからボウガンを受け取った。この為に昨日色々と聞かれたのだろうか?

と言うかそれよりなぜシロウトが一緒に……確か昨日の話では俺一人だった筈


「あの、私はジョニーと共に行動するとは一言も…」

「それでは全員無事であることを祈る。それでは作戦開始!」


アヴィはシロウトの事を完全に無視して目的地へと向かって行ってしまった。

残されたのは唖然とした顔で立っているシロウトただ一人だった。

おれはシロウトに近づくと肩にポンと手を置いた。


「………行こう」

「そうだな……ああ…孤独の力が加速する………」


訳の分からない事を言ってゆっくりと歩き出すシロウト。その背からなにやらどよどよとしたオーラが出ていたのは錯覚だと思いたい。







俺とシロウトはイシトクロープを駆使して施設の壁を登って行った。

と言うかこれ施設じゃなくて絶対に元は聖堂か何かだろ。登ってる時に足かけた所を良く見たら顔が半分ほど無くなってた髭もじゃの爺さんだったし屋根に登ったらガーゴイルと思われる石像がズラリと並んでいて一瞬驚いた。そして屋根伝いに進んでいくとようやく屋根から突き出したように建っている中央塔にたどり着いた。監獄みたいに独立してないで一体化してるのか。

……標高百メートルはかるくありそうだな。またこっから落ちるネタだと芸が無いを通り越して本当に命が危ない。

そんな事を思いながらも俺は塔への入り口を探した…が、どうやら入り口はこの施設の中にあるようでこの壁をぶち破るしか中に入る方法はありそうも無い…だがそれをすると進入者だということがバレて他の全員に迷惑がかかるし敵が一気にここに押し寄せて来るだろう。

戦闘は出来るだけ避けたい。量産型美雪が攻めて来でもしたら今度こそ命が危ない。


「どうやって入ろうか……」

「ジョニー、あの窓なんてどうだ?」

「え?」


シロウトが指さした所は塔の少し上にある何か教会とかにある絵みたいなのが書かれたガラス窓…窓絵だっけ?

とにかくそれを指さしていた。


「ガラスを割っても音は出るだろ?」

「ジョニー君の火炎魔法でくぐれるぐらいの穴を開けて入れば?」

「そうか!それで行こう!」


俺とシロウトは再びイシトクロープを使い窓の所まで登ると黒炎で窓の一部を溶かすとそれで出来た穴から中に入り込んだ。


「螺旋階段か…シロウト大丈夫だ。すぐ下に足場がある」


まず顔だけ出して周りの様子を伺うと造りはシロウトの所を大きくしたような感じだった。つまりは竹の一節一節のように分かれた階層を壁づたいの螺旋階段で繋いでいるような構造だ。つまり俺のすぐ真下に上に繋がる階段があった。


「そうか…敵は?」

「見た所居ないな、巡回してる奴も居ない」


螺旋階段と下の階を見てみるが人影一つ無い。一応は安全なようだ。

俺とシロウトは中へと進入すると次の階へ足音を立てないように上り始めた。


数分後、俺達が進入した階の階段を上りきり俺は次の階を慎重に見渡した。

…数体の外にあったようなずんぐりした鎧を着た姿の石像が置かれているだけの殺風景な床、さらに上の階に通じる螺旋階段、人影は一つも無い。

………良し、大丈夫だな。


「よし、この階に以上は無し。それじゃあ次の階へ[ビーゥ!ビーゥ!ビーゥ!]ホワッツ!?」


安心して上ろうとした瞬間にブザーのようなけたたましい音が鳴り響く。


[動力室停止、非常事態発生、緊急警備体制をとります]


妙に機械的な…ボーカロイドみたいな声が響きわたる。

動力室停止って事は…ラフラ達がやったんだな。所で緊急警備体制って一体……もしかして


[キュピーン!]


「ですよねー!」


置いてあった石像が一気に動き出したね、うん予想通り……悲しいぐらいに。


「ラグリアスベィター!」

「ジエムトーサン!」

「ヴェヴェルジアサンマルター!」

「バルベオグリノンガラーム!」

「ソノムライエカブ!」


GM倒産…何で知ってんだ?ヴェヴェルジア産丸太って何だよ……空耳って怖いな本当に。

やっと聞き取れる訳分かんない奴と会った途端これだよ……


……って空耳を聞いてる場合じゃ無かった!この場からさっさと逃げ出さなくては!


「シロウト!一気に駆け抜けるぞ」

「わ、分かった!」


俺とシロウトは敵の動く石像軍団をガン無視こいつら結構ずんぐりしたボディだから遅い筈……って早えぇぇ!ってかこいつら下半身動いてねぇって言うか若干浮いてる!?ホバーだ!こいつら機動性を確保するためホバーを使ってやがる!こいつらドムか、ドムなのか?いや一応人に近いからホンダム!?いやでもホンダムももう殆ど機械じゃね……って何を考えてるんだ俺は!


「来てるぞジョニー君!」

「え?うおぁぁぁ!?」


振り返ると俺のすぐ後ろまで来ていたホバー石像の一体が俺の脳天めがけて痛恨の一撃を放とうとしている所だった。


「う、うおぉぉぉぉ!?」


俺は慌てて手からメルトンを発射し石像を吹き飛ばした。

そして俺とシロウトは何とか階段までたどり着くと一気に駆け上がった。下のホバー石像達は大きさの為上へは上がって来れないようだ。ハハッ、ザマー見…


[ドゴォォォォン!]


「嘘ぉ!」


突然横から何か飛んで来て頭の上で爆発した。驚いて横を見てみるとそこには先程外で見た髭もじゃの爺さん像が六体空中に浮いていた。

何て事だ。まさかあの爺さん像が空を飛べるハイスペック石像だったなんて……


そしてその爺さん像は手に持っていた石造りであるはずの本を開き魔法を詠唱して次々と攻撃して来た。


「「「「「「¥#$♭€#¢€∞…」」」」」」

「あークソっ!これでも食らえ!」


俺も反撃とばかりに魔弾やメルトンを放ったのだがヒョイヒョイと避けられてしまう。隕石、雷、スカーレットスパークも放ってみたが全く効かない……何このバケモノ石像。


(主!あいつらは主の魔力に反応して避けてるみたいだ!物理攻撃で殺るしか無いよ?)

「何とかしてと言われても…そうだボウガン!」


シーヴァに言われた俺は背負っていたボウガンを構え石像に向かって放った。


「※〒&$♭€¥[バスンッ!]……」


俺の放った矢は石像の腹部に当たり上半身と下半身とで真っ二つに割れて落ちていった。

……ボウガンてこんなに威力高かったっけ……アヴィの改造恐るべし。


「オラオラオラァ!」


敵が避ける事をしないので今度はずっと俺のターン状態で全ての爺さん石像を撃ち落とした。


「ふぅ……これで安心して」

「カミヌテバレンタ!」

「…でも無ぁい!」


何とホバー石像軍団が無理矢理手すりを破壊して進んで来ていた。


「いやでも大丈夫、あの巨体だと俺の魔法を避けようにも避けられないだろ!」

「ルマニエスアバン!メルトゥーワ!」

「行くぜメルトン!」

「オルバレ[バコォン]アーーーーーーーーーーーッ!」

「よし!」


俺は奴の体ではなく足下の階段を吹き飛ばした。足場が無くてはホバーと言えど落ちるしか無い。

そのまま俺に突っ込んで来たホバー石像数体は真っ逆さまに落ちていった。


後ろから来たホバー石像も足場が無い為来るに来れないようだ。


「よし、一気に上りきろうシロウト」「そうだな」







「……あら?」

「どうしたジョニー君」


俺は次の階を見ると拍子抜けしてしまった。今度はどんな敵がいるのかと思いきや何も居なかった。あるのは謎の黒い球体だけ。

これは逆に不自然と思って何か仕掛けがあるのかとそれにに矢を放ってみたりしたが特に何も無かった。


「大丈夫……みたいだな」

「とりあえず慎重に行こう」

「ああ……」


俺達は辺りを警戒しながら次の階の螺旋階段へと進んだ。

よーし、もうすぐ階だ…


[プシュー……]


アッハハ……何だろう今の音?まるで何かの機械の扉がパカッと開いたような音だ。

この悪い予感がただの杞憂でありますように…お願いだ。マジで杞憂であってくれ……


「「「対象を抹消します」」」

「…………」


オーウ、ヤバイネコリャ…リョウサンガタノミユキガイチ、ニ、サン…タクサンイルヨ?


……って気をしっかり持て俺!ここで諦めたら人生終了だ!

とにかく最悪の事態だ。量産型の美雪…性別は違うっぽいが纏ってるオーラが同じだから多分量産型で間違い無いだろう。

あの球体がオープンしてる…多分あの中から出て来たんだな。全く何て奴を護衛に付けてんだよ。

そして量産型美雪は俺とシロウトに向かって無機質な表情を向けると戦闘態勢に入った。

……あー勝てる気がしないんだが。


「「「進入者は二体、これより抹消を[ガッシャーン!]!?」」」


そして三体がこちらに攻撃しようとした時壁にあったガラス窓が砕け誰かが入って来た。


「「新たな進入し[ドゴッ!]!!?」」


いきなり入って来た人影は三人の内二人を入って来た勢いで蹴り飛ばした。その反動で再び空中に飛び上がると俺達の前に着地し俺達の方を見て笑った。


「ふぅ…お兄ちゃん大丈夫?」

「え……美雪!?」


何と入って来たのは美雪だった……ここ俺良く分からないけど相当な高さだよな?どうやってここまで上ってきたんだ!?


「お兄ちゃんがピンチだという事を感じ取って大急ぎで来たんだよ?あ、それとみんなはもう橋の前に移動して防衛中だから急いで!……ってアヴィが言ってたよ?」

「そうか」


もう全員移動済みか。なら早く行かなくちゃな……

でも本当に美雪はどうやって此処に…もしかして第二形態になって飛んできたとかか……有り得るな。


「一名追加…計三名の進入を確認、抹消を再会します」

「「再会します」」


それに全く動じることなく変わらない顔でこちらを見ている美雪量産型。蹴り飛ばされた二体もすぐに起きあがり蹴り飛ばされなかった一体の後ろに移動した。

…こいつらも心が壊れてるんだろうか、最初に見た時の美雪にそっくりだ。


「それじゃあ美雪は同種同士仲良く相手するからお兄ちゃんは早く行って」

「え……だが」

「美雪は大丈夫!絶対に負けたりしないから!」

「………分かった、死ぬなよ……行くぞシロウト」

「お、応!」


俺はシロウトを連れて上に続く階段の方へ走った。


「「「抹し「貴方達の相手は美雪だよ!」…抹消!」」」


俺達が階段を上る間下からは凄まじい爆発音や何かが崩れる音がひっきりなしに聞こえて来た。

しかし俺達が行ってもどうにもならないのは分かりきっている。

それなら俺達は一刻も早くやるべきことをやり美雪を連れて脱出する、それだけだ。







「これが最後の階か……」

「凄いな…」


次の階に行くとそこには信じられない程巨大な鐘が天井から吊り下がっていた。

って見とれている場合じゃ無い。早く上に上がらなくては……。


「よし、登ろう」


俺とシロウトはわき目もふらずに次の階段へと走り螺旋階段を駆け上がった。

何かトラップでも仕掛けられているのかと思ったが何も起こらず最上階へと到着した。


「うぉっ…風強っ!」


いきなり強い風が吹きバランスを崩しそうになるが何とか堪えた。

この風は…海から吹いているのか、相当な風だな。


「あ、スイッチはあれか……」


俺は中心にある小さな石碑のような所に歩いていった。

石碑には文字が書かれているようだがかすれていて読めない。しかしその石碑の中心の丸く出っ張った石を良く見てみるとどうやらスイッチのような物らしかった。多分これが仕掛けを作動させるスイッチだろう。


「せい……やっ!」


[ガコン!]


俺はそれを力を込めて押す、すると足下で地鳴りがした。

何事かと思った次の瞬間


[ゴオォォォウゥゥゥン!ゴオォォォォウゥゥゥゥゥン!]


「耳がぁぁぁぁ!?」


突然足下から爆音が聞こえて来て思わず耳を塞いだ。

何だこれ……鐘を鳴らすスイッチだったのかよ!


[ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………]


「な、何だ何だぁ!?」


鐘の音が鳴り終わったと思ったら今度は不思議な音、俺とシロウトは音のした方に走って行き塔の下を見た、すると海の中から石で出来た橋が浮き上がって来る所だった。

鐘が鳴ってから橋が浮き上がって来る仕掛けだったのか……あ~耳が痛い。鼓膜破けなかっただけ儲けもんか。


とにかくさっさと降りてこの施設から脱出しよう。

もう仕事は終えたし長居は無用だ。

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