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4.友人達と私



「私は断然、フレデリク様派なんだよな〜」


 机に頬杖をついてうっとりとした表情で空を見つめる我が友人、レベッカ・アスラン。

彼女の栗色の長い髪が風にサラサラと揺れている。


「え、レベッカ…俺じゃないの?」


きょとんと首を傾げる長身の男の子。赤い髪がトレードマークのアラン・ケーリオ。

 二人とも私のクラスメイトだ。そしてレベッカとアランは婚約者同士。なんだかんだで二人は相思相愛だ。


「もちろん、私はアラン一筋だけど!レオン様とフレデリク様のどちらかを選ぶならフレデリク様よ〜」


「ふーん」


一筋と言われて嬉しいけれど、他の男の人の名前を出されてムスッとしている複雑なアラン。そんなアランが可愛いと言わんばかりに頭を撫でるレベッカ。

うん、なんだか二人とも可愛い。目の保養になる。


「でもさ、リリアーヌはもうそろそろ本気で結婚相手を探した方がいいんじゃない?結婚できなかったら本気で領地で生活する気?」


「そうだぞ、早くしないと良い物件は無くなるぞ?」


「わかってるわよ…てゆうか、物件っていう言い方は良くないわよアラン」


二人はいつも私のことを気にかけてくれる。

でも私の中では、レオン様以外に結婚したい男性はなかなか見つけられないのである。


「レオン様に一途もいいけど、ほとほどにね?」


レベッカはそう言って、心配そうに眉を下げる。

心配してくれる友達がいるって、幸せなことだなぁ。


「ふふふ。二人ともいつもありがとう」


なんだか嬉しくなってきて満面の笑みを向けると、「もう…リリアーヌは仕方がないなぁ」と二人は困った顔をして笑った。



「え…婚約者いないの…?」


 ふいに聞こえてきた呟きのような小さい声の方へ、反射的に顔を向けた。


声の主は、私の隣の席に座る男子生徒。

天然パーマのようなふわふわな髪で、目が隠れていて顔の半分が見えない。でも綺麗な濃緑の髪色を持つ彼、エリク・ブラシェールだ。

エリクは身分を名乗らないからよくわからないが、見た目に反して所作などは完璧なので、きっとどこかの高貴な身分の方だと思う。


ただこの学園、身分は関係なく学生生活においては皆平等…という学風なので、クラスメイトもエリクの身分は気にしていない。そんな学園が私は好きだ。


 エリクとは隣の席なのでよく会話はするけれど…まさか婚約者が居ない部分につっこまれるとは思わなかった。


「うん、いないよ。私、おてんばで我が儘令嬢だから誰も求婚してこないし。政略結婚を目的の人もいるだろうけど、兄の婚約者が決まってない以上は私に婚約を申し込むこともしにくいだろうし…。それに私はレオン様にずっと片想いしてるから」


隣のエリクにきっぱりと言い放つと、エリクはポカーンと口を開けて固まった。

…目が髪に隠れて見えないから、表情がいまいち掴めない。


「リリアーヌさんは我が儘じゃないと思う…婚約者がいないことに驚いた…」


どうやら彼は驚いた表情をしていたらしい。


「エリク、私を褒めても何も出ないわよ?」


クスクス笑うと、エリクは顔を赤くしてバッと俯いてしまった。その俯いた先には、分厚い植物図鑑がある。


「あ、そうだエリク!また領地に見たことない植物を見つけたの!教えてほしいんだけど」


「ああ…いいよ、どれだろう」


エリクはいつも植物図鑑を読んでいて、とても詳しい。

そんな彼に植物について教えてもらうため、領地で知らない植物を見つけたら少し採取し、鞄にこっそり入れて学園に持ってきている。

今日もいつものように鞄から植物を出し、エリクに見せる。


「ああ、これはレモンバームだね。リラックス効果があって入浴剤にもできるし、お茶やお菓子に入れて香りを楽しむこともできるよ」


「あ!本当だわ、良い匂いがする!」


「しかもこれは育てやすくて…」と植物のことになると楽しそうに話し出すエリクにつられ、植物図鑑を覗き見る私。

エリクの話はとても身になるので、ここで学んだことを領民にも伝えることがよくある。


「また始まったわ、この二人…本当にいつも楽しそうね」


「…いっそのことリリアーヌの婚約者はエリクで良いんじゃないか?」


 レベッカとアランにそんなことを言われているとは知らず、私とエリクは植物の世界に没頭していた。

学園に入学して仲の良い友達ができ、日々を私らしく自由に謳歌している。本当に有難い。



「そうだ、来週は新入生歓迎パーティーよ!アラン、エスコートよろしくね!」


レベッカの声に私はハッと現実世界に戻された。隣のエリクも私と同じようにレベッカを見ている。


そうだった…来週は新入生を歓迎する、この学園主催のパーティーだ。全学年の生徒が出席する大規模パーティー。

 私をエスコートしてくれるのは、もちろん兄のフレデリクだ。

そしてきっと兄は銀髪に映える青系の服を選ぶだろうから、私もそれに合わせて青系のドレスを選んである。


 パーティーは苦手なのでいつものらりくらりと回避してきたけれど、今回ばかりは参加しなければならない。


そしてどんなに嫌でも、レオン様とアンナ様の仲睦まじい姿を見なければならない。パーティーで二人の姿を見るのは、フレデリクの十歳の誕生日パーティー以来となる。


普段より着飾ってキラキラと王子様のように輝くかっこいいレオン様が見れるからこそ、アンナ様に嫉妬してしまうし、恋のダメージは倍増する。


行きたくないな…と思い、私は静かに息を吐いた。




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