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17.サンブール街でデート④



ーーー日が暮れてきた。


 サンブール街の感謝祭のラストは、大広間にて楽器隊の演奏で締めくくりとなる。

大広間に集まった住民は、音楽に合わせて各々好きなように踊って良し。歌っても良し。

とにかく笑顔で楽しく締めくくる、それがサンブール街の感謝祭だ。


私とレオン様は大広間の隅のベンチに腰掛け、その時を待っていた。


「リリアーヌ、見放された土地を実際に見て…どう思った?」


真剣な表情で私を見つめるレオン様に、周囲の賑やかな雰囲気とは別の世界にいるような気持ちにさせられる。


「そうですね…想像していたよりも暑く、荒れた土地でした」


見放された土地を思い出し、またジワリと涙の膜が張る。それでも、私はあの日から自分なりにあの土地でやれることを考えてきた。


「まず、あの土地を王宮の騎士団の訓練所にするというのはどうでしょう。訓練所として提供することを条件に、土地税を免除してもらえれば、あの土地の住民の負担が減ります」


「なるほどな…しかし、我々には王宮との繋がりがない。その条件を国王がすんなり呑んでくれるとは思えないな…」


目を伏せて呟くレオン様に、私もシュンと肩を落とした。

でも私の考えはこれだけじゃない。


「訓練所の件は無しにしたとしても、井戸水を掘り起こす工事、住民の家の建設…これらは各地方で職を探している者に声をかけてもいいのではないでしょうか。とにかく人手が必要になるので、我々の領地の領民達だけでなんとかするのは無理だと思います」


「確かにそれはそうだが…建設の費用、人件費はどのように考える?バシュレ家とカバネル家が出せる費用も限られている」


「…そこなんですが、個人的にチャリティーをしてみようかと思っています。微力なのはわかっているのですが」


「…え?」


目を丸くしてポカーンと口を開けこちらを見つめるレオン様は、なんだか無防備な子供みたいでとてつもなく可愛い。可愛すぎて「ふふ、」と小さく笑ってしまった。


「リリアーヌ、それはどういう…」


「学園内で、”見放された土地募金“をしてみようかなって。きっと見放された土地の現状を知れば、協力してくれる人達はいると思うんです。たとえ募金をしてくれなくても、見放された土地のことを知って見放さないでほしいんです。だから私が学園の皆に声をかけてみようかなと思っています!」


今の私にやれることは、これくらいしかない。

お父様やお兄様みたいに研究ができるわけじゃない。

レオン様みたいに頭の回転が速いタイプでもない。


唖然とした顔のレオン様に、私は満面の笑みを向けた。


「私、信じてます。見放された土地が住みやすい土地に変わることを」


「リリアーヌ…」


「一緒に頑張りましょう!レオン様は一人じゃないです!」


そう言って、私はレオン様の右手を両手でギュッと握った。


「いつも励ましてくれて…ありがとう、リリアーヌ」


優しい赤茶色の瞳を細め、レオン様はとても穏やかに微笑んだ。そして私の手をしっかりと握り返してくれた。


 その時、ちょうどいいタイミングで大広間の楽器隊の演奏が始まった。

私は手を繋いだままレオン様を引っ張り、大広間の中心部へ向かった。

歌を歌う人、曲に合わせて踊る人、ひたすら友達と笑い合う人…その中で、私達は向き合ってステップを踏んだ。


貴族の習うダンスとはかけ離れた、めちゃくちゃなステップ。

たまにクルッと回ってみたり足と一緒に両手をパタパタと動かしてみせると、レオン様は声を出して笑ってくれた。


「レオン様、楽しいですね!」


「はははっ!笑いすぎて涙が出そうだ。本当に楽しい。本当にありがとう、リリアーヌ」


そう言って、レオン様もめちゃくちゃなステップを披露した。それを見てまた二人で涙が出るほど笑った。



 レオン様との初めてのデートは、楽しい思い出でいっぱいだった。レオン様と二人で笑い合える日々がずっとずっと続けばいいのに、って思ってしまった。




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