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11.ノエル様と私




「仲裁に入ってくださってありがとうございました。私、リリアーヌ・バシュレと申します。この学園の一年生です」


「バシュレ家…ということは、君はフレデリクの妹か〜。レオンと婚約すると厄介なご令嬢達がついてきて大変だね。でも、暴力はいけないよ」


 のほほん、と緩く笑うノエルと呼ばれる彼は、遠い田舎の辺境伯の子息らしい。ノエル様も丁寧に自己紹介をしてくれた。


なんと、レオン様やフレデリクお兄様と同学年でクラスメイトなんだとか。

私とレオン様の婚約についても、噂を耳にしていたらしい。



「そもそもノエル様はどうして裏庭に…?」


「ああ、実は裏庭に僕の畑があってね。今日は水やりと雑草を抜きに来たんだ。まさかご令嬢達の喧嘩に遭遇するとは思わなくて…驚いたなぁ」


ふふふ…と肩を揺らすノエル様は全く驚いてなさそうで、私はシラけた目を向けてしまう。

そんな私を見て、またさらに肩を揺らすノエル様。


 笑いの波が落ち着いた所で「少し畑を見て行くかい?」と誘われたので、スカートについた砂を手で叩き落としながらノエル様に着いていく。


 すると、裏庭の端の一角に畑があった。

こじんまりとした畑にはトマト、きゅうり、じゃがいも…色々な種類の野菜の苗が綺麗に手入れされて並んでいた。


「領民の生活が知りたくて、学園に無理を言って畑を作ってもらったんだ。おかげで野菜を育てることの大変さがわかったよ」


 単純に、すごいと思った。

領民のことを考え、身をもって勉強しているその真っ直ぐな姿に、私は感銘を受けた。


「私も領地の親友のお手伝いで畑仕事をすることがあるので、育てる大変さはわかります。だからこそ食べ物は美味しく、残さず食べないといけないですよね」


ノエル様は目を見開いてこちらを見つめる。

その姿が小動物のようで、なんだか可愛らしい。


「そうなんだね、リリアーヌ嬢は貴族らしからぬ…変わった令嬢だね。でも僕は素敵だと思うよ」


変わった令嬢と言われても全く嫌味に聞こえないのは…この人の優しい話し方のせいだろうか。



「身分なんて本当は関係ない。美味しい野菜を育てて僕達のような貴族に食べさせてくれる領民達には、本当に頭が下がる思いだ」


 そう言ってノエル様は目を細めた。

ノエル様は貴族だけど、貴族らしくない人だ。

でもなんだか私自身を見ているかのような気持ちになり、嬉しくなる。


「本当にその通りだと思います、激しく同意致します」


「ふふふ、僕達は考え方が似ているんだね。親友と出会った気分だ。嬉しいなぁ」


私達は微笑み合い、二人で仲良く雑草抜きを始めた。ノエル様はさらに嬉しそうに笑った。


「手伝ってくれて、ありがとう。またこうして畑に遊びにきて僕の話し相手になってね」


優しく声をかけてくれるノエル様に、私も嬉しくなってニコッと微笑み頷いた。



 これが、私とノエル様の出会いだった。


この時の私は、本当のノエル様を全く知らなかった…。







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