四月二十三日 理由
何も出来へん自分が大嫌いやった。今でも無力さを感じて全部投げ出したくなる。強くなったからって人に暴力を振るう訳でも無いし、そもそも普通に生活しとる人らを傷付ける気は無い。
この虚しさが消えることは一生無い。何かを羨み続け、憧れ続け、自分の無力さを痛感し続けるんや。
「いっそのこと地球滅んだ方がええんちゃう?」
「……それも悪く無いな」
「先生はさ、そこまでして人を救う意味ってあると思う?」
「無い」
一秒の間も無いほどの即答。想像してた通り。
「年末に隕石が降って来るのはわしらが決めたことじゃない。決まったことやん?」
「せやな」
「それを受け入れるのも悪くないやろ。最期の瞬間くらいは全世界の人が手を繋いで平和的に終われるやろうし」
「それは理想論やろ。どうせ最期の瞬間まで醜く何かのせいにし続けるで」
「なおさら滅んだ方が良いな」
結果論でしか正論を言えない馬鹿どもは滅んだ方が良いに違いない。
「でも、それじゃお前の理念に反するよな」
「わしの理念?」
「何で風紀委員長やってんのか思い出してみろや。お前が俺にいうたんやろ?」
わしが風紀委員長になったのは、あの子を助けてあげたかったから。それと——
「この学校に居る限り、みんなが笑い合って涙を流す奴が出てこーへんようにするため……」
「せめてこの学校の奴らを守ってやらなお前は嘘吐きやで? この学校に居らん奴のことは知らんけど。それでも悲しむ奴はおるやろなぁ」
「……しゃーない。言うたもんは守らな風紀委員として面目立たんわな」
桜が完全に散って新緑深まるこの季節。風紀委員長になったあの日の事を先生が覚えてるのはちょっと意外やったな。でも、わしの真剣な想いをちゃんと聞いてくれてたのすげえ嬉しい。普段ダラダラゴロゴロしてるくせにそう言うところしっかりしてるんよな。