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何も変わらぬ明日を生きる  作者: v私立桜咲学園文芸部
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三月三十一日 鍋

 物事全てに意味があるって先生は言うた。わしはそれに対して賛成はせえへん。無駄な行動と言うものは絶対に存在する。全て理由があるし、説明が付くって自信満々に誇る先生。じゃあ——


「掃除機ぶっ壊れててさぁ。吸うたと思ったゴミそのまま後ろから出ててんけどこれにも意味あるん?」


「なに意味無い事しとんねん真面目にやれや」


 視聴覚室の掃除中。いつも配信で使わせて貰ってるから月に何度か掃除をする事になっとる。

 足元には先生が持って来た三角形の自動掃除機が小さな埃を吸い取ってる。


「ほら早よしろ」


 と言いながらゴミ袋に拾ったゴミを入れている先生。ゴミ袋破れてて移動する度にゴミが出とるんよな。


「ポンコツしか居らんのか」


 もう嫌や掃除嫌い帰りたい。でも、ここ使えんくなったら配信出来んくなるからやっぱり頑張ろ。


「頑張ってますか?」


 入り口には校長先生が暖かな目でこっちを見ていた。この学校の一番偉い先生や。しっかり挨拶しとかな。


「おぉ校長やんけ。頑張っとるで」


「そうかそうか。休みの日やのにご苦労様ですねぇ。関心関心」


「いつも使わせてくれてありがとうな!」


「良いんですよ。生徒は伸び伸びと目標に向かって成長して欲しいですからね」


 どこまでも良い人や。この人になんかあったらわしが全力で助けたろ。


「ほら、先生もお礼言うとかな」


「いつもありがとうやで」


「青原先生もね、生徒の為に頑張ってる姿をよく見かけますし。生徒からの評価も高いのでね、是非そのまま頑張って頂きたいです!」


「うぃー」


「じゃあそろそろ失礼しますね」


 先生の評価が高いのは先生が好き勝手やっとるからや。気まぐれで自習にするし、HRダルイからって無しにしたり。課題作るのめんどい言うて課題出さんし。それに、決して生徒の為に頑張っとる訳でも無い。生徒と同じ目線で話すから寄り添ってるように見えるだけ。


「なに? お前らカラオケ行くん?」


「せやけど」


「先生も行くからちょっと待っとれ。車出したろ」


「マジで!? やったっ!!!」


 みたいな感じで。でも不思議なことに先生の授業のテストは赤点を取るやつが一人も居らん。何でか知らんけど。


「なぁ先生」


「ん?」


「掃除終わったら次の配信ネタ考えよか」


「いや、帰って鍋食うねん。まだ具が余っとるから」


「わしは嫌やで。飽きた」


「お前も来るんや」


 緩いからこそ、同じ目線で話してくれるからこそ。距離も縮まるし、信頼関係も築かれて行くもんや。その信頼に応えようと他の子らが頑張っとるのも知っとるけどな。


「わしら二人じゃ食い切れんて。校長呼ぼうぜ」


「それもそや。校長にも食わしたろ」


 校長室にダッシュで向かった先生。アホや、校長来るわけないやん。家の用事とか学校のしごともあるんやから。


「行くぞ」


「え?」


「せっかくのお誘いですからね。嬉しいですねぇ。青原先生と誇るべきうちに生徒である幸永くんと一緒にご飯が食べられるなんて。長い教師人生の中で嬉しいことは山ほどありましたけど、今が1番幸せかも知れないですねぇ」


「泣くほどのことちゃうで、ほら行こや」


「はいはい」


「お邪魔しますね」


 まぁ、たまには他の人との飯も悪くないかな。

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