なろうがなろうテンプレであふれている理由の一つはクリエイティブ・カーブとコストの安さで説明できそう
さて、私は”模倣が容易でユーザーから支持されやすい定石というのは楽しさを簡単に押さえられるコンテンツとして優秀な証”というエッセイを以前に投稿していたりします。
それもあるとは思うのですが、ランキングがテンプレに占拠されつつ、テンプレ批判がなくならない理由はクリエイティブ・スイッチ――企画力を解き放つ天才の習慣』(アレン・ガネット/千葉敏生訳)に書かれている創造曲線やエベレット・M・ロジャース教授が提唱したイノベーション普及に関する理論であるイノベーター理論が分かりやすそうです。
基本的に、流行や人気に関して、人間の心理には一見すると相矛盾するふたつが混在しているようです。
人間はなじみのものを求めつつも、そこに目新しさも求めるのですね。
で、このふたつの相反するものを、馴染み深さと好感度の関係を描くベル型カーブのグラフに図示したものが、創造曲線なわけです。
人間はなにかに接すれば接するほど、そのものをどんどん好きになっていくが、やがて好意の度合いは頂点を迎えます。
これを簡単に言えば”飽きる”ということですね。
で、飽きた状態となると、そのあとは接すれば接するほど嫌気が差していくわけです。
作品をある程度ヒットさせるには、人々にとって適度になじみ深く、しかも適度に目新しいものをつくらなければならないことになりますが、なろうではそれがいわゆるテンプレ展開なわけですね。
なろうではVRMMOや歴史ジャンルの信長ものが飽きられているコンテンツではないかなと思います。
食品の世界ではロングセラーとなる定番商品が多いですが、それらは基本的に親しみやすい味わいで、そこまで高価なものではない商品が多いです。
その一方で、パッケージや細かな味付けなどは時代に応じて変化させ、新鮮さも打ち出しているものも多いようですね。
例を挙げるならコンビニのおにぎりやサンドイッチ、中華まん、カレールーやレトルトカレー、インスタントラーメン、アイスクリームなどは人気で定番のロングセラー商品が多いように思います。
で、話をなろうテンプレがランキングを独占しているのに、なぜそれに批判的な人の声も結構出てくるのかといえばイノベーター理論のイノベーターやアーリーアダプターとアーリーマジョリティやレイト・マジョリティーの差なのかなと。
まあ、流行に興味がないラガードである可能性も否定できませんが。
で、単純に早く読み始めて飽きてしまった人と、まだ来ていない人の差かなと。
で、もう一つなろうではテンプレがなぜ支配的なのかといえば、無料で読める、つまりコストが安いからだと思います。
コストが安いと色々試せますが、結局は定番が一番安心できるとテンプレに戻って行ってしまうのでしょう。
商業ラノベではSAOなど電撃文庫の売り上げ部数の減少はかなりやばいですが、なろうからの書籍化作品も作品そのもの売り上げ部数は減少気味なようです。
発売タイトル数の多さで全体の売り上げ部数は減っていないように見えますし、昨年は転生したらスライムだった件が大ヒットしましたからまだ安泰なように見えますけどね。
まあそれはともかく、なろうにおいてある程度のヒット作を作るには読者になじみ深いがちょっと独自性があるように思えるという、塩梅が大事なのだと思います。