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ルーレット回して運任せに生き抜きます!  作者: 沢田真
2章 準備を始めていきましょう!
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第17話 実力差

 「はぁ……ほんとついてないよな。」

 「まさか魔物を買い取って貰えないとは思いませんでしたね~」


 おかげで想定よりも収入が少ない。


 店先では肉の価格が下落しているため一般人には嬉しいばかりだろう。だが、和樹達のようにギルドに所属し金銭を得ている者からすれば収入が減り懐が寒くなるばかりだ。


 「とりあえず明日も休まずに依頼を受ける必要がありますね~」

 「そんなに毎日……大変すぎまし。」

 「こればかりは仕方ないからな……」


 3人は行く先の不安さには憂鬱感しかない。


 「で、私達これからどうするんです?」


 行く当てもなくぶらついてるだけの状態にフレミーが疑問を呈する。


 「俺はこのまま帰るつもりだったけど。他に行く場所もないからな。」

 「そうですよね。ヘイムさんもそれでいいですか?」


 そう言ってフレミーは和樹を見ていた顔をヘイムの方へと向ける。


 「折角ですのでアイリーンが話してた調査隊を見に行ってみませんか?目標として一度見ておくのも良いと思いまし。」


 調査隊、それは和樹達3人がギルドを出る直前に聞いた話だ。


 何でも、今回街を襲った原因を調べるべく調査隊が結成され街の外に異常がないか確認をするのだとか。その中には最強と言われるチームも入っていて丁度これから出発するところなのだ。


 「……確かにそういうのも良いのかもな。時間もあるしまだ間に合いそうだし行ってみるか。フレミーもそれで良いか?」

 「私も構いませんよ~」


 そうと決まると3人は門のある方に足を進めていった。


 門に着くとそこは多くの街の人で人垣が形成され大混雑していた。


 「結構集まってんな」

 「私もここまでとは思っておりませんでした」


 どうやら今回の調査には多くの人が興味を持っているようだ。自分たちの住む場所に関わることなのだからそうなる方が自然なのかもしれない。


 まあ、とにかく、こういうことは珍しいことだった。


 人垣で「見えないです~」と言いながらぴょこぴょことしていたフレミーは隙間を縫って前の方へと進んでいった。


 「あ、おい、フレミー。ヘイム、追うぞ」

 「承知致しました」


 和樹とヘイムも人混みを掻き分け、フレミーの後を追っていく。


 「追いついた……」


 ごみごみとした間を通ってきて和樹の息は絶え絶えだ。こういう密集した場所は男なだけあってそれなりにガタイの良い和樹には移動するだけで一苦労だ。身長の高いヘイムなんかは途中で和樹から遅れてしまっている。


 「あ、和樹さん!来ましたか~。今回調査を請け負ったチームがあそこに集まってますよ~。こうして見ると壮観ですね~」

 「そうだな。この街のトップクラスの奴らが集まってるんだからな」


 2人は調査を依頼することになったこの街の運営をする職員に指示を受ける彼らを眺める。どの人も強者の風格が漂っている。


 特に後ろの方に立つ4人組。


 白い頭髪から犬のような三角の耳を生やした浅黒い肌の犬人けんじん族の女性。所々に傷がありいかにも強者の風格があった。


 その隣に立つのは全身が緑の鱗に覆われた蜥人せきじん族。人というよりかは2足歩行の巨大な蜥蜴といった所で性別は判然としない。


 その後ろには栗毛の頭に長い耳を生やした兎人とじん族、人と言うには小さすぎる体の鼠人ちゅうじん族が居並んでいる。

 

 そこからは他とは一線を画すオーラが漂っていた。いずれも風格があり外に出て戦うことに慣れていることが窺える。


 戦闘に関してはまだまだ素人の和樹なんかは犬人族の女性と一瞬目が合っただけで竦み上がってしまう。恐らくはこの女性があの中で一番強いだろうと和樹は妙な確信を覚える。


 「お2人共……早すぎまし。どうしてこの人混みをそんなにスイスイと……突っかかって動き辛すぎまし」


 人混みを移動するのに疲れた様子のヘイムが汗を垂らしながら和樹とフレミーに追いついて来た。こうもごみごみした場所だと高身長で一部ふくよかなヘイムではスレンダーな2人よりも窮屈で移動に時間がかかってしまう上に体力の消費が大きい。


 そんなヘイムは荒い息で胸を上下に揺らしながら和樹達の様子に気付く。


 「あの一団の気配に圧倒されましたか……フレミーや私個人でならあの中でも良い方になるかと思いましが、和樹はまだまだ遠く及びません。ああなるにはもっと修行が必要なのでございまし」

 「ヘイムか……うん。分かってる。でも、お前らの強さでも一番にはならないのか」


 上には上が居るとは言うものの、目の前で見た圧倒的な力以上のものがあることに和樹は目を剝く。


 「ええ。実践経験の差が大きいのでし。一番長いであろうフレミーでまだ数年。ですが、彼らはほとんどが10年20年とこなしてきている方ばかりです。特にあそこに居る犬人族のグレースなんかは40年以上も昔から狩りをしているのだとか」


 ヘイムはここで一度息を継ぎ、真剣な眼差しの和樹を窺う。


 「力が弱い方の種族で魔王に襲われるのが遅く、逃げる準備も出来ていた故に被害が小さかった方々ですが実践を積めば種族で優位を取ってる私達でも簡単には敵わないのでございまし」

 「へぇ……そうなのね。んで、気になったんだけど、種族の優位って?」

 「それは、でございましね……私やフレミーのような天使族だったりエルフ族だったり実在する生き物のモチーフがない亜人が力が強い上位、そこにいる犬人や蜥人族のような動物がモチーフになる者は下位となりまし。付け加えると人間は更にその下なのでございまし」


 そんな話をしている和樹達の前では着々と準備が進み、いよいよ外に出る大きい方の門が開かれる。


 街の人に調査の存在を見せつけ安心感を与えようとする意図があるだけに派手で、そこを行く彼ら調査団はカッコよく目に映る。


 「いや~凄いですね!憧れちゃいます!」

 「私達に必要なのは経験です。いかに彼らが遠い所にいるかご理解頂けまし?」

 「ああ……分かったよ」


 それから暫くして門が閉まり始めるが和樹は立ったまま太陽にテカテカと照らされるその光景を眺め続けた。

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