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只のNPCのようだ  作者: 蜘條ユリイ
13/22

NPCとして初めての征伐

「まだついてくる気なんですか?」


 酒場に居座ったタクさんが勤務の終わった私の後を付いてくる。これじゃあ完全にストーカーだ。そろそろ本気で通報してもいいんじゃないかな。


「いいじゃないか。俺も同じギルドメンバーだろ。それに6日間も掛けて拡張エリアを実装しなおしたんだよ。疲れたんだよ。全く誰だよ拡張エリア攻略のために『自爆テロ』アイテムを大量に使った奴。」


 私のことである。この人、本当は解って言っているんじゃないのかなあ。


「調べてみればいいんじゃないですか。以前、ヴァーチャルリアリティー時空間システムには記録が残っているとか言ってませんでした?」


 多分、できないと思うが様子を探ってみる。


「無理なんだよ。あちらにしてみればメモリ情報がキレイになったという程度で人権侵害があったとかじゃないからな。」


 ヴァーチャルリアリティー時空間システムを管轄するヴァーチャルリアリティー社はある会社のグループに属しているのだけど、グループのトップがヴァーチャルリアリティー時空間での人権上の法律を作成するためだけに衆議院議員選挙に立候補し、与党の最大派閥を率いている。


 鷹乃巣クリニックを前身とする鷹州会病院を設立した際に1度だけお会いしている。優しそうなオジさんだった。医療法人と各種特許を管理する会社として設立した鷹州会は次の株式総会までに株式公開に踏み切る予定だったりする。


 株式の約6割を母たち兄弟で共同所持して、残り4割を借金と引き換えにこのグループで引き取って貰ったのである。それも伯父がある問題により権利を放棄してしまい15%が宙に浮いている。


 おばあさまには病院を大きくする経営能力があったようだけど、母たちは経営に自信が無いらしく、宙に浮いた15%も、このグループに引き取ってもらいたいと思っているみたいである。


「わかりましたよ。もー。私に何かしてほしいことでもあるんですか?」


 頭を撫でるとか例え胸に視線が集中していてもギルドハウスの机で対面で話をするくらいならいいかな。私の所為でお疲れのようだし。


「装着してみてほしい装備があってだな。」


 例の鎧のことだろう。この人、絶対図に乗っているよ。


「スライムが居る攻略エリアにでも連れていくつもりですか?」


 思わず冷たい声が出てしまった。


「いや運営権限で自由にモンスターは出現・・・なぜわかった?」


 問答無用で身体半分に花火を向けようと思ったんだけど、途中で気付いたみたい。


「グーがいいですか。パーがいいですか。それとも足蹴りにしましょうか。」


 私って優しいよね。このくらいで済まそうとするなんて。


「パー・・・いやグーにしてくれ。足蹴りは、お婿に行けなくなる。」


 なんだ。攻撃力1の爆竹でも足に乗せて蹴ろうと思ったんだけど止められてしまった。


 タクさんが覚悟を決めたみたいで目を閉じたので【堕天使の羽】スキルを使い、上空から一気に相手を殴りつける。


「あー痛て。もうちょっとで死に戻りするところだったじゃないか。今のどうやったんだ。並大抵の衝撃じゃなかったぞ。」


 流石にレベルがカンストしている攻略者には通じなかったか。まあSTRがゼロだから無限大を掛けてもゼロには違いないんだけどね。


「内緒です。次は足蹴りにしましょうか?」












 とりあえずタクさんは逃げていってくれた。あの衝撃を足蹴りで受けたくは無いらしい。


「さてこの1万を超えるステータスポイントをどうしようかな。」


 はっきり言ってスペシャルステータスポイントを自分に割り振る気は失せている。なんといっても翼竜を倒したときに得た経験値でレベルアップした際に得たステータスポイントだけで1万ポイントを超えているのである。


 レベルアップはカンストし、HPとMPは勝手に増えたけどレベルアップで得たステータスポイントは割り振って無い。どう考えても割り振らないほうが強いダメージを与えられる。弱点はモンスターの再生能力かな。


 それでも想定よりも取得できたステータスポイントが多かったのはレベルアップの際に割り振って無いステータスポイントがあるとレベルアップで貰えるステータスポイントが増えると想像している。


 この情報が纏めサイトにも載っていないのはレベルアップするまでステータスポイントを割り振らないPCが居なかったと思われる。


 ギルドマスター室に入り、試しに余っているステータスポイントの移動先を調べてみると、意外というかやっぱりというかスペシャルステータスポイントへ振り分けられるらしい。


 この事実が知られていないのは自分のステータスポイントを犠牲にするという思考は誰にも無いのかもしれない。


「おかしい。もしかしてスペシャルステータスポイントに割り振ると2倍に増える?」


 少しずつ矢印ボタンで割り振っていくと2つのステータスポイントの減り方と増え方が変だった。


 バグである。


 これを使えばギルドマスターは1度自分のステータスポイントをスペシャルステータスポイントに振り分けてから各ステータスに加算すれば2倍のステータスポイントを得られるはずである。まあ使わないけど。


 念のため、100ポイント残しておく。HPやMPは戻せないけど、攻略を始めるときにこのポイントを割り振ることにする。


 結局、スペシャルステータスポイントは3万を超えていた。これを自分に割り振れば史上最強PCも作れるに違いない。


「あとはユニーク装備【正義の鉄槌】かあ。格好いいよね。使いたいよね。でも絶対入手ルートを聞かれるよね。諦めるかぁ。」


 言わずと知れたあのギルドが所持していたという伝説級のゲーム世界で1つしかないというユニーク装備である。1時間に1回しか使えないが相手がモンスターだろうとPCだろうと防御されようと再生能力があろうと1撃で即死させる金槌である。


 しかもあらゆる状態異常や即死無効など戦闘不能に陥らない【正義の鎧】や受けた攻撃力を無効しした上で100倍で返す【正義の盾】というユニーク装備までフルセットでドロップしたのである。


 過去には竜を討伐した際にどれか1つの装備がドロップすることは知られていたのだけど3つ同時にドロップするなんて。ステータスポイントが全てゼロというのはドロップ率まで高めてしまうようである。


 あのギルドではギルドメンバー共同で竜を討伐した際にドロップされたため、討伐メンバーなら誰でも使える装備だったらしいけど、今回は私ひとりで討伐したため匿名で売ることもできないのである。


 本当は使いたい。ギルドマスター室で試着してみたところ、鎧は伸縮自在で私の胸を完全に覆うことができるし、鎧の中に無理矢理押し込めば、お腹の余分なお肉も覆い隠せるのでクビレも作れるのである。盾も手元のスイッチで大きさを変えれるのでスッポリと全身を隠してエッチな視線から守れる。


 金槌は本当は先程タクさんに使ってみたかった。セクハラ対策用にはうってつけである。


 カラーデザインは真っ白な下地に自由に模様まで入れられるという乙女心をそそる装備だったのである。

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