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第3話 ルシフェルの大罪。ハシュマルの咎

世界を産みだした輝きの女神。

 ラグワイア。

 彼女は兄である神と交わり、世界を産みだした。

 世界の母であり、創世の女神であった。

 ただ。彼女は夫である神を愛さなかった。

 彼女が愛したのは、夫の右腕であり夫が最も信頼するルシフェルだったのだ。

 神をも魅了した美貌は、妻であるラグワイアをも魅了した。

 ルシフェルは彼女の愛を拒んだ。

 しかし女の恋は時に狂気となる。

 誰よりも必死にひたむきにルシフェルを愛した彼女。

 彼女もまた『神』の一族であった。

 そして天使であるルシフェルが、『神』である彼女を愛さないはずがない。

 それは性愛に変わった。

 ルシフェルは彼女を愛し、彼女が願う世界を産みだそうとした。

 彼女と神が産みだしたこの世界ではなく、彼女とルシフェルの生み出した世界を。

 

 創世には3柱の神が必要である。


 今ある世界を壊す 破壊神

 新しき世界を産みだす 女神

 女神と交わり生まれた世界を統治する 神

 

 ルシフェルは研究機関バベルで、知のすべてを使い破壊神を産みだした。

 名を「ノ・エル(生まれた者)」という。

 ノ・エルに世界を破壊させ、新しい世界を女神とルシフェルが産みだす。

 

 天使は神に逆らってはならぬ


 その呪いを打ち砕き、ノ・エルを産みだしたルシフェルの愛は狂気さえ孕んでいた。

 天使でありながら神に逆らったルシフェルの罪を重く見た いと高き者たち はルシフェルを断罪し闇に追いやった。


 いと高き者たちは神を統治する機関である。

 大天使は神の命令を遂行するよりも、このいと高き者たちの命令を絶対とする。

 いと高き者たちに従い、神の威光を守るのだ。

 ルシフェルの罪を重く見たいと高き者たちは、ルシフェルとともに研究機関バベルで研究していた天使たちをも、闇に追放した。

 昆虫細菌病気毒の研究をしていた副長ベルゼブブ。

 動植物を研究していた副長アスタロト。

 たくさんの天使が突然追放された。


 ルシフェルを憎むもの。ルシフェルに従うもの。

 それぞれではあったが、天使たちが地獄と呼ぶ世界で暮らすことになった。

 彼らの身柄を引き取ったのは、サタンであった。

 サタンは破壊神の末であり、闇を愛し統治する。

 彼はルシフェルを含め、堕天使たちに棲む場所を与えた。

 

 ルシフェルは闇の世界を統治するサタンの代理として、闇に君臨することになった。


 闇に追われたルシフェルを諦めきれなかったアグライアは、闇に堕ちることをいとわずルシフェルを追った。

 

 そんな混乱の中、天使の位の中で、第四位に数えられる天使。

 主天使の仕事は神の威光による支配と統治。

 ハシュマルは誰よりも神の統治を愛し、その支配を崇拝していた。

 今なお天使として名を連ねるハシュマルは、実際には堕天使となっている。


 ハシュマルはある日神に直接命令を受けた。

 ルシフェルを追い、闇に堕天した神の妻アグライアの捜索という命令だ。

 ルシフェルのそばにいたアグライアはハシュマルの懇願を拒否した。


「光の世界に戻り神だけを愛するならば、すべてを不問に付す」

 

 というハシュマルの言葉を拒否したのである。


「二度と光に戻ることもしない。神を愛することもない」

と。その言葉を神に伝えたハシュマルは、神の怒りにふれ闇に堕天させられた。

 神の威光をもって女神を連れ帰ることができなかった。

 それがハシュマルに課せられた罪だ。

 

 ルシフェルに

「狂った天使」

とまで呼ばれるハシュマルは、『光』を集めていた。

 城中に金箔をはり、宝石をはめ込み、自分は天使の時と同じ服装。

 地獄の誰よりも天を見つめ、神の怒りがとけ天に還れる日を待ち望んでいる。

  

 いつしか時は過ぎた。

 呪われた金の兄妹も成長を重ねる。

 兄のカイはギリシャ神話のアポロンもかくやという美丈夫に育った。

 妹のレティシアは女神たちに引けを取らぬ美貌に育った。

 あまりに美しくその身に光をまとうがゆえに、二人は村の中でも異端でしかないのはかわりなかったが。

 地獄で「絶対に存在するはずのない金の髪と空の瞳」のうわさは、千里を走る。

 神に祝福されし色に最初に反応したのは、ハシュマルであった。


 それは異端者たちにとって最初の不幸でもあった。


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