大魔神の先見
少し重ためですが、読んで下さると幸いです。
一方、この一連の出来事を魔界軍の本陣から見ていた者達がいた。
「ふっ、天国はとんでもない修羅を抱えていたようだな。あの力、卿と同等ぐらいか」
「ご冗談を。デモゴルゴン様。ナンバー2である自分とあんな小娘が、同等なわけがありません」
その人物とはデモゴルゴンと、当時、彼の右腕的存在だったアバドンだった。
「それにしても、大神はぬるいですね。自分なら、反乱分子など生かしてはおきません。いつ寝首を掻かれるかわからないので」
「違いない。が、アバドンよ。小生はこれを好機と考えている」
「と、言いますと?」
アバドンの問いに、デモゴルゴンは自身の考えを語った。
彼の見解では、今回の戦争をきっかけに近い将来、堕天した天使や神が力を求めて魔族に帰化する必ず時代が来る。そうなれば、強い魔族が増えることになり、結果として世界を手中に収めやすくなる。
そんな未来を想像して、デモゴルゴンは高らかに笑ったが、アバドンは果たしてそんな連中が力になるのか半信半疑だった。
「その第一歩があの女かもしれない、というわけですか。よほど気に入ってるんですね」
「あぁ。小生は強き者を好むのでな。それに、名前もいい。どういう意図で付けられた名かは知らんが、魔界で『魔』を意味するそれを付けられるとは、魔族になるのを運命づけられてるようではないか」
「左様ですか」
「アバドン。小生の見立てが正しければ、あの女は魔族になれば確実に化けるぞ」
と、言ってヘルが魔族に帰化する未来を期待した。
だが結局、彼がヘルと対面する日が来ることはなかった。
ロキの反乱から一週間後、デモゴルゴンが消息不明になったからである。
死亡説もあったが、何にせよ頭を失ったことで戦えなくなった魔界は、同じく多数の戦死者を出したことで続行不可能になった天国と終戦協定を締結し、第零次天地獄戦争は、両者痛み分けという形で幕を閉じた。
終戦となり、皆が平和の喜びを分かち合っていた一方で、堕天され邪神となったヘルは、独り絶望の底に沈んでいた。
黄昏の女神として将来を期待されていた1人の才女は、度重なる絶望と運命の歯車が狂ったことで追放され、邪神に堕ちてしまったのだ。
だが、ヘルの物語はまだ序章。運命は再び彼女を翻弄するのだった…………
最後に書きましたが、彼女の物語はここからです。
デモゴルゴンの先見のとおりになるのか必見です。