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Hell history ~ヘルヘイム~  作者: 天馬光
女神堕天
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立ちふさがる理不尽

 少し重ためですが、読んで下さると幸いです。

 そんな兄の願いを受けたヘルは、なんとしても初代神様のところに向かおうと、激戦を繰り広げる戦場を、死に物狂いで駆け抜けていった。

 だが、残酷な運命を体現するかのように、功を上げようとする魔族と、彼女を捕縛しようとする天使達がヘルを包囲する。


「皆さん、どいて下さい! 私は神様のところに行かなければならないのです!」


 ヘルは、身の潔白を証明するために向かっていると言いたかったのだろうが、焦りから言葉足らずになってしまったその訴えは、ヘル(イコール)罪人と認識している天使達にとっては、まさに火に油であった。


「神様の元へ……? まさか貴様、フェンリルと共に、神様に危害を!?」


「違います! 私は、神様に無実を訴えようと……」


「黙れ逆賊め! そんな嘘が通用すると思っているのか!」


 天使達はヘルの言葉を信じようともせず、彼女に刃を向けた。


 ヘルは理解し難かったが、そもそも、天使や神は、愛や信頼などといった良心や絆を尊び、嘘や疑い、憎悪などといった邪心を最大の悪ととらえている種族である。

 そのため、天使らは基本嘘をつかず、たとえ真実を求めるためといえども、一切疑念を持たないのである。

 故に今、彼らが糾弾しているのは、疑念からではない。オーディンという強い権力を持った神の言葉を鵜呑みにし、ロキ一族は天国の敵だと決めつけてしまっているからである。


 そんな理不尽な現実に直面し動揺するヘルに数人の天使が、3つのエネルギーを均一に混ぜることによって発動する技・三位一体で強靱な紐・グレイプニルを形成し、彼女を拘束した。


「もはや抵抗すらできん。大人しく裁きを受けよ」


 容赦なく捕縛され、絶望したヘル。そこへさらに追い討ちをかけるように、今度は魔族達がこの状況を逃すまいと、ヘルに気を取られている天使達に襲いかかった。


 それによって、グレイプニルを操作している仲間をかばって、天使達が次々と命を落とし、ヘルもかすり傷を負った。

 その痛みと絶望を肌で感じたヘルは、あまりにも混沌とした戦場と目の前で起こっていることに、愕然とする。

 と、同時に、この異様な空気にあてられたことで、自分の中で何かが込み上げてくるのを感じた。初めて感じたその感覚に、彼女は戸惑いを隠せない。


 しかし、そんなことは敵にとっては関係ない話である。


「はっはっは! お嬢ちゃんのお守りがお留守だぜ、天国の大バカ共! ちゃんと守れよな!」


「しまった!」


「死ねー!!」

 1人の魔族が槍を突き出して突っ込んで来る。拘束されたヘルに逃げることはできない。まさに絶体絶命の状況である。

 三位一体は、天使も魔族も使えることができ、組み合わせ次第で、強力な技にも、装備品にもなる秘技です。そのため、三位一体を使えることが、1つのステータスとなっています。

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