兄として
少し重ためですが、読んで下さると幸いです。
軍神の一言によって、瞬く間に反逆者にされてしまったヘルとヨルムンガンドは、両陣営から襲われ、完全に孤立無援となってしまった。
妹を守ろうと、奮戦していたヨルムンガンドだったが、1人で何億もの軍勢から守りきるのは、やはり無理があった。妹に危害が及ぶと判断したヨルムンガンドは、
「ヘル! 僕が時間を稼ぐ! その間に逃げるんだ!」
「兄さん!」
「早く! でないと、2人揃って……」
「けど、逃げろってどこに? 私達にはもう、逃げ場所や帰る場所なんて……」
この絶望的状況に、ヘルは諦めかけていたが、ヨルムンガンドは、まだ救いの道があることに気付いていた。
「……あるよ」
「え?」
「神様のところだ。神様なら、僕らの無実を証明してくれる。きっとわかってくれるはずだ」
そう言うとヨルムンガンドは、妹の不安を払うように突破口を開いた。
「さぁ、行くんだ! 僕に構わず、早く!」
ヘルはまだ不安に思っていたが、兄の想いを受けたことで、覚悟を決めて、
「はい。待ってて、兄さん。すぐ助けにもどるから」
と、兄に言い残し、初代神様の元へ向かった。
ヘルが行ったのを見送ると、ヨルムンガンド皮肉な笑みを浮かべ、
「……無駄だよ、ヘル。これだけ抵抗したら、僕の罪は免れない。だから、君だけでも幸せに生きてくれ。こんな僕のことは気にせず、ね」
と、呟き、眼前の敵を見据えて、得物である如意多節棍を構えた。
「あなた達のご希望通り、僕は逃げも隠れもしません。どうぞ、煮るなり焼くなり好きにして下さい。ですが、大切な妹のためにも、今は全力で抵抗させていただきます!」
ヨルムンガンドはそう言ったあと、襲いかかって来る敵や、ヘルを追おうとする天使達に挑んでいった。ヘルの未来を守るために…………。
ヨルムンガンドがどうなったかは、のちに明らかになります。