婚姻
少し重ためですが、読んで下さると幸いです。
2人のそんな後ろ姿を見て、ヘルの心と力を深く知ったアバドンは、ふと、デモゴルゴンの言葉を思い出し、ある決心をした。
「ほっとけ。どうせ廃材で作ったガラクタだろ?」
「それでも、羅王君が私のために作ってくれた大切な物だから……」
落ち込むヘルにアバドンは、
「なら、新しく作りゃあいい。材料ぐらい調達してやる」
唯我独尊を絵に描いたような男であるアバドンの協力要請に、羅王はびっくりした。が、当然この男がタダで動くわけがない。
「ただし、条件がある……お前、俺様のオンナになれ」
突然の言葉に、ヘルはポカンとしていたが、しばらくして、それがプロポーズの言葉だと気付き、
「え……? えぇ!? わ、私が!?」
と、言いながら、瞬時に元の自分に戻って赤面し、わかりやすく狼狽えた。
「あぁ。その力、その容姿、そして内に秘めた残虐性。全てが気に入った。お前は大魔神である俺様の妃に相応しい」
「そんな! 急に言われても……」
ヘルはゆっくり考える時間が欲しくてそう言ったが、アバドンはその時間すら許さなかった。
彼は大魔神である自分との結婚を断れば、魔族の大半を敵に回すと脅した上で、妻になれば自分の庇護下に入り、誰も手出しできなくなると語った。
最後は自己判断だと一任したが、あんなことを言われたら、答えは決まっているようなものである。
「羅王のことを気にしてんなら、安心しろ。お前が嫁にさえなってくれりゃ、こいつを技師として雇ってやる。そうすりゃ、いつでも車椅子の点検だってできるし、俺の部下ってことで庇護下に入るし、好きな時に会える。どうだ?」
羅王が腹いせでやられることを心配してるとアバドンは思っていたが、ヘルの答えはもう決まっており、彼の出した提案に失笑した。
「気が早過ぎますよ」
「あ?」
「まずはお付き合いからです。お互いのことをちゃんとは知りませんし、私なんかとすぐに結婚してしまったら、同族達からバッシングを浴びて、最悪の場合、あなたの地位が脅かされます。そうならないためには、時間をかけて民を説得し、理解を得る必要があります。結婚はそれからでも遅くはありません」
冷静さを取り戻し、毅然とした態度で諭すヘルに、アバドンは一本とられたといった感じで高らかに笑った。
「言うねぇ。思った以上に賢いじゃねぇか。ますます気に入ったぜ。つーことは、OKってことでいいんだな? ヘル」
「はい。不束者ですが、よろしくお願いします」
そう言うとヘルとアバドンは、握手をし交際を始めた。
恋人同士になった2人は、領民や同盟相手らにお互いの関係を話し、理解を求めた。
案の定、反対者もおり、全員を説得するのにかなりの時間を要したが、それでも根気よく説得したおかげでなんとか理解も得られた。
こうして交際から1年後、努力の甲斐もあって、2人は魔族達に祝福されてめでたく結婚した。アバドンが29歳、ヘルが16歳の時である。
この結婚から、彼女の人生は再び大きく動き出し、やがてそれは、魔界を変えることとなる……………
天使の血は基本透明で、体外に出るなどして光を失うと白くなります。
一方で、魔族の血は体外に出ても濃淡が少し違うだけで真っ黒です。




