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003.~目覚め -1~

 深い深い眠りから目覚める。

 意識がうっすらとよみがえると、まるで土を掘り返すような鈍い音が壁越しに聞こえる。


 う?ここは?

 あれっ?どこだろ?

 ぼやけた頭で考えながら、まだはっきりしない意識の中、目をしぱしぱさせながらこすり、う~んと、手足を伸ばしてみたら手が壁にぶつかった。


 ごんっと音がすると、室内が揺れ、何やら壁の外側からも「「「おおっ」」」という何人かの声が聞こえた。

 外に誰かいるらしい。


 せまっ!何コレ!ここカプセルホテル?と私は周りを見回すが真っ暗である。

 そして手探りであちこち触っていると電気のスイッチらしきものを発見してぽちっと押してみる。


 するとぱぁっとその空間が明るく照らされた。

「まぶしっ!」

 あれっ?あれれ?

 な、なんじゃこりゃあ~!

 そこは正しくは、単身用の精密な生命維持装置の組みこまれた精巧な睡眠カプセルの中だった。


 走馬灯のように自分のこの状況に至った経緯を推察する。


「え~と、私は誰?ここはどこ?って、いやいや!落ち着け私っ!」

 ぶんぶんと首を振り、そう心の中で唱えつつ自分の頬を両手でパンッとはたく。


 そして私は、何やら外が騒がしいのも無視して自分について、思いだせるだけ思いだそうと思考を巡らせた。


 まず、そうだな…えっと、私の名前は桐生綺羅!三十二歳、世界自然科学開発機構レリアに籍を置き博士号をもつ研究員だった。


 うん、そうそう!


 西暦三千三年、突然の隕石が某国の秘密の核施設に落下し、核融合をおこした地球は壊滅した。


 何の運命のいたずらか開発建造後すぐの宇宙空母艦ノアズテラの見学に来ていた私は、そこの職員や研究スタッフたちと共にその空母に乗り込み宇宙へと逃げ出したのだ。


 あの時は、地球最後の日にしか鳴らないと称されていた『ファイナルエマージェンシーサイレン』が基地じゅうに鳴り響き、騒然となりつつも常に緊急事態に備えた訓練を受けていた職員たちは、キビキビと動いた。

 まず研究員やたまたま見学に来ていた私達をも先に空母に誘導し、基地内にいる百人ほどの人々を乗せ宇宙に飛び立ったのである。


 その後、地球はマグマと地核から噴き出す瘴気に飲まれてあっという間に”死の星”となり果てたのだ。


 そして均衡が崩れた惑星たちは、軌道がくずれ、地球は肥大し太陽にじわじわと十年をかけて接近…。


 そして宇宙空母艦ノアズテラから私は”卵”と呼ばれる特殊な石に包まれた()()な生命維持カプセルに乗り込み単身、地球と太陽の衝突爆発の瞬間に地球と太陽に向かって放出されたのである。


 あれっ?なんでだっけ?

 私ひとりだけ?

 目覚めたばかりのせいもあり、ところどころ記憶が曖昧だ。


 そう思いつつも、とにかく自分が、この”卵”と呼ばれる生命維持装置の中で目覚めた事で、この外が生存するのに支障ない環境であることがわかる。


 まず酸素、そして水のある環境であること。

 文明の存在が認識出来る事。


 戦時中などの混乱のない環境である事など、地球の暦で西暦三千三年の科学の粋を極めた技術と人工知能であらゆる状況を確認し今、覚醒スイッチが入ったようである。


 そして私は、眠りから覚めたのである。


 でも、あの太陽と地球の爆発でビッグバンが起きたと仮定して最低でも生命の誕生まで四十億年以上はたってるって事?

 いや、まじこの”卵”すごくない?

 正直言うと、多分死ぬと思っていた。

 最善で人類も何もまだ生まれてない原始の世界に放り出されるのがおちだと自分でも思っていたのだ。


 この”卵”が、宇宙の大爆発に耐えれたとしても、何億いや何十億年もの時間持つとは…まさか知的生命体とか文明のある世界で目覚めるなんて全く思っていなかったというのが正直なところだ。


 このカプセル…宇宙の大爆発にも負けないってどんだけよ…。


 しかも惑星が生まれて生命が…?一体、何十億年たったのか…。

 まさか本当に生き延びるとは…。


 そう言えば、この生命維持装置…開発者のロイス博士はが、百億年は保証付きとか言ってたっけ?いや、百億年なんて保証出来る訳ないよね?あれはやっぱ冗談だよね?


 そうなると、ビッグバンによる時間の逆流?いやいや、それとも時間ワープ?


 異次元転移もありえるか?


 何しろ宇宙規模の大爆発なのだ!


 時空やら何やらがおかしくなる事だってあり得る!


 まぁ、どれだけ考えても答えが出る筈も無く私は、周りの喧噪に耳を傾けた。


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