001.地球滅亡の日
地球は今まさに太陽にのみこまれ消滅しようとしていた。
地球が壊れる寸前に世界の要人たちの緊急避難用に作られた宇宙空母艦ノアズテラに運良く?乗り込み助かった研究者やノアズテラの乗組員、その中に私もいた。
ちなみに私は研究者だった。
わずか十一歳という世界最年少で博士号をとり、いわゆる天才と呼ばれつつ二十歳をすぎる頃には、様々な研究を行い世界各国をとびまわっていた。
私は、その頃、おもに地球の自然に関する研究を多くしていて砂漠の緑化や気候や鉱物について研究していたので専用のジェット機であらゆる国に行ったものだった。
あの日も日本から国際宇宙開発機構での会合に参加した後、かねてから興味のあった宇宙版の『ノアの箱舟』と言われる宇宙空母艦ノアズテラの見学をさせてもらっていたのだ。
生き残ったのはこの船に乗り込むことが出来たわずか百人にも満たない人間たちだった。
***
地球最後の日…。
それは夢だったのだろうか?…そう問いたくなる。
審判の日?
エマージェンシーサイレンが鳴り響く中、緊急招集された科学者の中にいた私は、世界の終わりがこんなにも突然来るのかと驚愕した。
それは大気圏で消え去る程度であろう直系一メートルほどの隕石だった。
誰もそれが地球を破壊に導くほどのものだなどと思わなかった。
通常、隕石は、落下しながら激しく燃えあがり蒸発しどんどん小さくなる。
もちろんその隕石を構成している成分にもよるのだろうが、この程度の隕石が二千度を超える熱圏を越えて尚、無傷でいる事など考えられなかった。
しかし、その石は大気を通過中に高熱で全く気化せずそのままのサイズで降下し続けたのだ。
普通ならもっと大きな隕石でも、大気圏を抜ける間に、どんどん気化していき小さくなり消えていく。
地上にかろうじて形を残して到達するとしても、少々凹むくらいだろうと研究機関の誰もが思った。
むしろ、形が残ってたら回収して成分を調べたいと研究者たちはワクワクすらした筈だ。
まぁ、運悪く建物等に落ちれば、穴が開いたり崩れたりという被害もあり得るがその隕石が落ちたのは建物も何もない山岳地帯だった。
故に各国の防衛庁や研究機関もその隕石が大気圏に突入したところで呑気に観察するだけだったのだ。
その隕石が大気圏を通過して尚、砕ける事も燃え尽きる事もなかった事に気づいた防衛庁は、対空用のミサイルで破壊を試みたが、直撃したにも関わらずその隕石はまったくの無傷のままだった。
とはいえ、何もない山岳地帯にわずか一メートルほどの隕石である。
それが世界を滅するなんて誰が想像できただろう。
そう地球は、そのたったひとつの隕石の襲来で滅びた。
そして、地球最後の日、世界の選ばれた要人たちの為に建造されていたノアズテラという緊急避難用の宇宙空母艦に、要人たちのすべてを集める間もなく、地球最後の日に鳴るだろうと言われていた『ファイナルエマージェンシーサイレン』に、その場所(宇宙空母艦ノアズテラ基地)にいた職員たちだけが乗り込んだ。
ほとんどが、研究者とノアズテラの乗組員や整備の人間達だった。
そしてノアズテラが映し出した地上の様子に、乗船した皆が驚愕し顔色をなくした。
隕石が山岳地帯に落ちた後は、真に地獄だった。
その山岳地帯には某国の秘密の核開発施設があったのだ。
その大気圏にもびくともしなかった隕石はその施設に直撃し開発途中の核弾が暴発。
この瞬間から凄い勢いで地球は壊れ始めた。
地面はひび割れ、崩れマグマが噴き出し地中に埋まっていたウランやタリウム、コロラドアイト…数知れない程の有害な物質が地表にむき出しになり地上にはガスが噴き出した。
その中には愚かな人類が生み出した毒ガス等の悪魔の兵器の数々や現代よりも更に極悪進化した核兵器も含まれていた。
それらは意図的に質量が増大し無限とも思えるような爆発を繰り返したのだった。
そして青かった地球はみるみるうちに赤く染まっていった。