魔王との出会い
ーーーー驚いたな。
少し前たまたまお嬢様が見ていたニュースで、異世界転生というネタが若者の中で流行っていると聞いたが、これが異世界転生というものか。本当にこんなことがあるとは。
落ち着きを取り戻しつつ、俺は辺りを見渡した。ここはどうやら祭壇のような場所で、
僧侶みたいな服を着た男8,9人が四方八方に立っていた。
その時に気付いたのがその人の視線と少しのどよめき、こちらを見ていた人の違和感だ。
皆肌が薄い紫で、耳が尖っている。少し大きめな瞳が全て自分を見ているのが少し不気味で気恥ずかしい。
どうしようかと考えていると、一人の細身な男が近づいて来た。
「お前、本物か?」
いきなり訳のわからないことを言われて、少し困惑する。
「本物とは、どういう意味だ?」
「お前が本当に異世界から来たかという意味だ。答えろ、お前は本当に『日本』という異世界から来たのか?」
率直な疑問を投げかけると、さっきより強い言い方でもう一度聞き返して来る。
「あぁ、正真正銘、俺は日本人だ。それがどうしたんだ?それと、あんたらは何者だ?」
「そうか、疑って悪かったな。我々は魔族と言って、モンスターと呼ばれる怪物と共存している種族だ。それともう1つ。悪いが、あんたは我々が召喚した。いきなりで悪いが、あんたにはこの国の救世主として、反撃の火種になってもらう。」
男はまだ疑いの感情がありそうだが、特に証明するすべもないのか、諦めて話を進めた。
「救世主?なんの話だ。俺はただの人間だが?」
「嘘をつくな。我々の召喚魔法は、屈強で、忠誠心の高いものだけを召喚するように作った魔法だ。お前が召喚されたということは、その条件をクリアした男だ。」
「そう言われるのはありがたいが、救世主というのは断らせてもらいたい。俺の力は、守るためにしか使わないと決めているんだ。奪うのではなく、守るための力だ。」
理不尽にもほどがある。こちらはいきなりここにきて困惑しているというのに、いきなり魔族の仲間になって俺の力を利用するなんて。
「お前の意見など求めていない。そんなに嫌なら、こちらも考えがある。しかし、お前が救世主になるということで、我々を守るということにもなるのではないか?」
「やめなさい、ルナサス。」
醜い口喧嘩を繰り返していると、透き通ったとても綺麗な声が二人の喧嘩を止める。
「これは『魔王様』!申し訳ありません!このような醜い争いを見せてしまい....なんと謝れば良いか.....」
俺の目に入ってきたのは。『魔王様』と呼ばれた女の子の姿だった。
瞳はルビーのような感情的な赤と、サファイアのような落ち着きのある青のオッドアイ。
顔つきがすらっとしていて、とても穏やかな目つき。エメラルドのようなとても綺麗な緑色な美しい髪。
俺は、そんなとても美しい『魔王様』と呼ばれた女の子に、とても似ている人を知っている。
「『お嬢様』.....?」
そう、第1の人生である日本で、一生守り続けると誓った少女と瓜二つの姿だった。