表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

日常

疲れていたら、こういうこともあります。

作者: 鈴木タケヒロ

 このページを開いていただきましてありがとうございます。


 この作品はぱっと閃いて書いたものなので皆さんのお気に召すものになっているかわかりませんが、クスッとでもしていただければ私は幸せです。

 私はラーメンが好きです。好きと言ってもそれほど種類を知っているわけではありません。だから私がここに書こうとしている事は当たり前の話なのかもしれません。しかし、私は知ってほしいのです。あの衝撃を。そして共感してほしいのです。仕方ないよねって。


 あの日私は神戸の中華街に行っていました。日曜日ということもあって人が多くて、歩きながら五十メートル先を観ることなど人々の頭が邪魔をして願っても叶わないことでした。

 私は生来人混みが苦手でした。だから、休みの日のデパートや花火大会、クリスマスのイルミネーションなど自らが提案して行くことはありませんでした。しかしその日は十年来の親友に「一回も中華街行ったことないから一緒に行ってくれん?」と言われたので行くことに決めました。その友人のことは本当に好きでしたから。

 私たちは朝の十時頃に中華街に着きました。その時間でもやはり多くの人が行き交っていました。意を決してその人込みに飛び込みました。はじめは歩きにくいなぁと思っていましたが、不思議なもので徐々にその人込みの歩き難さや熱気なんかにも慣れていきました。経験のある人にはわかることなのですが、満員電車に自分を押し込むような感覚です。最初はこの中に入っていくのは嫌だなぁと思うのですが、電車に揺られ他の乗客に身を委ねてみれば案外快適なものなのです。

 私たちは思う存分中華街を楽しみました。焼小籠包や角煮まん、トルコアイスなど食べ歩きにはもってこいの物ばかりで二人とも興奮していたんです。神戸牛千円~というのも二人の話のタネになりました。

 そうこうしているうちに既に三時を回っていました。親友は今日はバイトがあるからということでその時間には駅に向かって、そのまま電車の方向も逆だったので別れました。帰りの電車の中で気付いたのですが、私は疲れていたようなんです。そのままうとうとしてしまって、私が気付いた時には最寄り駅はとうに過ぎていました。でもこれも何かの縁と思って下車してみたんです。

 

 私の目に飛び込んできた光景は古くからある駅前の商店街という感じでした。肉屋、八百屋、魚屋、靴屋に婦人服専門店、パチンコなんかもありました。その商店街を歩いて百メートルは来たかというところで一軒のラーメン屋を見つけました。店の前にみそゴマラーメン七百五十円とでかでか書かれていてこれは! と思いました。私はお腹が減っていたようなんです。午前中たくさん食べましたのにね。

 店の中に入るとカウンターは八席、テーブルは二つといった具合でした。時間帯的に席は空いていて私は入り口から一番手前のカウンターの席に座りました。そして私はメニューを手に取ってせっかくだからと欲張りました。みそゴマチャーシューラーメンを頼んだんです。

 私がスマホをいじりながら待っていると豪快な器でその品は来ました。器の縁が外側に仰け反っていて、私は珍しい器だなぁと思ったものです。中を見てみると、スープの水面に少し浮いていた麺はつやつやでゴマの香りがふわっとして、湯気もその温かさを目に見える形で私に主張してきました。まずはスープそしてスープ、次には麺をつまんでズルズルズルといきました。本当においしいラーメンで食べ終えた時に私の頭の中には満足! という言葉だけが浮かんでいました。そんなのはこの日の他にも数えるほどしかありませんでした。

 食べ終えた私は店主に会計のために千円を持って、レジまで行きました。店主も私が食べ終えたのだと思ってレジまで来てくれました。

 しかし私にはその時になって一つの疑問が浮かんでいたのです。その疑問とはチャーシューの事です。私が頼んだのはみそゴマチャーシューラーメン。しかし私の目の前に出されたのはどう見てもみそゴマラーメンだったのです。中にはメンマと青ネギとゴマに麺にスープ。それらはたいへん美味しかったのですが、チャーシューの分のお題を請求されたら、言ってやろうと思いました。「間違えたのはそちらなので私は普通の分の代金しか払いません」と。

「お代は千八十円になります」

 その店主はチャーシューを入れ忘れたのをやはり気付いていないようでした。

「すみません、私が食べたラーメンにはチャーシューは一枚ものってませんでしたので普通の分の七百五十円だけは払わせてもらいます! でも、チャーシューの分を払う義務は僕にはありません!」

 言ってやりました。

 すると店主は僕が座っていた席に目をやってこう言うのです。

「あんちゃん、チャーシュー残してんじゃん」

 私はえっとなりました。チャーシューを残してる? どういうことだ? と思いました。

 恐る恐る自分が座っていた席に戻って、その食べ終えた器を見てみると驚きました。 チャーシューはずっと私に食べられるのを待っていたんです! 器の縁にぐるっと一周。器の縁で!!

 私は席に再び座って、その十枚以上も残っているチャーシューを一気に食べました。そしてレジの所に行って店主に千八十円を払いました。

 

 店を出た私は恥ずかしくてたまらず駅まで走りました。駅に着き、ぜいぜいという自分の呼気を聞きながら自分が疲れていたことに再び気付かされました。器の縁とチャーシューを混同してしまい、言われるまで気付かなかったなんて……。


 そして私は思いました。


「また来よう」


 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。


 こんなことありますよね! 

 と思われた方には感想やご意見いただけると本当に嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 朗らかなエッセイで読みやすく、一緒に中華街を旅している気分になりました。最後の笑い話も私もやりそうだなと、なんだか共感しました。ラーメンの中のチャーシューは、大事です。 [一言] このよう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ