プロローグ
「ぅわーん、かなちゃんが、いのりの、ひっく、ことおした~」
「奏留!」
家のお庭で遊んでいたら、いきなりかなちゃんに押されて、転んでしまった。押された驚きと怪我の痛みで、泣き出してしまった私の元へ静留くんがやってくる。
「ち、ちがうよ‼けむしがいたから、あぶないと思って」
「それでもいきなり押したら危ないだろう。いのりちゃんも怪我をしちゃったし」
「うっ、ごめんなさい...」
「ああ、ちゃんといのりちゃんに謝るんだよ」
「ごめんな、いのり...」
「う、うん、ひっく、かなちゃん、ありがとう」
「ほら、いのりちゃん怪我を見てあげるから、背中乗る?」
「うん乗る‼ありがとう。しずるくん」
泣いている私の頭を静留くんはずっと撫でてくれたので落ち着くことができ、かなちゃんに怒っていた静留くんたちの会話を聞くことができた。
かなちゃんが私のことを思って私を押したのだと知り、謝ってきたかなちゃんに頷きお礼を言った。
それを見届けた静留くんが私の怪我の治療をするために、おんぶして運んでくれるということに泣いていたことも忘れ、笑いながら静留くんの背中に乗った。
私はリビングの窓の縁に座る、静留くんが私の前に片ひざをつきながら消毒液を綿に染み込ませている。
「少ししみるけど、頑張ってね」
「う、うん...っ!」
「絆創膏を貼ってっと、痛いの痛いの飛んでいけ~。はい、大丈夫だよ」
「ありがとう、しずるくん!大好き‼」
「ふふ、僕もいのりちゃんが大好きだよ」
ジリリリリン、ジリリリリン、ジリリ...
「ふぁ~。小さい頃の夢なんて久しぶりに見たな~」
小さい頃、従兄弟と遊んでいた夢。
同い年の奏留くんとは違い、5歳年上の静留くんは私から見たら大人だった。
小さい頃から私を可愛がってくれた静留くん。
いつの間にか好きになってしまうのも、無理もない年齢差だと今なら思う。
高校生になっても静留くんのことが好きだった。
そんな気持ちも高校の帰り道、静留くんが知らない女の人と腕を組んで歩いているのを見てしまい、諦めるしかないと片想いに終止符が打たれた。
「わぁ‼ヤバい物思いにふけってる場合じゃない!お母さんたちいないから、全部やんなきゃなのに~」
夢を見たことで思い出した静留くんのこと。
物思いにふけってかなり時間が経ってしまったようで、慌てて準備をして仕事へ向かった。
その日の夜、付き合っている彼氏からメールがきていた。