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不死身少女の死亡計画  作者: ぷあ
プロローグ
4/4

いままで

またしても、ふわふわと意識が戻ってくる。真っ白い所ではなく、差し込む陽射しが眩しい森の中にいた。本当に生き返ったんだ!

身体も今まで通りちゃんと動く。でも、今までとは違う感覚もある。空気や大地、周りの全てに感じる気配。見る事も、触る事も出来ないけど、きっとこれがマジカリウムっていうやつなんだ!でも、感じるだけでどうする事も出来ない。


「やり方は自分で見つけるんだったよね」


感じる事は出来た、やり方さえ分かれば。

どきどきしてきた。これが、魔力なんだ!

ここにいたって仕方ない。分からない事も、やりたい事も沢山ある。兎に角、人を探さなきゃ。

どこへ向かえばいいか分からないし、危険だってあるかもしれない。

「それでも、進まなきゃ。」

高ぶる気持ちを抑えて、ゆっくりと歩き出した。

挿絵(By みてみん)


こうして、私はこの世界に転生した。


あの後、迷いに迷ったのは言うまででもない。

そしてそこで、気付くことになる。死にたくないって言ったその意味を。


最初はちょっとしたことだった。森の中を迷い歩いてる時、木の枝に思いっきり腕を引っ掛けた。「痛っ!」と見てみると、深く切れたであろう傷はもうどこにも無かった。

「んん?」

もう痛くないけど、確かに痛かった。引っ掛けた枝には血が僅かに付いていた。

「なんで…?」

枝をへし折って、腕に宛てがってみた。ドキドキしてくる。怖いのもあるけど、ちょっと期待してる。きっと痛い。でも、確かめたい。


思い切って、腕に押し付けるようにして枝をサッと引いた。

「痛っ…!」

たらりと血が垂れたかと思えば、傷口はあっと言う間に塞がり、消えてしまった。


「…っ!?!?」


唖然とした。痛みも消えてしまったけど、血は残ってる。逆再生みたいに傷が治ったんだ!!自分の腕をまじまじと見つめて、にやにやした。

痛いから流石にもう一回やろうとは思えなかったけど、自分の身に起きた奇跡みたいなことが、たまらなく嬉しかった。


この頃はまだ単純な回復能力だと思っていて、憧れの超能力を持ってるのが純粋に嬉しかったんだ。



それから1ヶ月程過ぎた。私はまだ森の中。

気付いたことは増えた。体力や持久力が前よりいいこと。眠くなりにくくなったこと。方向感覚がよろしくないこと…。

私は、森の中を彷徨い、木の実を食べ、木にもたれて眠る。という生活を送っていた。何回か魔物を見かけたけど、なんとかやり過ごしたから、戦闘にはまだなってない。それでも、現代っ子だった私にサバイバルは厳しかった…。

とりあえずお風呂に入りたい……。



それから2ヶ月程過ぎた。私はまだ森の中。

でも景色は変わっていた。緑が生い茂り、光が差し込む森から、薄暗い枯れ木ばかりの森へと…。

悪化してる気もしたけど、進めてることを喜ぶことにした。きっとこの先に誰かが…。

それはそうと、枯れ木ばかりの森には問題があった。木の実がない。動物もいない…。まさか虫を食べるなんておぞましいことが出来る訳もなく、私は絶食を決意した。


そして気付いてしまった、食べなくてもなんの問題もないことを…。



それから1ヶ月ちょっと。私はまだ森の中。

空腹を訴えていたお腹も、いつの間にかに鳴り止み。私はいまだに絶食中だった。いくら改造されたと言っても、1ヶ月以上も何も食べずに普通でいられるのが怖かった。

景色は変わってきていた。枯れ木の中に生気を感じられる木が混じり始めたのが1週間程前。今は枯れ木の方がちょっと少ない位になった。


そしてついに、魔物に見つかってしまった。


狼に似た魔物は、お腹を空かしているらしい。見た目通り、速くて強いだろう。勝つのはもちろん、逃げ切るのも無理そうだ…。

全力で走り出すも、案の定、あっと言う間に囲まれてしまった。


「あぁ神様、短い第二の人生をありがとう…」


狼魔物に飛びかかられ、地面に打ち付けられた。必死の抵抗も虚しく、狼魔物達は私を生きたまま食べ始めた。主にお腹や太ももを容赦なくかじられていく。かつてない痛みに悶え苦しんだ。「また死ぬのか」と思った。「嫌」だとも思った。だからといって、何か出来る訳でもなかった。


感覚が麻痺してから、いくらか時間が過ぎた頃、狼魔物達はもういなかった。血溜まりの中、制服は破られ、血がべっとりと付いていた。傷は殆ど治っていたけど、残っていた太ももの傷が思い出したようにズキズキと痛み出した。

「私は生きている…?」

嬉しいとか、怖いとか、「なんで」っていう疑問とか、頭の中はぐちゃぐちゃになった。

でも身体の怠さに負けて、何もしないままその場で眠りについた。



こうして私は気付いてしまった。

こんな怪我じゃ、死ねないことを。



起きたら傷は綺麗に消えていた。


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