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第3話:要塞都市カルディナ

「ほー、結構でかい町なんだなぁ」


 世界樹の葉を、持てるだけ持った勇者は、ティンクの風の力で、空を飛び、ものの数分でカルディナという大きな町にに飛んできた。

 勇者の鎧の中の隙間という隙間には世界樹の葉が詰まっている。両手にもこぼれ落ちそうなくらい世界樹の葉を握り締めている。


(さすがに持って来すぎでしょ…)


「おい、ティンコ!まずは道具屋だ。道具屋で袋買うから案内しろ」


「勇者様、私はティンコではありません。ティンクと申します。それに町の中の案内はできかねます」


「あ?まぁ、こまけーことはいいんだよ。そっか、じゃあ、わがで探すか」


 このカルディナという町は、丁度、人間界と魔王軍との中心に位置し、最前線の都市だ。

 大きく、頑丈な壁に囲まれた町は発展し、行きかう人で溢れている。

 中には、耳の長い一目でエルフと分かるものや、狼のような顔をした獣人のようなものも見える。


「なぁ、あいつらエルフとか獣人は敵じゃないのか?」


「はい、我々妖精や、エルフ族・獣人族など魔族以外のものは、人間と共に魔王軍と戦っております。

 おそらくこの町にいる、人間以外の種族は、元は東の世界の住人達です。残虐極まる魔王軍の支配から逃げてきたのでしょう」


「そうか…、なんか可哀想だな。はやく魔王をやっつけないとな」


「はい、勇者様!ともに力を合わせ魔王軍を打ち破りましょう」


「うむ。頼んだぞティンコ」


「…勇者様、ところで気になったのですが、勇者様はどちらから来られたんですか?」


「ああ?日本だよ、日本。ドゥーユーノウ ジャポン?」


「ニホンですか、申し訳ありません。ニホンという国は聞いたことがありません。妖精学校で世界の国々は勉強したのですが…」


「ま、そりゃそうだろうな。たぶんこの世界にはない、おそらく異なる世界だな。異世界っていうやつだ」


「異世界…ですか」


「おう。日本の社会は厳しくてな…。学校までは良かったんだよ。でも社会に出たとたん、これが辛くて辛くて…」


 勇者は身の上を語りだした。


「あまりにも辛すぎて、ついうっかりニートになってしまったんだよ。でも毎日ヒマじゃん?

 だから株とかFXとかやり始めたんだよ。そしたらさこれが結構波に乗ってさ。

 なんだかんだで毎日やってたら、元手100万くらいが2000万くらいになっちゃってさ!もうウハウハよ。

 でもそんな絶好調なときにあれだよ、アレ。リーマンショック。大暴落。

 また100万に逆戻り。もう絶望でさ、死のうとも思ったよ。普段ならもったいなくて絶対行かないようなキャバクラとか行っちゃってさ…

 意識なくなるくらい飲みまくってたら、トラック引かれて一瞬でアボーンだよ。まぁ、どうせ死のうと思ってたからいいんだけどさ。

 そしたら、アレよ。クロノスとかいうおっさんが、お前は勇者の末裔だとか言い出してよ。気づけばさっきの森の中って訳」


「お話はあまり理解できませんが、ニホンも相当お辛い国のようですね…」


「ああ、資本主義はクソだよ。さっさと隕石でも落ちて爆発すればいいんだよ。おっ!アレはまさしく道具屋だな」


 ティンクは思った。勇者様も中身は普通の人間なのだなと…


 アルベルト道具店。おそらく店主アルベルトがやってる道具屋だろう。分かりやすい大きな袋に道具がつまった看板を掲げている。

 勇者は、その道具屋の扉を開けた。


「いらっしゃいませ、ようこそアルベルト道具店へ」


「おう、おやじ、でっかくて丈夫な袋あるか?」


「ほう…、お客さん立派な装備ですな。名のある冒険者とお見受けします。おまかせください。アルベルト道具店はお客様のご要望にはなんでもお答えいたします」


 そういうと、カウンターの下から大きくて頑丈そうな麻の袋を出してきた。


「ああ、それそれ、それが欲しいな。…そういえば金がなかったな」


「おや?冒険者さんは金欠ですかい?…さっきから気になってたんですけど、その両手に持ってる葉っぱはなんなんです?」


「おっ、道具屋、さすがお目が高い!これは、ありとあらゆる病を治癒し、力なきものに活力を与える、生命の神秘、世界樹の葉だ」


「ま、まさか…、それが全部あの伝説の世界樹の葉だというおつもりですか?」


 アルベルトは、長年道具屋を営んできたが、本物の世界樹の葉を見るのは初めてだった。


「世界樹の木からごっそり持ってきた。どうだこれを売りたいんだが、1枚いくらになる?」


「お待ちください。それが本物であるなら喉から手が出るほど欲しいのですが、なにぶん本物を見たことがないので…」


「そうか、んじゃ知り合いに病人とかいない?」


「ええ、実は私の母が重い病に苦しんでおりまして、それが世界樹の葉であれば、ぜひお譲りしていただきたのですが…」


「あい分かった。これを1枚煎じて飲ませてあげなさい。話はそれからだ」


「は、はい!…ありがとうございます」


 アルベルトは、すぐに戻りますのでここで待っててくださいと言い残し、奥の住居スペースに消えていった。


「おいティンコ。ほんとに1枚で重い病気が治るのか?」


「はい、生命を司る世界樹の葉に治癒できな病はないと言われておりますが…。勇者様、その世界樹の葉を売るおつもりですか?」


「ああ、ほんのちょっとだけな。ほら金がないと食えないじゃん?さすがに魔王と戦うのにクコの実だけじゃ力もでないしさ」


 ティンクは少し不安を覚えたが、私の主人は、この勇者様だ。あまり口を出すべきではないのかもしれないな、と思った。


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