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井伊 杏奈は

「なんでこの世の中うまくいかないんだろうね。」

そう独り言を言った。井伊 杏奈が近くにいると気がついたのは言った後だった。私は彼女に気づかれていないことを願い、またもし聞こえていたときのために空を眺めた。雲がのんびりと動いていた。理科的には地球がまわっている、のだが・・・井伊 杏奈はクラスメートで言っては悪いがあまりぱっとしない。しかし私は彼女でいいと思う。いやむしろ彼女のようになればここから抜け出せる、そう思った。ここから、というのはこの思考からということだ。この世の中が嫌いになってしまってからもう戻せなくなってしまった。壊してしまうのは一瞬で直すのは何千年。まさにその通りだ。一度嫌いになってしまった物は好きになるものに時間がかかる。きっとそのときには私はいないだろう。きっと好きになる前にこの圧力に押しつぶされる。先生が言った。

「楠。お前なら頼める。これとこれよろしくな。いいか。これはお前だから頼めることだぞ。」

私はいや、とは言えず言われた仕事をこなしていく。いつもそうなのだ。いつも後ろからの圧力に押しつぶされそうになりながら生きている。母親も今回のテストの平均が90後半であることを願っている。しかし彼女はどうだろう。全く、ではないが私ほど圧力はなさそうだ。きっとこの後ろにある圧力さえなければこの思考から抜け出せる、そう思っていたからこそ彼女のようになりたかった。

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