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トリップ

作者: j.william

それは僕がまだ若く、物事を理解するのにひどく時間がかかっていた頃だったな。僕は電車に乗ってたんだ。突然その時から世界は僕を混乱させ始た。だってその日、電車に乗ってから僕の周りにすごく奇妙な興味深い出来事が、次々に起き始めたんだよ。


まず電車に乗って隅に立ってみて初めに、僕は車内のある男を観察し始めたよ。僕のその行為は自分の意思ではなく、強制的にそうせざるを得なかった。だって電車の中の彼等が、とても異常としか思えない行動をとっていたから。君もきっと、そんなのを見せられて観察せずにいるなんて、世界で最も難しい事だと思うはずさ。きっとね。



それで僕がまず真っ先に目が着いたのは、椅子に座ってスーツ姿で新聞を読んでた男だ。でも正確には、そいつは新聞なんて読んでないんだよ。正確にはね。だって新聞を読めるように広げてるのに、その目は新聞じゃない他のどこかに向けられてるんだ。新聞になんてまるっきり目をくれない。


もうそれだけで十分、変だろ?


だから僕は少しその男を観察してたんだ。すると段々と解ってきた事があった。その男は前方をしきりに見つめていた様だった。それも、10秒くらい前方を見つめる、それから3秒ずつ左右を見る、そんなややこしい方法でね。


その事に気づいてすぐに僕は男の視線の先を見た。


そこには水色のパーカーを着て、首に黒いネックウォーマーをつけた男が座ってたんだ。


さらにその男は自分の手をしきりに、重ねてこすったり、組んでからこすったり、揉んでみたりしてるんだ。そんなのって何か見苦しいよね。


しかもその男も目をきょろきょろさせて、やっぱり前方を見るともなく見つめてるんだ。


それはつまり、パーカーの男とスーツの男は見つめ合ってることになるよね。それには僕は素直に混乱したよ。少なくても僕が乗車してから、もう30分も2人はそんな事してるんだ。


それから少しして、2人はきょろきょろするのを完全にやめた。もう真っ直ぐ前方を見ている。


次に電車が駅に停車すると、スーツの男は立ち上がった。それを見てパーカーの男も立ち上がった。それから驚く事にスーツの男とパーカーの男は手を繋いだんだ。スーツの男はもう一方の手には新聞を持って。


それで僕の目には、新聞を持ったスーツの男と、黒いネックウォーマーをした水色のパーカーの男が手を繋いでいるのが写った訳さ。


それから気づくと僕は電車を降りてその二人の輪の中に加わってた。



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