言われたいな……。
どうやら魔法を使ってココまで来たらしい。
「か、カナン!?どうしたんだよ?」
「えへへ~、お兄ちゃんに逢いたくて、かえってきたってわかったから、逢いに来ちゃった!ダメかな……?」
体をグネグネさせながら言うカナンを無理やり家に帰れと追い返すわけにも行かず、とりあえず自分の部屋にあげた。
「よくわかったな。俺が帰ってきたって。」
「えへへ~おにーちゃんのことだもんカナンには分かっちゃうの♪・・・・・・あの牛女とも一緒にいたみたいだけどね・・・・・・。」
最後にカナンは何かを吐き出すように言ってからまたニッコリと笑った。
「そっか、俺はカナンの兄ちゃんみたいなもんだもんな。でもカナン、いきなり俺んとこ来ちゃだめだぞ?両親だって心配すんだろ。」
「おにーちゃんはお兄ちゃんだけど、カナンにとっておにーちゃんはお兄ちゃん以上の存在なの!!それにカナンの心配なんてしないよ・・・・・・両親が心配するのは、カナンのことじゃなくて、学歴や利益だけだもん・・・・・・。」
「そんなことないよ、な?ちゃんと両親だって心配するよ。カナンのこと。」
カナンはずいぶんちっちゃいころからモデルをしていて、結構整った外見をしている。(それでもおさない事に変わりはないんだけど・・・・・・。)
そして俺と初めて出会ったとき、カナンは死んだような目をしていた。
だから、話しかけた。
泣きそうな顔で、死んだような目をしている子供をほっとけるような人間じゃなかったってことだよな。俺も。
するとカナンは結構近くに住んでいて、常に誰にも嫌われないように自分を偽っていたと聞いた。
でも、聞いたのは仲良くなってからずいぶん後のことだった。
最初話しかけたときは、すぐに笑顔になって「なぁに?」って言われたし、俺も気のせいかと思ってあの表情の理由を聞き出そうとはしなかったのだ。
両親も気にするのは自分のことではなく、自分の容姿が大事なのだと今でもカナンは思っているらしい。
俺はカノンの両親に会ったことはまだないけど、そんなことはないのではないかと思うんだけどなぁ・・・・・・。
「おにーちゃんはカナンのこと心配?」
「心配だよ。カナンに何かあったら心配だ。でも、それって人間なら当然だろ?」
「じゃああの人たち人間じゃないんだよ。それにね、お兄ちゃん、カナンのこと、そこらへんと同じ子供と一緒にしないで。」
そう言ってカナンは俺に抱きついてきた。
いくら幼いとはいえ、もう11歳だ。身長もリルの10センチくらい下ぐらいの身長はある。
それに最近胸が膨らんできたとカナンは言っていた。(俺にはまな板にしか見えないんだけど・・・・・・。)
「カナン?そーゆーことはな、男の人に簡単にやっちゃいけないんだぞ?」
そう言って頭をぽんぽんと撫でるとカナンはさらに俺にしがみついてきた。
怖いモンでもあったか?
「カナンは・・・・・・カナンは、そこまで子供じゃないよ!もう胸だって出てきたし、背だって大人と変わらないくらいあるもん!!」
そういって俺から離れると、カナンは俺のベッドにもぐりこんだ。
「おいこら、カナン?」
カナンはうわ布団から顔を除かせようとしない。
俺はため息をついてしばらくまっていると、カナンの顔がひょっこり出てきた。
「カナン、なんかあったのか?」
「・・・・・・お兄ちゃんの布団だ・・・・・・いつもココで寝てるんだよね・・・・・・えへへ、あったかい。」
カナンは笑ったけど、俺の質問に答えようとはしなかった。
これは聞くなってことか?
「暑苦しいだろ。」
俺が笑って話題を変えるとカナンはちょっと身震いをした。
それが後になって身震いではなく頭を横に振ったのだと理解した。
「おにーちゃん、おにーちゃんはカナンのこと、好き?カナンはね、好きだよ・・・・・・おにーちゃんがカナンのこと見つけてくれた日から・・・・・・カナンのことちゃんとカナンって呼んでくれた日から・・・・・・カナンはただのモデルカナンじゃなくて、単体のカナンになれたの。だから周りが“自分のことをカナンって呼ぶのは止めなさい”って言ったって、カナンはカナンだよ・・・・・・カナンはこの名前も好きになれたの・・・・・・全部全部おにーちゃんのおかげだね。」
それからちょっとだけ笑ったカナンは純粋に、やましい気持ちなんてなく、可愛かった。
「俺もカナンのこと好きだよ。それはカナンの両親も同じじゃないか?だから帰ろう、カナン。な?」
「ひとつ聞かせて、おにーちゃんの一番にカナンはなれないの?」
「カナンはカナンだろ。一番なんて決める必要ないんじゃないか?」
「わかった・・・・・・出る。」
カナンは俺の布団から出て窓の前に立つと、こちらを振り替えった。
「おにーちゃん、カナン、また来てもいいよね?」
「いいけど、今度は両親に心配させないようにな?ただでさえ男女だとなんか言われんだから。」
「・・・・・・カナンは言われたいな・・・・・・。」
俯いてカナンは何か言ったが、俺には聞き取れない。
「え?」
「なんでもない!おにーちゃん!こんなことくらいでカナン、あきらめたりしないからね!覚悟しといてね!!」
最後に挑発的に微笑むとそのままカナンは飛んでいった。
あきらめないって・・・・・・何を?
首をひねっても分かるわけがなく、俺は窓を閉めると部屋に横になった。
ラルさんを守れるくらいの男になれたらって思ってた。
けど、俺のせいでラルさんに怪我させた。
おまけにリルにまで無茶させた。
俺、いったい何ができるんだろう。
悔しくて唇をかみ締めた。
そしてその翌朝、何故か今度はリルが窓のところに立っていた。