本当のリル
「サンキュ。」
「・・・・・・別に?・・・・・・なんだ、笑えるんじゃない・・・・・・こんなの、詐欺よ・・・・・・。」
別に?と言ってから俺から顔を背けたリル。
やっぱこいつ、なにしてぇのか理解できねーな。
「何ぼそぼそ言ってんだよ?」
「別に!それより、相棒・・・・・・に、なるんだよね?よろしくね。アーク。」
リアが笑った。
こいつ、もっとふだんから素直に笑えばいいのに・・・・・・。
「ちょっと、聞いてるの?」
「あ、ああ。お前さ、もっとふだん、笑えば?」
「え?」
「笑えば可愛いんだから、もったいねーと俺は思うよ。」
「え!?」
リルが赤面した。
あはは~茹蛸、茹蛸。
「じゃ、じゃあ!あたしはそれだけだから、バイバイ!!」
リルはすぐに帰って行った。
「あ、アーク先輩?」
一人の男子が俺に近づいてきた。
「あ?おお、ダリアン!」
「だから、その悪趣味な感じの呼び方はやめてください。僕はダルシェアンです。」
ダルシェアンは苦笑した。
「んん?確か、昔自分のことをそう言ってなかったかな?ダリアン君。」
「だから、いつの話ですか。そうとうちっちゃい頃じゃないですか!でも、そっか、やっぱ先輩ならさっきいたのはリル先輩ですか?」
「ああ、そうだよ。」
「い~な~先輩、リル先輩と仲いいですよね!」
いきなり瞳を輝かせはじめたダルシェアン。
・・・・・・何がどうそんなに羨ましいんだ?俺には理解できねぇ・・・・・・。
「ただ単に幼馴染ってだけだけどな。」
「何言ってんですか!リル先輩、めっちゃ人気あるんですよ?あの容貌でしょ、強いし、頼りがいあるし、なにより後輩に優しいんです!」
へぇ?俺には優しくないくせに後輩には優しいのか・・・・・・あいつめ・・・・・・。
「でも、本当のリルさんはどうやらアーク先輩しか知らないらしくて・・・・・・ホント、羨ましいです!」
「ああ?あんな意地悪で素直じゃないののどこが羨ましいんだよ?」
「アーク先輩・・・・・・鈍すぎますよ・・・・・・。」
「あ?何がだよ。」
俺の何が鈍いって?なんのことだよ?
つーかそもそも何の話だよ?
「い~え、でも、あんま鈍いと他の男にとってかれちゃいますよ。リル先輩は人気ですからね。」
「リルなんてどうでもいいよ。それよか俺はラルさんに彼氏ができたほうがショックだったしな・・・・・・。」
「まだラル姉が好きなんですか・・・・・・先輩・・・・・・一途過ぎんのもココまで来ると重いっすよ・・・・・・。」
「うるせー・・・・・・。」
そうだよ、好きだよ・・・・・・ずっとずっと好きだよ。
も恋をやっと理解し始めてきた10歳くらいからずっと好きだよ・・・・・・。
しつこいのも未練がましいのもわかってるよ。
でも、そう簡単にあきらめられないから好きって言うんだろ?
「あ、そろそろ待ち合わせに遅れる!僕、リル先輩みたいなテレポート系じゃないんで遅れるんすよね・・・・・・とりあえず遅れちゃまずいんでアーク先輩!失礼します!!」
ダリアン・・・・・・じゃなかった。
ダルシェアンは片手を軽く上げるとそのまま飛び去っていった。
「にしても・・・・・・リルが人気・・・・・・ねぇ?」
意外すぎる。
ラルさんが人気なのは分かるが、どうしてリルみたいな横暴なのが人気なんだ?
とりあえず自分の家に帰ると、今日の妄想が頭をいきなり回りはじめた。
小悪魔なラルさんは舌を出してこちらに迫ってくる。
「うぁぁぁぁああ!!」
ひたすら叫んで部屋に閉じこもると鼻血が出ないように必死に鼻をつまんだ。
すぐに「うるさいよ!」と両親の罵声を浴びたが無視した。
とりあえずラルさんは元気になったし、リルが俺の講師になるかもしれないってのは納得できないけど俺はモンスター狩りをあきらめなくてよくなったらしい。
コンコン!と窓が叩かれた音を聞いて窓を見ると何故か窓の外にいたのはカナンだった。